絶望の サイキック
バラバラ殺人
『マジックハント』名古屋支部
4部隊長、右京晃司
ツンツンヘアーの茶髪で全身黒ずくめの右京晃司は座席の背もたれに体重をかけて、電子資料を眺める。
細長い端末の電源を入れると、目の前に仮想画面が展開される。まるでテレビの画面のそれには数多くの資料がまとめてある。それをを手で操作して目的の資料をタップするとその資料が拡大される。
そんな彼を後部座席に乗せて漆黒の車は一般道路を時速50キロで進んでいく。
AIが運転する自動運転車で、運転席は無人。その助手席に赤茶色の髪の男性、浜野六佐が乗っている。
スーツを着ている六佐が口を開いた。
「ルーズボイスの事件ですか?」
「あぁ」
晃司が目を通している資料にはつい先日起こった事件の犯人についての情報がまとめられたものである。
『ルーズボイス』と呼ばれる奇妙な現象。
年齢は29、無職のその男にはとある能力が備わっている。
その能力は相手に触れる事で対象の声を失わせる事が出来るらしい。
声を失ってしまう時間は数時間という事が判明しているが、その男は能力を駆使して数名の女子高生に対して暴行、強姦を行った。
助けを求める事ができない少女に対してそのような行為を働いていた。
犯行時には顔を隠していて、被害者の女子高生は事件のショックも大きく、証言を話せるようになるまで時間がかかってなかなか捕まえる事が出来なかった。
そんな男は一般人の通報によって倒れている所を逮捕された。
その男曰く、赤髪の不良の炎の拳に顔面を殴られたとか
本来ならこんな証言を信じる訳はない。が、この赤髪の炎の少年に対しては以前から多くの報告が上がっている。
超能力者を狩る事を専門にしている右京晃司たちが事件の犯人にたどり着く前にその犯人を潰しているのだ。
今回で数件目となる彼の動きには度々驚かされる。
「警察の捜査力より優れたヒーローか」
晃司はそんな事を呟いた。
超能力者たちによる戦闘。今まで多くの超能力者をその手で殺してきた彼に未だ捕まえることが出来ない炎の少年。
ルーズボイスの事件の少し前に早朝の公園で発見された超能力者はある組織の一員だという事が判明している。この事件を解決したのも炎の少年である。
超能力者を確保しておける施設などこの世に存在しない。
故に罪を犯した超能力者は殺すしかない。牢屋に閉じ込めても難なく脱走できる超能力者が数多く居る。
まぁ、『マジックハント』である彼らは善悪関係なく超能力者を殺し回っているのだが⋯⋯
ルーズボイスは右京晃司の知らぬ間に処分されたらしい。
名古屋支部を仕切っているといっても、把握出来ていない部分も存在している。
公園で発見された少年に関しては行方不明だ。恐らく、組織内の誰かによって既に殺されているだろう。
『マジックハント』のメンバーの多くは過去に超能力によって引き起こされた事件で大切な人を失っている。
だから逆恨みしている者も多く、自分の手で復讐したいが、犯人に繋がる情報が少ない為行き場を失った復讐心を他の超能力者にぶつけている者もいる。
彼らは超能力者を殺さなければ気が済まないのだ。
科学の武器で超能力者を殺す。
超能力者と言っても人間だ。殺せる。心臓を脳を潰せば人は死ぬ。
頭を切り落とせば死ぬ。
四肢を切り落とせば動けなくなる。
ピロロロ
と晃司のポケット内の端末が鳴る。その端末を取り出して応答する。
「西区で殺人事件です。被害者は女性。20歳で────────」
スピーカー機能により、それを聞いていた六佐は直ぐに目的地を変更する。
『西区』
「うっ、」
強烈な悪臭で吐き気が襲ってくる。
西区の一部には既に規制線が張られている。
壁型ドローンにより、一般人にその光景を見せないための巨大な壁が築き上げられる。
「バラバラ死体かよ」
晃司は悪臭に顔を顰めつつ一言を放った。
頭に上半身、下半身、右腕、左腕、右脚、左脚
と綺麗に7パーツに分けられた女性の身体。
それ以外にも身体の至る所に深い切り傷が付けられていた。
既に固まった血が広がる中心にバラバラの死体は集まっていた。
死体の状況を確認したところで晃司は違和感に気がついた。
「浜野、警察はどうした」
そう、警察がいないのだ。
「え?け、警察なら能力者の事件って事で帰りましたけど?」
その場に蹲って吐きかけていた浜野六佐は涙目で答えた。
「能力者?この事件が異能者によるものだと上は判断したのか?早すぎるだろ」
「そうですかね。いつもこんな感じですよ」
「直ぐにそう判断できる事件ならな。でも、今回は見ただけでは異能者が関わっているかなんて分からないだろ」
「た、たしかに」
晃司に言われて初めて気づいたかのような表情になる六佐。
基本警察は異能が関わっていると上層部が撤退命令を出して、直ぐに現場からいなくなる。
だが、それはその事件に何らかの異能者が関わっていると確認がとれた段階でそういう命令が下る筈だ。
実際に普通の殺人事件かと思われていたが、犯人を追い詰めると異能者だったという事件が過去にも存在する。
異能は一般人には知られてはいけないのだ。何故か記憶を消される一般人。
これもおそらく、異能の力であるが一般人が混乱するのを避けられる。
被害者に関する記憶も消されてしまうため、善良的とは言いきれないが、それでも市民を守る為の国の措置なのだ。
それは警察も例外ではない。
(おかしい、今回は警察の撤退が早すぎる。)
疑問を感じながら作業を進めた。
遺体は回収されて、これから解剖が始まるだろう。
誰かからの嘱託を受ける必要は無い。異能が関わった未解決事件による死体は1つの例外もなく解剖される。
それは未だ説明出来ない異能の謎を解くために。
