絶望の サイキック
色褪せる前に
────いつか、この思いも消えていくのだろうか?
────この悔しさも、彼らとの思い出も色褪せていくのだろうか?
テルヤは夜空を見詰めながらそんな事を考えていた。
あれから、もう1週間が経過した。
仲間が死んで3日間、テルヤは自暴自棄になった。不食不眠で過ごして時間を無駄にした。
悲しみに暮れて、自分の弱さを呪った。
そして、立ち上がってから4日が過ぎた。
メンバーの多くが「奴」を探すために街を歩き回っているだろう。
『腕刃』の事件には法則がある。
それは、ひとつの都市で必ず殺人事件を3件起こす事だ。
今回、名古屋で起きた事件は2件。
1件目は女性のバラバラ死体
2件目はテルヤが遭遇した事件
そして3件目は未だ起きていない。推測では傷を治療しているのではないか、という事らしい。
奴は必ずもう1回事件を起こす。それまでにテルヤは少しでも強くなる為にクルさんの戦闘訓練を受けていた。
その休憩時間にテルヤは夜空を眺めていた。
(ツカサとの思い出も、ナズナとの思い出も、もう会えない悲しみも、今回の後悔もいつかは薄くなっていくのだろうか?)
事件当初ほど落ち込んではいない自分に不思議と疑問を覚える。
悲しいかと聞かれれば悲しいと答えるだろう。
それでも、時が経てばこの感情は色褪せていくのではないかと不安になる。
(⋯⋯この4日間で少しは強く成れたのだろうか?) 
素手での攻撃。拳や蹴り技。
素人から見たら何かの拳法などに見える。
「⋯⋯ダメだ」
「⋯⋯次」
「⋯⋯ダメ」
などと良い評価を貰えたことが無いから不安しかないのだが、それでも強くなる為に訓練を受ける。
クルさんと拳を交わしあって、ダメなところを指摘してもらう。そこを直して、次の戦闘へ
「⋯⋯テルヤ君」
後ろから名前を呼ばれて振り返る。そこには合木 歓菜がたっていた。
白のブラウスにブラウンの薄いコートを着ている。下はジーパンだ。
数日前、彼女の眼はテルヤと同じく赤く腫れていた。
「⋯⋯歓菜さん」
眼の腫れはすっかり引いている。この数日の間、彼女もテルヤに協力してくれている。
「⋯⋯辛いよね」
「⋯⋯うん」
その囁きには悲しみが篭っていた。彼女とテルヤが流した涙。彼らとの思い出は歓菜の方が大きいはずなのに、彼女はテルヤを支えようと言葉を口にしてくれる。
「⋯⋯でも、いつまでもここで立ち止まる訳にはいかないもんね」
彼女は舌を出して笑ってみせた。その笑顔がつくり笑いなのだとテルヤは気付いていた。
まだ知り合ってから日が浅いテルヤでも彼女の本物の笑顔とつくり笑いの違いぐらいは判別できた。
恐らく、仲間が死ぬのは今回が初めてのことでは無い。周りを見ていればその事には容易く気付ける。
誰がどのくらい組織に所属しているのかは把握出来ていないが、それでも彼女はその度に立ち止まって泣いて、それでも前に進んできたのだろう。
それが彼女の強さだった。
テルヤは自分が1人だけなら立ち直れた自信がない。今回の件で他人の支えがどれだけ大きいかを知った。
テルヤを支えてくれ、立ち上がるきっかけをくれた2人。
その存在のありがたさに触れて改めて思い知ったのだ。
『仲間』の存在
友達や親友と呼べる相手はいたけれど、そう呼べる存在が出来たのは初めての事だった。
「思い出は薄れゆくものだ」
思い出も気持ちも変わらない。いつかは色褪せていく。
この悔しさも憎しみも決して忘れてはいけない。
それがテルヤが背負うべきものなのだから。
初めての仲間の死に親友と幼馴染みの死を重ねてテルヤは拳を握り締めた。
「必ず捕まえるよ」
その為に強くなる。
そして、強くなる為の訓練だ。
時間は有限で刻一刻と過ぎていく。どれだけ望んでも物足りない。
だからこそ立ち止まってる時間はないのだ。
休息は確かに必要だ。それでもテルヤは弱すぎる。
「⋯⋯そろそろ行くよ」
設けられた休息に自分で区切りを付けて歓菜に笑いかけた。
「うん。がんばって」
そう答えてくれる彼女に背中を押されてテルヤは訓練へと戻った。
────この悔しさも、彼らとの思い出も色褪せていくのだろうか?
