家族になって1ヶ月の妹に誘われたVRMMOで俺はゆるくやるつもりがいつの間にかトッププレイヤーの仲間入りをしていた
第7話 青いアイツとワールドクエスト
無事にキャンプ地を確保した俺達はさっそくテントを設営した。
ゲームの中だけあってテントの設営はかなり簡略化されておりバッグから出してポンと置くだけだ。それで大きなテントがきちんと組み立てられた状態で出現した。しかも風に飛ばされないようにキッチリと固定された状態で。
「これ現実にも欲しいな」
「四次元ポケットが開発されるような世界になったら発売されるんじゃ無い?」
そんな軽口を叩きながらもキャンプ地の準備は完了。あとはこの辺りを行ったり来たりしながらモンスターを狩り続ける。そして回復アイテムが無くなるか、レベルが上がりづらくなるかのどちらかで作業を終了してセントラルエリアに戻る。
これが今日の予定だ。ひとまず今日1日はこの作業に時間を費やして明日以降のゲームを楽に進められるようにする方針だ。
ちなみにこのレベリングをおろそかにしていた場合、初見殺し大好きなABの運営の性格から考えてこちらの創意工夫ではどうしようも無い強敵に苦しみ続けることになるらしい。
さすがにそれは怖いのでカノンの言うことを大人しく聞いてレベリング作業をする。といってもやることは簡単だ。
「この辺りを適当に見て回ってモンスターがいたら倒す。それを日没まで繰り返してアキト君のレベルによってはテントで一泊か街への帰還を決定するわ」
「了解」
「基本的にこのゲームだと戦闘に参加した人間全員に等しく経験値や報酬が与えられるからパワーレベリングは簡単にできるけど、ゲームに慣れる意味も兼ねて戦闘はアキト君一人にやって貰おうと思う」
ようはお前一人でやれということだろう。別にそれは大丈夫なのだが、一つだけ意味の分からない言葉があった。
「パワーレベリングって何?」
「簡単に言うと自分よりもレベルの高いプレイヤーの力を借りて行うレベリングのこと。本来は自分じゃ倒せないようなレベルの敵が出てくるところで、他人に敵を倒して貰うと恐ろしいスピードでレベルが上がるの。
これは簡単にレベルが上がっていくんだけど本来ならレベルに伴って身についているはずのプレイングが身につかないことが多いから後々に苦労することになるわね。
それにすぐに強くなりすぎるとゲームが余裕でできちゃうから早くに飽きちゃうのも難点かな。ほら、あんまり簡単な計算問題ばっかりやってるとだれてくるあの感じ」
「それは確かに楽しくなくなるかも」
「そう。だから順当にレベルを上げる方が楽しくゲームも出来る。まあ死にそうになったら私がヘルプに入るから安心して。ここの敵ならワールドクエストが始まらない限りは私なら全員余裕で倒せる筈だから」
ありがたい提案だったが俺には一つ気になることが。もちろんカノンの実力を疑問視するようなことはしないのだがそれとは別で心配事がある。
「カノンさんは良いの? こういうRPGだとレベルの高いプレイヤーが弱い敵を倒してもレベルは上がらないイメージあるけど」
「うーん、一応経験値は入るんだけど確かにこの辺のエリアだと私のレベルは上がりにくいわね。でも誘ったのは私だし、序盤のレベリングくらいは責任持つわ」
カノンは胸を張ってそう言ってくれた。正直その一言は嬉しい。右も左も分からない世界を低い実力で一人で行くのはいくらなんでも不可能なので、実力者のカノンが一緒に来てくれるなら安心は出来る。
ただいつまで経っても俺のせいで前に進めないのは申し訳ないのでこのレベリング作業も早く終わるように努力しよう。
「さてと、立ち話もここまでにしよっか。さっそくだけど敵を探しに行きましょう。グズグズしてると他のプレイヤーがこの辺りの敵を倒してしまうってこともあり得るし」
「分かった。それじゃあさっそく行こう」
宣言通りテントを張った場所を離れて森を歩く。
今更だがこのゲームの世界の季節は現実と同じ夏だというのに、森の中には虫の一匹も居ない。その辺りまで再現すると女性プレイヤーがゲームをプレイしないのでそこはリアリティーよりも客を優先したという話をワイドショーで言っていた気がするが、本当だったらしい。
ただ虫は居なくとも人によってはもっと気味悪く思うかも知れない生き物がこの森には居た。
それは鮮やかな青色をした粘液の塊。《スライム》というモンスターだった。
「あ、ラッキー。スライムは弱い割に経験値がおいしいから狩れば狩るほどお得だよ」
「それ本当? それじゃあさっそく」
見た目的に物理攻撃が効くかは怪しかったがとりあえず殴ってみた。すると驚くことにスライムは痛そうにして鳴いた。
しかもHPもちゃんと減っている。どうやら物理攻撃でもダメージは入るようだ。時折スライムも体当たりのような攻撃で反撃を試みてくるがいかんせんその動きが遅いので余裕でかわせる。そうしてコマンドを使うことなくスライムを撃破。
