ウィザードオブバージン

チャンドラ

魔獣召喚

「どうした? どんどんこい」
 マリー先生がちょいちょいと指を動かし挑発してくる。

 少し規模の大きい魔法を使おう。
 そう考えた俺は身体に力を入れた。
 俺は両手をマリー先生の方へ向けた
「フレイムトルネード」
 先生の立ってる場所から赤い魔方陣が出現する。
 次の瞬間、魔方陣から大きな火柱が発せし、火柱は台風のように渦巻いた。
 炎に包まれて、先生の姿が見えなくなった。

 三秒ほど経過した後、火柱が消え、マリー先生の姿が見えた。
 マリー先生は目を閉じており、藍色の障壁に包まれていた。
 ウォーターバリアとは違う魔法で防いだようだ。

「本当、やるな藤嶋。あんな強大な魔法を使えるなんてうちの高校じゃそうはいないだろう」
 マリー先生はあどけない笑顔でそういった。
 くそ、あわよくば、火で先生の服を焼き焦がしてやろうと思ったのに。
「あら? 藤嶋君も結構、童貞らしい考え方するんだな。ムラムラ度常時十以下の癖に」
「心を読まないでください」
 今の発言は全童貞の人を敵に回すことになるぞ。

「私も少し攻撃させてもらうぞ」 
 何かくる。
 そう思った俺はボクシングのような構えを取った。

「シャドークローン」
 マリー先生が呪文を唱えると、周りにたくさんの魔法陣が発生した。
 たくさんの魔法陣の中から、マリー先生が出現した。
 おそらく、全部で二十人弱いる。

「どうだ? 驚いたか?」
 たくさんの一人のマリー先生の一人が喋った。
「どれか本物か分かるまい」
 別のマリー先生も喋った。綺麗なブラウン色の髪が風邪でなびいている。
「さぁ、どうする?」
 俺の後ろにいる一人のマリー先生が訊いてきた。

「こうしますよ......マジカルビーストサモンズ!」

 俺は両手を地面に置いて、呪文を唱えた。
 すると、俺の目の前に黒い魔法陣が発生した。
 魔法陣から巨大な大きな翼と目つきの悪い顔が特徴の黒い竜が出てきた。

「久しぶりだな......暢。俺様の力を借りたいのかい?」
 俺はこの黒い竜のことをブロと呼んでいる。
 二年前に俺と契約をした魔獣である。

「お前、魔獣と契約していたのか......信じられん」
 すべてのマリー先生が驚いた表情をしている。

「乗っていいか?」
「おうよ!」
 俺はブロの背中に乗った。
 ブロを宙を駆け巡った。
「暢、あのたくさんいる魔法使いを倒せばいいのかい?」
「ああ、頼む」

 ブロは口から強烈な炎を吐き出した。
「リフレクト!」
 あっという間にマリー先生の分身たちは消滅していった。
 オリジナルのマリー先生はリフレクトという魔法で攻撃を凌いだようだ。
 藍色の障壁。さっきフレイムトルネードを防いだのもあの技だろう。

「ブロ。思いっきり、あの魔法使いに炎を吹いてくれ」
「分かった」

 先ほどとは比べ物にならないほどの威力の炎を吐き出した。
「アクアバズーガ!」
 マリー先生は両手からものすごい水圧の魔法の技を両手から発生させた。

 ブロの炎とマリー先生の魔法がぶつかり合い、たくさん煙が水が出てきた。
 ブロの炎の威力も俺の純粋な火の魔法よりも強いと思うのだが、ジリジリとマリー先生の魔法に押されている。

 だが、今の先生は隙だらかである。
 俺はブロの背中から移動位置を定めた。
「バニッシュ」
 マリー先生の真後ろに瞬間移動した。そして、マリー先生の頭に手をかざした。
「ドランク!」
 俺が発生させた魔法陣はしっかりとマリー先生の頭に触れた。
 力が入らなくなったマリー先生は魔法の出力を止めた。
 ブロの炎がマリー先生に襲いかかった。
「バニッシュ」
 俺はマリー先生の方に触れ、再びバニッシュでブロの背中の上に戻った。

「暢、終わったのか?」
「ああ」

 上を見ると、マリー先生が貼った結界も消えているようだ。
 もうこれで屋上から出られるだろう。

「地面に降ろしてくれ」
 俺は指示し、ブロを着陸させた。
「くそ、具合悪い......」
 マリー先生は顔を下げている。
 ドランクは乗り物酔いしたように気分を悪くする魔法。
 さすがのマリー先生も効いたようである。
 それにしても、マリー先生との戦いで屋上がえらいことになったのだが。
 大丈夫なのだろうか。

「大丈夫ですか? マリー先生」
 俺は手を差し出した。
「ああ、ありがとう」
 普通に俺の手を取り、立ち上がった。
「いやぁ、負けたよ。藤嶋。お前やっぱ強いんだな」
「先生は本気じゃなかったでしょ? 結界も張りつつ戦ってましたし。それに先生も魔獣と契約してたと思いますが」

 俺は冷静な口調で遠回しに先生の方が強いということを示唆した。
「私の契約してる魔獣はちと厄介なやつでな。あんまり出したくなかったんだ」
「そうですか。それで、俺のことはとりあえずほっておいてくれますか?」

 マリー先生は悔しそうな表情を浮かべた。
「まぁ、とりあえずしばらくの間は黙っておいてやろう。だが、いつまでもそのままでいられるとは思うなよ」

 マリー先生は屋上の扉によちよちと歩き出した。
 しばらくの間は、か。

 ドアノブに手をさしかけた時に、マリー先生は振り向いた。
「あ、そうだ。屋上、元に戻して置くようにな。じゃないと魔法使えるって言いふらしちゃうからな」
 ぺろっと舌をだし、マリー先生は出て行った。

「......」
 俺はチラッとブロの方をみた。
「そんじゃ暢、俺帰るわ」
 大きな黒い魔法陣が発生した。
「あ、おい」
 止める暇もなく、ブロは魔法陣を潜り消えていった。
「全く踏んだり蹴ったりだ......」


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