異世界英雄のレイン (旧題:異世界英雄の創造主)

Noct@Kirusu

魔法の勉強1


 アイリにステータスについて教え終わったあと、エイナが呼びに来た。

「レイン様、アイリ様、夕食の準備が出来たそうですよ」


「分かった。アイリ、サプライズをしに行こうか」


「そんなに褒められるほどのステータスでは、ないですよ。私のステータスより兄様の努力の方が素晴らしいです」


 アイリの事を凄いと言うと、否定してきて僕の努力を褒めてくれる。褒めてくれるのは嬉しいけど、アイリの否定的な考え(自己評価のみ)をなくして欲しい。






 

 夕食の準備は出来ていて、皆は僕達の事を待っていた。
 僕達が椅子に座ると、「待ってました!」と言わんばかりのスピードでお母様が聞いてきた。


「ねえ、ねえ。アイリのステータスはどうだったの、どうだったの!?」


 お母様の余りの勢いに僕とアイリは圧倒されていた。そんなお母様を落ち着かせたのはエイナだ。


「エイナ様、一旦落ち着いて下さい。レイン様とアイリ様が驚いて居ますよ」


「ごめんなさい。すーはー、すーはー・・・・・・もう大丈夫よ。アイリ、ステータスを見せてくれる?」


 お母様が目を輝かせアイリに聞いている。そしてエイナも目を輝かせていた。それもそのはず、二人は一番最初にステータスが見れると言って喜んでいたのに、アイリがずっと見せていなかったから。

 子供のように目を輝かせている二人を見て少し呆れて、ケイを見た。ケイは二人と違って大人の対応をしていた。

(まあ、ケイも内心は二人のように喜んでいるんだろうな~)

 アイリにステータスを見せて貰った僕は、冷静にまわりの状況を観察していた。


「もちろんです。ステータスオープン」




【名前】アイリ・クロスフォード
【種族】人間 【性別】女 【年齢】5歳
【レベル】1
【職業】なし
 HP:30/30
 MP:150/150
 力 :3
 耐久:2
 敏捷:5
 器用:10
 魔攻:35
【スキル】
 火魔法Lv1 水魔法Lv1 風魔法Lv1 光魔法Lv1
 料理Lv1
【称号】
 なし
【加護】
 魔法神の加護Lv1




 見るのは初めてじゃないけど、思ってしまう。魔法特化し過ぎだと。


 普通の人はここで妹に嫉妬したり、平等にステータスを渡さない神を恨んだりするかもしれない。妹思いの兄でも、少しは妹に嫉妬をしてしまう。それとも、理不尽な神を少し恨んだりしてしまう。

 けど、レイン。アイリの兄、レインは少しの負の感情も無くアイリのステータスが良かった事を喜んでいた。また、神に対しても自分のような低いステータスをアイリが貰わずなに、一般より良いステータスを与えてくれて感謝していた。


 お母様はアイリのステータスを見てから一言も喋っていない。その様子を見たアイリはおどおどしてきた。


「・・・・・・アイリ」


 いつものお母様からは考えられないほど真剣な声でアイリを呼んだ。

 アイリはお母様の声を聞き驚き、緊張した声で言った。

「何でしょうか、母様」

 アイリが緊張しているのを見て笑いそうになった。
だって、緊張する必要はない。これからお母様がする行動はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「流石ね、やっぱりアイリは天才だわ!神様もちゃんと理解しているみたいね!」