テルヤは夜空を見詰めながらそんな事を考えていた。
あれから、もう1週間が経過した。
仲間が死んで3日間、テルヤは自暴自棄になった。不食不眠で過ごして時間を無駄にした。
悲しみに暮れて、自分の弱さを呪った。
そして、立ち上がってから4日が過ぎた。
メンバーの多くが「奴」を探すために街を歩き回っているだろう。
『腕刃』の事件には法則がある。
それは、ひとつの都市で必ず殺人事件を3件起こす事だ。
今回、名古屋で起きた事件は2件。
1件目は女性のバラバラ死体
2件目はテルヤが遭遇した事件
そして3件目は未だ起きていない。推測では傷を治療しているのではないか、という事らしい。
奴は必ずもう1回事件を起こす。それまでにテルヤは少しでも強くなる為にクルさんの戦闘訓練を受けていた。
その休憩時間にテルヤは夜空を眺めていた。
(ツカサとの思い出も、ナズナとの思い出も、もう会えない悲しみも、今回の後悔もいつかは薄くなっていくのだろうか?)
事件当初ほど落ち込んではいない自分に不思議と疑問を覚える。
悲しいかと聞かれれば悲しいと答えるだろう。
それでも、時が経てばこの感情は色褪せていくのではないかと不安になる。
(⋯⋯この4日間で少しは強く成れたのだろうか?) 
素手での攻撃。拳や蹴り技。
素人から見たら何かの拳法などに見える。
「⋯⋯ダメだ」
「⋯⋯次」
「⋯⋯ダメ」
などと良い評価を貰えたことが無いから不安しかないのだが、それでも強くなる為に訓練を受ける。
クルさんと拳を交わしあって、ダメなところを指摘してもらう。そこを直して、次の戦闘へ
「⋯⋯テルヤ君」
後ろから名前を呼ばれて振り返る。そこには合木 歓菜がたっていた。
白のブラウスにブラウンの薄いコートを着ている。下はジーパンだ。
数日前、彼女の眼はテルヤと同じく赤く腫れていた。
「⋯⋯歓菜さん」
眼の腫れはすっかり引いている。この数日の間、彼女もテルヤに協力してくれている。
「⋯⋯辛いよね」
「⋯⋯うん」
その囁きには悲しみが篭っていた。彼女とテルヤが流した涙。彼らとの思い出は歓菜の方が大きいはずなのに、彼女はテルヤを支えようと言葉を口にしてくれる。
「⋯⋯でも、いつまでもここで立ち止まる訳にはいかないもんね」
彼女は舌を出して笑ってみせた。その笑顔がつくり笑いなのだとテルヤは気付いていた。
まだ知り合ってから日が浅いテルヤでも彼女の本物の笑顔とつくり笑いの違いぐらいは判別できた。
恐らく、仲間が死ぬのは今回が初めてのことでは無い。周りを見ていればその事には容易く気付ける。
誰がどのくらい組織に所属しているのかは把握出来ていないが、それでも彼女はその度に立ち止まって泣いて、それでも前に進んできたのだろう。
それが彼女の強さだった。
テルヤは自分が1人だけなら立ち直れた自信がない。今回の件で他人の支えがどれだけ大きいかを知った。
テルヤを支えてくれ、立ち上がるきっかけをくれた2人。
その存在のありがたさに触れて改めて思い知ったのだ。
『仲間』の存在
友達や親友と呼べる相手はいたけれど、そう呼べる存在が出来たのは初めての事だった。
「思い出は薄れゆくものだ」
思い出も気持ちも変わらない。いつかは色褪せていく。
この悔しさも憎しみも決して忘れてはいけない。
それがテルヤが背負うべきものなのだから。
初めての仲間の死に親友と幼馴染みの死を重ねてテルヤは拳を握り締めた。
「必ず捕まえるよ」
その為に強くなる。
そして、強くなる為の訓練だ。
時間は有限で刻一刻と過ぎていく。どれだけ望んでも物足りない。
だからこそ立ち止まってる時間はないのだ。
休息は確かに必要だ。それでもテルヤは弱すぎる。
「⋯⋯そろそろ行くよ」
設けられた休息に自分で区切りを付けて歓菜に笑いかけた。
「うん。がんばって」
そう答えてくれる彼女に背中を押されてテルヤは訓練へと戻った。
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