4部隊長、右京晃司
ツンツンヘアーの茶髪で全身黒ずくめの右京晃司は座席の背もたれに体重をかけて、電子資料を眺める。
細長い端末の電源を入れると、目の前に仮想画面が展開される。まるでテレビの画面のそれには数多くの資料がまとめてある。それをを手で操作して目的の資料をタップするとその資料が拡大される。
そんな彼を後部座席に乗せて漆黒の車は一般道路を時速50キロで進んでいく。
AIが運転する自動運転車で、運転席は無人。その助手席に赤茶色の髪の男性、浜野六佐が乗っている。
スーツを着ている六佐が口を開いた。
「ルーズボイスの事件ですか?」
「あぁ」
晃司が目を通している資料にはつい先日起こった事件の犯人についての情報がまとめられたものである。
『ルーズボイス』と呼ばれる奇妙な現象。
年齢は29、無職のその男にはとある能力が備わっている。
その能力は相手に触れる事で対象の声を失わせる事が出来るらしい。
声を失ってしまう時間は数時間という事が判明しているが、その男は能力を駆使して数名の女子高生に対して暴行、強姦を行った。
助けを求める事ができない少女に対してそのような行為を働いていた。
犯行時には顔を隠していて、被害者の女子高生は事件のショックも大きく、証言を話せるようになるまで時間がかかってなかなか捕まえる事が出来なかった。
そんな男は一般人の通報によって倒れている所を逮捕された。
その男曰く、赤髪の不良の炎の拳に顔面を殴られたとか
本来ならこんな証言を信じる訳はない。が、この赤髪の炎の少年に対しては以前から多くの報告が上がっている。
超能力者を狩る事を専門にしている右京晃司たちが事件の犯人にたどり着く前にその犯人を潰しているのだ。
今回で数件目となる彼の動きには度々驚かされる。
「警察の捜査力より優れたヒーローか」
晃司はそんな事を呟いた。
超能力者たちによる戦闘。今まで多くの超能力者をその手で殺してきた彼に未だ捕まえることが出来ない炎の少年。
ルーズボイスの事件の少し前に早朝の公園で発見された超能力者はある組織の一員だという事が判明している。この事件を解決したのも炎の少年である。
超能力者を確保しておける施設などこの世に存在しない。
故に罪を犯した超能力者は殺すしかない。牢屋に閉じ込めても難なく脱走できる超能力者が数多く居る。
まぁ、『マジックハント』である彼らは善悪関係なく超能力者を殺し回っているのだが⋯⋯
ルーズボイスは右京晃司の知らぬ間に処分されたらしい。
名古屋支部を仕切っているといっても、把握出来ていない部分も存在している。
公園で発見された少年に関しては行方不明だ。恐らく、組織内の誰かによって既に殺されているだろう。
『マジックハント』のメンバーの多くは過去に超能力によって引き起こされた事件で大切な人を失っている。
だから逆恨みしている者も多く、自分の手で復讐したいが、犯人に繋がる情報が少ない為行き場を失った復讐心を他の超能力者にぶつけている者もいる。
彼らは超能力者を殺さなければ気が済まないのだ。
科学の武器で超能力者を殺す。
超能力者と言っても人間だ。殺せる。心臓を脳を潰せば人は死ぬ。
頭を切り落とせば死ぬ。
四肢を切り落とせば動けなくなる。
ピロロロ
と晃司のポケット内の端末が鳴る。その端末を取り出して応答する。
「西区で殺人事件です。被害者は女性。20歳で────────」
スピーカー機能により、それを聞いていた六佐は直ぐに目的地を変更する。
『西区』
「うっ、」
強烈な悪臭で吐き気が襲ってくる。
西区の一部には既に規制線が張られている。
壁型ドローンにより、一般人にその光景を見せないための巨大な壁が築き上げられる。
「バラバラ死体かよ」
晃司は悪臭に顔を顰めつつ一言を放った。
頭に上半身、下半身、右腕、左腕、右脚、左脚
と綺麗に7パーツに分けられた女性の身体。
それ以外にも身体の至る所に深い切り傷が付けられていた。
既に固まった血が広がる中心にバラバラの死体は集まっていた。
死体の状況を確認したところで晃司は違和感に気がついた。
「浜野、警察はどうした」
そう、警察がいないのだ。
「え?け、警察なら能力者の事件って事で帰りましたけど?」
その場に蹲って吐きかけていた浜野六佐は涙目で答えた。
「能力者?この事件が異能者によるものだと上は判断したのか?早すぎるだろ」
「そうですかね。いつもこんな感じですよ」
「直ぐにそう判断できる事件ならな。でも、今回は見ただけでは異能者が関わっているかなんて分からないだろ」
「た、たしかに」
晃司に言われて初めて気づいたかのような表情になる六佐。
基本警察は異能が関わっていると上層部が撤退命令を出して、直ぐに現場からいなくなる。
だが、それはその事件に何らかの異能者が関わっていると確認がとれた段階でそういう命令が下る筈だ。
実際に普通の殺人事件かと思われていたが、犯人を追い詰めると異能者だったという事件が過去にも存在する。
異能は一般人には知られてはいけないのだ。何故か記憶を消される一般人。
これもおそらく、異能の力であるが一般人が混乱するのを避けられる。
被害者に関する記憶も消されてしまうため、善良的とは言いきれないが、それでも市民を守る為の国の措置なのだ。
それは警察も例外ではない。
(おかしい、今回は警察の撤退が早すぎる。)
疑問を感じながら作業を進めた。
遺体は回収されて、これから解剖が始まるだろう。
誰かからの嘱託を受ける必要は無い。異能が関わった未解決事件による死体は1つの例外もなく解剖される。
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