ーーーーアイリをただ褒めるだけだから。

 アイリはさっきの様子から怒られたりすると考えて覚悟を決めていたが、急に褒められまくり戸惑っている。


「え?私は怒られるんじゃないんですか?」


「何でこんな素晴らしい子供を怒るのよ。そんな人、親じゃないわ。」


「アイリ様、アイリ様はもっと自分に自信を持って下さい。アイリ様は自分で考えているより凄いですよ」


 お母様とエイナがアイリのことを褒めると、アイリは顔を赤くして喜んでいた。

 ここまで喋っていないケイはと言うと、涙を浮かべてアイリの成長?を喜んでいた。



 夕食はアイリのことを皆褒めていて、いつもより時間がかかっていたが、短く感じた。


 皆の食事が終わりそうになってきた時、僕はケイにアレを持ってきて貰った。それは、円柱の形をしていて、まわりは白のクリームで覆われ、上にはイチゴがたくさんあった。


「ケイ、それは何?」


「これはレイン様が作ったイチゴのショートケーキです」


「こ、これがケーキ何ですか。前、カレン様と食べたケーキはこんなに大きくなかったですよ」


「エイナ!そんな事より匂いを嗅いでみなさい」


「そんな事って、このケーキは前食べたケーキの大きさ約二十個分ですよ。・・・・・・あ、甘い、甘い匂いがします!どれだけの砂糖を使ったんですか!?」


 エイナが驚いている理由は、単純だ。この世界で甘い匂いがする食べ物はたくさん砂糖を使っているからだ。その量は、平民が出すには厳しいほどだ。

 けど僕の作ったケーキに入れた砂糖の量は大きさに対して少なめである。この事をエイナに伝えると、驚かれた。

 そんな話を聞かずにお母様はケイにケーキを切らせて食べ出した。


「!!これはケーキなの!?こんなに美味しいケーキ、王都でもなかったわよ!」


 お母様の言葉によってエイナもケーキを食べ始めた。それはもう、物凄いスピードで。


「!!カレン様、このケーキより美味しいケーキは世界中を探してもないと思います!」
 

 エイナも興奮し始めて苦笑いをしてしまった。隣にいるアイリを見ると、ケーキを食べたそうな顔をしている。


「アイリもケーキを食べていいよ」


「!!い、いいえ。私は大丈夫ですから。母様とエイナさんが食べてもらって結構です・・・」


 また、アイリの悪い癖だ。自分の事を優先せず、他の人の事を考えすぎてる。

 ため息を吐き、ケーキに夢中になっているお母様とエイナに聞こえるように言った。


「今日、そのケーキを作ったのは誰に食べて貰いたかったでしょうか~」


 僕の声が聞こえた瞬間、お母様とエイナは身動き一つ取らず、フォークを落とした。そして二人は顔を合わせて、僕とアイリに謝った。


「「ご、ごめんなさい。」」


 アイリは戸惑っている。それもそのはず、アイリはお母様が一番偉いと思っていた。それなのに、自分の兄に勝ててない。さらに、急に謝られて困っていた。
 アイリは困って僕の方を見てくる。


「とりあえず、ケーキを食べて見てよ。頑張って作ったから、不味くはないと思うけど・・・」


「それでは、いただきます・・・・・・・・・!!兄様、このケーキ?とても美味しいです」


「ありがとう。それじゃあもう一つ食べる?」


「えっとー・・・・・・、私はこの一つだけで大丈夫なので、母様とエイナさんにあげ「じゃあ、ケイに二つあげるね」


「レイン様が二つ食べなくてよろしいのですか?」


「うん、いいよ。ケイは頑張って料理を手伝ってくれたり、どこかの二人と違って勝ってに食べたりしなかったからね」

 僕はお母様とエイナに向かって最後の言葉言ったら、二人は目を逸らしてきた。

 ケイが一つ目を食べ終わり二つ目を食べ始める時に、アイリに迷惑をかけたどこかの二人が慌てて、ケイを止めた。

「待ちなさい。あなたはご主人に気遣う事が出来ないの。普通、ご主人に渡すんじゃない」


「ケイ、ここは同僚のよしみとして私に譲ってくれませんか」

 最後の最後まで諦めない二人に対して、呆れを通り過ぎて凄いと思ってしまった。

「はぁー。お母様、三日前の事を言っていいんですか?」


「えっとー・・・・・・」


「エイナ、七日前の事を言っていいの?」


「それは・・・・・・」


「「レイン(様)、ごめんなさい。ケイ、食べていいです」」

 何故か、ケイから尊敬の眼差しを受けた。






 ★ ☆ ★


 次の日、僕はアイリに魔法の勉強を教える事になった。

「僕が教えるよりお母様に習った方がいいよ」と返事をするとお母様が「私は忙しいからレインが教えてあげてね」と答えた。お母様が忙しい事なんてないはずだから疑問に思っていると、アイリが「カレン様よりレイン様の方が良いと思いますよ」とエイナから聞いたそうだ。そこで、ようやく納得した。


「アイリは魔法の発動練習をしたいの?それとも、魔法の知識を学びたいの?」


 アイリは申し訳なさそうに「迷惑でなければ両方教えて欲しいです・・・」と答えた。


「大丈夫だよ。僕は教える事で復習出来るから」


 僕が笑顔で答えると、アイリは安心して肩の荷を下ろした。どうやら僕が二つ教えてくれるか心配だったようだ。

(別にそんな事を面倒に思わないのに)
「それじゃあ先に知識の方からしようか」


「はい」


「じゃあ、問題形式にするから分からなかったら分からないと言って。そこをしっかり教えるから。一問目、魔法の種類について答えて」


「魔法は火魔法・水魔法・風魔法・土魔法・光魔法・闇魔法の6種類が基本属性魔法で、無魔法・雷魔法・聖魔法・時空魔法の4種類が特種属性魔法です」


「正解。じゃあ、無魔法が特殊属性魔法に入ってる理由は?」


「さっき述べた10種類の内、無魔法だけスキルがなくても使えるからです」


「正解。無魔法はスキルなくても使える。けど、スキルのあるほうがスキル無しの人と比べると威力が変わるよ。だから僕に無魔法のスキルがあればもっと強くなれるよ」


「・・・・・・・・・」


 アイリが何故か申し訳なさそうにこちらを向いた後下を向いてしまった。

 何でそんな顔をするんだろう?・・・あっ、もしかして僕の事を気遣ってる?ぜんぜんスキルを獲得できないことについては気にしてないのになー

 お互い、黙ってしまい時間だけが過ぎていくので次の問題を出す事にした。


「次の問題にいくよ。火魔法は風魔法に有利で水魔法に不利、土魔法は水魔法に有利で風魔法に不利。じゃあ雷魔法は何に有利で何に不利?」


「えっとー、水魔法と風魔法に有利で土魔法に不利ですか?」


「正解だよ。土魔法は水魔法と雷魔法に有利なんだ。けど土魔法はあまり人気がないんだ。その理由を言えるかな?」


「わかりません」


「理由は、火魔法は火力が一番高い。水魔法は攻撃と防御のバランスがよく性質変化で氷にもなる。風魔法は応用が利きやすい。それに比べて土魔法は妨害ぐらいしか出来ないからだよ」


「・・・つまり、土魔法は相手の邪魔しか出来ないんですね」


「それは違うよ」


 僕がアイリの解釈を否定すると「えっ?」とアイリに驚かれた。

「そもそも、魔法に固定概念を持つことがおかしいんだよ。─────────────────────



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