カノンの言うとおり、多めの経験値をもらえた。
「うわーこれは凄い」
「でしょ? まあそんなに一杯出てくるわけじゃ無いのが難点かな。運営も初心者キャンペーンみたいな感じでバンバン出してくれたって良いのに」
カノンは軽い調子でそう言った。聞けばスライムというモンスターは決まった生息域は無く、どこにでも出現するがその数は多くないらしい。だから今のところは安定した狩りは出来ないようだ。
「まあでももしかしたら今日はこの勢いで次々と出てくるかも」
その時、不意にピロリンという音がした。何の音かと思ったがカノンがすぐにその音の正体に気付いた。
「あ、この音ワールドクエストの更新の合図だ」
「ワールドクエストってあのストーリーを進めるためのクエスト?」
「そうそう。今まで更新はされてなかったんだけど、何かの切っ掛けで始まったのかも。ちょっと見てみよっか」
カノンはメニューを開いてワールドクエストの確認する。そういえばストーリー進行に関わるワールドクエストは全てのプレイヤーがいつでも確認できるのでログインのたびに確認してストーリーの状況を把握しておく癖をつけるべきだとゲーム雑誌に書いていた。
「あ、来てる来てる。内容は…………『バンバルドの森に現れたカイゼルスライムを討伐せよ!』だって。えっとこのクエスト発令中はスライムの出現率が大幅アップって書いてある」
「ってことはさっき言ってたみたいにスライムが一杯出てくるってこと!?」
これならレベルを爆上げできるかもしれないと思ったがカノンの表情は意外にも浮かないものだ。というよりも何かを疑っているような表情をしている。
「どうかした?」
「いやあ、ソシャゲとかだと大幅アップとかいって大した確率上がってなかったりするからABだとどうなるんだろうって。これで5パーセントアップを大幅アップって言ってるならクレームものだけど――」
だが、カノンが言い切るよりも先に答えが来た。
ドドドドドという地響きと共に何かが迫り来る。音がした方向を見れば砂煙を巻き上げながらこちらへと近づく大波にも似た影。やがてそれは俺達にも見えるようになっていく。
「ねえカノンさん。あれってもしかして……」
「多分もしかしなくてもそういうオチよ。私ちょっとここの運営舐めてたわ」
そしてソイツは現れた。
その波の正体はつい先程倒したばかりの青いアイツ。無数のスライムが群れを成して、森を蹂躙していたのだった。
ゲームの中だけあってテントの設営はかなり簡略化されておりバッグから出してポンと置くだけだ。それで大きなテントがきちんと組み立てられた状態で出現した。しかも風に飛ばされないようにキッチリと固定された状態で。
「これ現実にも欲しいな」
「四次元ポケットが開発されるような世界になったら発売されるんじゃ無い?」
そんな軽口を叩きながらもキャンプ地の準備は完了。あとはこの辺りを行ったり来たりしながらモンスターを狩り続ける。そして回復アイテムが無くなるか、レベルが上がりづらくなるかのどちらかで作業を終了してセントラルエリアに戻る。
これが今日の予定だ。ひとまず今日1日はこの作業に時間を費やして明日以降のゲームを楽に進められるようにする方針だ。
ちなみにこのレベリングをおろそかにしていた場合、初見殺し大好きなABの運営の性格から考えてこちらの創意工夫ではどうしようも無い強敵に苦しみ続けることになるらしい。
さすがにそれは怖いのでカノンの言うことを大人しく聞いてレベリング作業をする。といってもやることは簡単だ。
「この辺りを適当に見て回ってモンスターがいたら倒す。それを日没まで繰り返してアキト君のレベルによってはテントで一泊か街への帰還を決定するわ」
「了解」
「基本的にこのゲームだと戦闘に参加した人間全員に等しく経験値や報酬が与えられるからパワーレベリングは簡単にできるけど、ゲームに慣れる意味も兼ねて戦闘はアキト君一人にやって貰おうと思う」
ようはお前一人でやれということだろう。別にそれは大丈夫なのだが、一つだけ意味の分からない言葉があった。
「パワーレベリングって何?」
「簡単に言うと自分よりもレベルの高いプレイヤーの力を借りて行うレベリングのこと。本来は自分じゃ倒せないようなレベルの敵が出てくるところで、他人に敵を倒して貰うと恐ろしいスピードでレベルが上がるの。
これは簡単にレベルが上がっていくんだけど本来ならレベルに伴って身についているはずのプレイングが身につかないことが多いから後々に苦労することになるわね。
それにすぐに強くなりすぎるとゲームが余裕でできちゃうから早くに飽きちゃうのも難点かな。ほら、あんまり簡単な計算問題ばっかりやってるとだれてくるあの感じ」
「それは確かに楽しくなくなるかも」
