チートな俺の異世界生活

日ノ丸太郎

8話 チートな俺と銀髪の女性

白く、ただただ白い空間が無限の如く広がっている。 ある者なら恐怖を感じるかもしれないし、ある者なら虚無感を抱くかもしれない。

そんな空間に佐藤健太は再び座っていた。

(…この感じこの前にも似たようなのを体験したような…そうだ、転移する前のあの天使にあった時と似た感じだな…また、俺は座ってる。   いや、それはそうだろう俺はあの少女の病気を治し、それでイスに座ったのだから……いやいや、聖属性魔法を使っただけで死んだのか? いやいや、そんなことあるか? 否、あるわけがない。 あっていいはずがない)

健太はあの時のようにそっと目を開ける。

「いや、あったようだ」

健太はそっと目を閉じる。

(……まぁ 確かに?あってもおかしくはないな…だって、病気を消してしまうのだからな)

「て、あってたまるかあぁぁぁぁ!!!!」

健太は勢いよく立ち上がった。

ふと、健太はあることに気づいた。
目の前に銀髪の女性がいることに。

(ん? ガブリエルではない? 交代制なのか?)

「どうも、健太さん」

すぐ右から聞き覚えのある声がする。
健太はすぐに振り向く。

「居てほしくなかった」

「いや、それは酷くないですか」

「で、俺はまたしても死んでしまったのか?」

ガブリエルは首を横に振る。

「いいえ、安心したください健太さん。 今回は死んでいませんので」

健太は深く息を吐く。

「では、何故お前がいるのだ?」

「それは、こちらの方が健太さんに話しがあるとのことですので」

健太は視線を銀髪の女性の方に向ける。

(銀髪ロングの青目、絶世の美女だな…
胸も白のワンピースだからか、大きさが凄くわかりやすい。でかい…肌も白い…ラノベのお姉さん系キャラをこんな間近で見れるとはな…眼福、眼福)

「あの、初めまして健太さん。 私の名前はハツユキといいます。 宜しくお願いしますね」

「あぁ、俺は知ってのとおり健太、佐藤健太だ。 というか 一つだけ聞かせて貰うが、ハツユキはもう死んでいるのか?」

ハツユキは静かに頷いた。

「はい、死んでいます。 この度は天使様に無理な願いを叶えてもらってこうして話す機会ができたということです」

「成程な…で、話とは?」

「はい、そのですね…あの白髪の子についてです」

自己紹介を終えるとハツユキは健太から視線をずらさないために健太と目を合わし、話し始めた。

「成程、ハツユキはあの少女の母親か、姉と言ったかんじか」

「はい。 一応あの子の母親です」

「わかった」

「はい。 それでですね、あなたはあの子を…あの子をどう使うきですか」

ハツユキの瞳はハッと見開き、今にも健太の肩を掴みそうだ。 左手を強く掴んでいる手は目に酷くわかるほど押し込んであり、何かに怯えるように震えている。

健太はそれを見逃さなかった。 
体が暑くなるのを感じたが健太は太ももを一度強くつねると口をあけた。

「どう使うか…どう使うか…うーん…強いて言うのならば、目の保養と言ったところか」

「め、目の保養? 何ですかそれは」

「何ですかと言われてもな…そのままだからなぁ」

「…」

「ハツユキさん、安心しても大丈夫ですよ」

とてもやさしい声でガブリエルはそう言った。 

「健太さんはあなたの子どもに酷いことは決してしません。 それは私が保証しましょう」

「何故、天使様の俺への評価はそんなに高いんだ?」

「勘です☆」

「文字におこしたら星がついてそうな言い方だな」

「えっへん」

「どやるな勘天使」

ふと、健太がハツユキの方を見るとハツユキは下を向いていた。

(この人はきっと信頼するにあたいする『人』なのだけど怖い…怖い…あの子が私みたいな羞恥の限りを尽くされると思うだけで自分の肌をちぎりたくなってくる。 けど、あの子が生きられるなら、この人に任せていいのなら私はあの子に)

「生きて…楽しく生きてほしいです」

顔を上げた彼女は涙を流していた。
儚い、尊いなどそのような言葉の似合う表情をしていた。

「…ふ 」

(どうやら、決心ついたようだな)

「佐藤健太さんあの子をどうかお願いします。 楽しく悔いのない、生きていてよかったと思える生を送らせてあげてください。嘘偽りでも構いません。 私はどうなっても構いません。 ですから、あの子だけは…どうか」 

健太はハツユキに近づきそっと手をとりそして跪く。

「誓おう、ハツユキの娘であるあの子は俺が必ずや幸せにすると…」

健太はハツユキの顔を見る。

「別にお前もどうとしようとする気はない。まぁ、もし欲しくなったら惚れさせてみせるさ。 最後でも何でもいい俺を信じてくれ」

(もっと早く…私が生きてる時に会っていたら何て思ってしまう。 男とはただ自らの欲を満たさんとする獣…けど、この人の欲は魅力的なものだときっとそう思う。 こんな私だからこそこの人に…きっと男の人に一度も優しくされたことない私だから、今惹かれてるのかもしれない。 この暖かさ、この胸の鼓動。 決して思うことのないものと思っていたけども、こうも早く感じるなんて)

「貴方を信じてみます。貴方に託します。
あの子を頼みますね」

「あぁ 確かに託され、頼まれた。 さて、あの少女の名前を決めるとするか」

「?」

「あの少女の名前はまだ決まっていないだろ?」

ハツユキは首を傾げる。

「ハツユキはあの少女の母親だろ…名前というものは、俺の元いた世界では親がつけるものなのだ。 だから、ハツユキがつけてくれ」

ハツユキが目をはっと見開くが、そのあと視線を下に向ける。

「いえ、私は親として失格当然…名前を決めるなど」

「娘のことをこれだけ思っているなら親だ、親失格というものはな……まぁハツユキはまだバリバリ親だから安心しろ」

「……これ以上はやぼというものですね…わかりました。あの子の名前…フユカですかね」

「渋っていたわりに案外早いな」

「名前は決まっていましたから」

ハツユキはそう言って弱く笑った。

「フユカか…わかったあの少女の名は今日この時からフユカだ」

「では、きりもいいことですし健太さんの意識を戻しますね」

そう言ったのは言うまでもなくガブリエルだ。

「あぁ、頼む。 ハツユキももう大丈夫だよな?」

「はい。 大丈夫ですあの子…いえ、フユカのことは健太様に頼みましたから。 ですがそのですねもしもですよ、もしまたお会いできましたらその…私をそばに置いてはいただきませんでしょうか…」

ハツユキは少し頬を赤く染めてそう言った。

「あぁ、勿論だ」

「そうですか、ではその時はふつつかものですがよろしくお願いしますね」

「おう、任せておけ」

「では!」

パン! とガブリエルが手を叩くとあの時と同じく青い魔法陣が出現した。

「では、また会おう! ハツユキ! ガブリエル!」

「はいはい、また会いましょうね~」

ハツユキは黙って手を振っているだけだった。






ふと、健太が目を開くと窓から赤い夕日の光が目を強く刺激した。

「眩しいな…フユカは、まだ起きていないようだな。 さて、もう少し待つか」

健太は一度窓の方を見ると、再びフユカの方に視線を戻しそっと目を閉じた。

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