悪役令嬢は趣味に没頭します
14 お目当ての物
「お嬢様、あちらのお店でございます。」 
アンナが指をさす。その方向にはオレンジ色屋根がついたお店だった。
窓からは中が覗けて、壁一面にバイオリンがかかっている。
護衛は2人、店の前で待機しあと1人とアンナと私とルーでお店に入る。
出迎えてくれたのは優しそうな目をしたおじいさんだった。
「いらっしゃいませ。」
「こんにちは。」
笑顔で軽い挨拶をする。ルーはあたりを珍しそうに見ていた。
「何かお探しでしょうか、貴族のお嬢様?」
「えぇ、ピアノの楽譜を探していまして…」
「ピアノの楽譜…?」
細い目がカッと開かれる。
すると、おじいさんは悩むように顎に手を当て黙ってしまう。
「私はこの楽器屋のオーナー。ジョンと申します。失礼ですがお名前を聞いても…?」
「はい、リリア・エルディーナと申します。」
「ほぉ…エルディーナ公爵令嬢様がまさか、ピアノを嗜んでいらっしゃるとは…」
またもや目が開かれる。
まぁ、この国ではバイオリンが主流だし、公爵令嬢がマイナーなピアノやってたら驚かれてしまうか…
「大変申し訳ございません、リリア・エルディーナ様。この店には、いえ恐らくこの国にはピアノの楽譜はないのです。」
な ん だ と
「……それは本当ですか?」
「はい、本当です」
えー。そこまでマイナーですか。嘘でしょ。
あまりのショックに意識が飛びそうになりかける。
「リア姉様、しっかりしてください」
ルーが肩をパァンっと叩く。地味に痛かったですが…?
「そ、それは他国から取り寄せも出来ないのですか?」
「それはできると思います。少々時間がかかってしまいますが…」
「大丈夫ですわ!!
では、取り寄せて頂けますか?」
「はい、もちろんです。届いたその日にエルディーナ公爵家様まで早急に届けましょう。」
「ありがとうございます!!」
(やった!!!ジョンさんありがとー!!)
「楽譜はどんなものがよろしいですか?」
「では、ソナチネと…」
「かしこまりました。ありがとうございます」
「いえ、こちらこそありがとうございますわ。」
結局、買うことはできた。届くのに時間がかかるだけで。
あまりの嬉しさに締りのない顔になる。
「リア姉様、顔が終わっていますよ。」
ルーに皮肉を言われるがそんなの許しちゃう。それくらい嬉しいのだった。
しかも、購入した楽譜の中には他国のお店のおすすめも頼んだ。
他国のお店でおすすめされる楽譜がどんなものなのか。とても楽しみである。
そうして、お店から出ようとした。
壁にかかるバイオリンが目に入る。ちょうど近くにあるのは小さい子の練習用だった。
バイオリンは習ってから、子供の成長に合わせて楽器を新調するのだ。
前世でもピアノ程ではないがやってたので懐かしくなる。
「リア姉様、どうかしたのですか?その珍しい形の置物が何か?」
びっくりして思わずルーを見つめる。
(今、この子なんて言った?)
ルーは本当に心から言っているらしい。
(あぁ、この子ピアノも知らなかったもの!バイオリンも知らないのだわ!!)
なんて、
なんて勿体ないのだろうか!!!
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