全てに飽きた俺は異世界を廻る

如月 颯

4話『冒険の始まりの前』

「ふぅ...やっと着いた...」

実はあれから国の端から端まで歩くことになった。

あの変なマークの建物はサーカス的なものを表していた。

ギルドはそもそもマークなど存在せず、ギルド、と描かれているだけだった。

気づかなかった数時間前の自分を殴りたい。

「取り敢えず入ってみるか」

凄い賑やかだ。お腹が空いてくる香りがする。

「あれぇ...イツキだぁ...遅かったじゃーん...」

ガーネットが俺の前に現れる...

凄く酒臭い。

「お前...酒飲んでんのか?」

「へー? 何のことぉー?」

こいつぁ重症だ。

「ガーネットはな、飲むといっつもこうなんだ」

ガハハハハっと笑い、ガタイの良い男が話しかけてくる。

「そうだったのかコイツ、ところであんたは?」

「俺か?俺はただの酒飲みよ。」

男は持っている酒を飲み干し、

「お前がイツキだろ? ガーネットが受付に話はしてたからよ、行ってこいよ。」

「あぁありがとう。」

「感謝するのは俺じゃないぜ?」

倒れている酔っ払いを見る。

「コイツには改めて伝えるよ」

ガーネットはしっかりしているんだと思ったが、酒癖が悪いのか?






「あなたがイツキさんですね? ガーネットさんから話は聞いてますよ。」

受付嬢は俺に話しかける。

「えぇっと、そうだけど、俺の話はどの位聞いたんだ? 」

「記憶喪失である事位ですよ。ガーネットさんにはジョブについて1から教えて下さいって」

「なるほど。じゃあお願いしていいですか?」

はい、と返事して受付嬢は何か持ってカウンターから出てくる。

「まずこちらを手首に。」

コードで繋がれている湿布のようなもの渡される。

「これで良いのか...?」

手首に貼ってみる。

「はい、それで大丈夫です。」

受付嬢は紙をだす。

「説明を始めますね? まずジョブには生産職、戦闘職、そして特別職が存在します。生産職は装備や食べ物の生産関わる職業です。そして戦闘職は、戦士や魔法使いなどモンスターと戦う職業です。最後の特別職は、生産職と戦闘職に含まれない職業などの事です。私のような、受付嬢などもですね。ここまでは大丈夫ですね?」

「まぁ一応」

「そしてこれらそれぞれに下級職と、上級職というものがあり、国から受けられる職業別の恩恵や、課される責務などの差に繋がります。下級職は恩恵が少ない分、責務が少ない。上級職は恩恵の多い分、責務も多い。なのでそこまでの差は無いと思いますが、覚えられる魔法などの差によって上級職を目指す方が多いです。」

「特別職にも上級職があるのか?」

「もちろんです。しかし特別職の上級職というのはかなり特別で、就くのは、ほぼ不可能です。」

「例えば何があるんだ?」

「そうですね...わかりやすいので言うと、王様とかじゃないでしょうか。」

「なるほど。それは不可能だわ」

いい加減気になるのだが手首に貼ったこれはなんなのだろうか。

「あ、ちょうど終わりましたね」

「ん? 何がだ?」

あたりを見回す。

「それですよ、手首の。」

「はぁ...で、これは何なんですか?」

「こちらは、装着者の魔力からオススメのジョブを調べる機械、の簡易版です。」

俺に魔力なんてあるのか?

しかし一応、

「結果は?」

「うーん。」

受付嬢は顔を曇らせる。

「どうしたんですか?」

やはり俺には魔力なんて無かったのか、

「実は、生産職も戦闘職も表示されなくて...」

「え?」

「特別職の一つだけしか...」

特別職?  俺に限ってそんな事あるだろうか。

何をやってもほぼ平均。そんな俺が特別な職に就けるのか?

「その特別職って...?」

「その...『冒険家』です。」

冒険家...?

「えぇっと...それは?」

「特別職の中でも特に異色で、恩恵は受けれますし、責務ありますが、それと他に、報酬という制度がありまして、様々な所へ行き、新発見することなどで報酬が貰えるんです。この報酬というのはクエストなんかでの報酬とは別物ですよ。」

なかなか面白そうなジョブじゃないか。

俺は、この異世界の色んな所に行ってみたい。

俺は、自分にしか出来ないことを探してみたい。





「俺、『冒険家』になります。」



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品