「そう。だから順当にレベルを上げる方が楽しくゲームも出来る。まあ死にそうになったら私がヘルプに入るから安心して。ここの敵ならワールドクエストが始まらない限りは私なら全員余裕で倒せる筈だから」
ありがたい提案だったが俺には一つ気になることが。もちろんカノンの実力を疑問視するようなことはしないのだがそれとは別で心配事がある。
「カノンさんは良いの? こういうRPGだとレベルの高いプレイヤーが弱い敵を倒してもレベルは上がらないイメージあるけど」
「うーん、一応経験値は入るんだけど確かにこの辺のエリアだと私のレベルは上がりにくいわね。でも誘ったのは私だし、序盤のレベリングくらいは責任持つわ」
カノンは胸を張ってそう言ってくれた。正直その一言は嬉しい。右も左も分からない世界を低い実力で一人で行くのはいくらなんでも不可能なので、実力者のカノンが一緒に来てくれるなら安心は出来る。
ただいつまで経っても俺のせいで前に進めないのは申し訳ないのでこのレベリング作業も早く終わるように努力しよう。
「さてと、立ち話もここまでにしよっか。さっそくだけど敵を探しに行きましょう。グズグズしてると他のプレイヤーがこの辺りの敵を倒してしまうってこともあり得るし」
「分かった。それじゃあさっそく行こう」
宣言通りテントを張った場所を離れて森を歩く。
今更だがこのゲームの世界の季節は現実と同じ夏だというのに、森の中には虫の一匹も居ない。その辺りまで再現すると女性プレイヤーがゲームをプレイしないのでそこはリアリティーよりも客を優先したという話をワイドショーで言っていた気がするが、本当だったらしい。
ただ虫は居なくとも人によってはもっと気味悪く思うかも知れない生き物がこの森には居た。
それは鮮やかな青色をした粘液の塊。《スライム》というモンスターだった。
「あ、ラッキー。スライムは弱い割に経験値がおいしいから狩れば狩るほどお得だよ」
「それ本当? それじゃあさっそく」
見た目的に物理攻撃が効くかは怪しかったがとりあえず殴ってみた。すると驚くことにスライムは痛そうにして鳴いた。
しかもHPもちゃんと減っている。どうやら物理攻撃でもダメージは入るようだ。時折スライムも体当たりのような攻撃で反撃を試みてくるがいかんせんその動きが遅いので余裕でかわせる。そうしてコマンドを使うことなくスライムを撃破。
カノンの言うとおり、多めの経験値をもらえた。
「うわーこれは凄い」
「でしょ? まあそんなに一杯出てくるわけじゃ無いのが難点かな。運営も初心者キャンペーンみたいな感じでバンバン出してくれたって良いのに」
カノンは軽い調子でそう言った。聞けばスライムというモンスターは決まった生息域は無く、どこにでも出現するがその数は多くないらしい。だから今のところは安定した狩りは出来ないようだ。
「まあでももしかしたら今日はこの勢いで次々と出てくるかも」
その時、不意にピロリンという音がした。何の音かと思ったがカノンがすぐにその音の正体に気付いた。
「あ、この音ワールドクエストの更新の合図だ」
「ワールドクエストってあのストーリーを進めるためのクエスト?」
「そうそう。今まで更新はされてなかったんだけど、何かの切っ掛けで始まったのかも。ちょっと見てみよっか」
カノンはメニューを開いてワールドクエストの確認する。そういえばストーリー進行に関わるワールドクエストは全てのプレイヤーがいつでも確認できるのでログインのたびに確認してストーリーの状況を把握しておく癖をつけるべきだとゲーム雑誌に書いていた。
「あ、来てる来てる。内容は…………『バンバルドの森に現れたカイゼルスライムを討伐せよ!』だって。えっとこのクエスト発令中はスライムの出現率が大幅アップって書いてある」
「ってことはさっき言ってたみたいにスライムが一杯出てくるってこと!?」
これならレベルを爆上げできるかもしれないと思ったがカノンの表情は意外にも浮かないものだ。というよりも何かを疑っているような表情をしている。
「どうかした?」
「いやあ、ソシャゲとかだと大幅アップとかいって大した確率上がってなかったりするからABだとどうなるんだろうって。これで5パーセントアップを大幅アップって言ってるならクレームものだけど――」
だが、カノンが言い切るよりも先に答えが来た。
ドドドドドという地響きと共に何かが迫り来る。音がした方向を見れば砂煙を巻き上げながらこちらへと近づく大波にも似た影。やがてそれは俺達にも見えるようになっていく。
「ねえカノンさん。あれってもしかして……」
「多分もしかしなくてもそういうオチよ。私ちょっとここの運営舐めてたわ」
そしてソイツは現れた。
その波の正体はつい先程倒したばかりの青いアイツ。無数のスライムが群れを成して、森を蹂躙していたのだった。
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