悪役令嬢は趣味に没頭します

ててて

28 波乱①

「──ねぇ、そいつ誰だよ」

今までにないくらいルーに迫力がある。なんか怖いよ?ルー?どうした?

背中が汗をかいてきた…どうしよう。

私はひとまず立ち上がろうとするけどがっちりノアに抱きつかれていて身動きが取れない。

「この子はね…その~…えっとね~…」

どうしましょう。誰か!打開策!!
頭をフルで動かすが何も思いつかない。
ルーも聞くまで動かないようだし……変な嘘で取り繕うより言ってしまうか…

「この子はノアよ。これが本当の姿なの。」

「……へぇー。どう見ても人間の男なんだけど」

そうでしょうね。目の色以外、普通に人間だし体つきも一緒ですものね。

「そうねっ。あはは、はい。
ノア?猫ちゃんになろっか!ね?ね??」

私は未だに手を離さないノアに言うが、本人はガン無視だ。
ノアはルーを睨みつけ、ルーはノアを睨みつける。険悪な雰囲気ってこのことね。

「ねぇ、猫だか精霊だか知らないけど、いつまで#リア__・__#に抱きついてるわけ?早く離れろよ」

「はぁ?…なんでお前の言うことを聞かなきゃいけないのさ。黙ってくれる?ついでに出てってよ。」

「ああ"?なんだとこのクソ猫」

「うるせーチビ」

「はいはいはいはい、二人とも!おしまい、これでおしまいっ!」

仲悪っ!口悪っ!!

「ほら、ノア。ピアノ行こ?私の趣味見たいでしょ?」

「…わかった」

ノアはしぶしぶ猫になってくれる。

「ルー、この子日常的には猫の姿だから。お父様達には人間になれること言わないで?ね?」

娘に精霊とは言え人間の形をした男の子がそばに居るんだ。面倒なこと間違いない。特にあの両親だ…めんどくさい以上のことが起きるだろう。主にお父様…

「……黙っててあげる。その代わり俺の言うことも聞いてくれるよね?」

先程には似ても似つかないほどのいい笑顔。その顔だったらたくさんの女の子を落とせそうね。

「え、えぇ。できる範囲内でなら」

私は口軽くそんなことを言ってしまった。

「へぇー。じゃ、もちろん………今夜は俺と一緒に寝てくれるよね?」

ん?なんで?

どうしてそうなる?なぜ一緒に寝る話になるの?ん??一体どこにその関係性があるのかな??ちょっとお姉様びっくりよ。驚きすぎて理解できないわよ?

「…??どうして?」

「…はぁ………別に俺はお父様たちに報告してもいいんだよ?何も困らないし。むしろ問題になってほし」「わかった!!いいよ!一緒に寝よう!ね?ね?お願いだから言わないでね?」

足元でノアが唸ってる。
そんなノアにルーは満面の笑みを浮かべ勝ち誇ったように、「それじゃ、今夜楽しみにしてるね」と言って部屋を出ていった。

ルー、何しに来たのよ…

今度から部屋の鍵をしっかりかけよう。そうしよう。

「俺、アイツ大っ嫌い」

………。

……あぁ、ピアノの練習時間がだいぶ減ったわ。

今日は実に盛り沢山な一日で、だいぶ神経がすり減っている。


(あぁ、平穏な生活ってなんだっけ)

そんなことを思いながらノアを連れてピアノの部屋に移動した。



    





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