Endless Game!

深谷シロ

第2話ㅤThe survival starts.

「【ダイブ】!!」


この掛け声と共に僕の意識は光に包まれる。ダイブしている証拠だ。この光が暗くなったりすれば、それは故障しかけているため、業者に修理してもらう必要がある。


と、余計な話は後回し。僕は一分も経たないうちに光から解放される。そして、再び光が当たる。


しかし、この光は機械の光では無い。紛れもなく太陽の光だ。僕はVRMMOの世界の中にいるのだ。


僕がいる場所は森の中。近くで水の音がする。川だろうか。そうだとすれば、絶好のポジションである。探すのは住む所のみで良い。


暫く森の中を探索していると、兎や熊などの生物が多く生息していた。食料問題も解決。衣服は元から来ているから、川で洗うなどすれば良い。


そし、武器だ。このゲームでは他人を殺すのもありとなる。このゲームの勝利条件は最後の一人となる事だ。


一週間の時点で一人になっていなければ、試合は延長されることとなる。だからこそ適当な暮らしは控えなければならない。


その時だった。このVRMMOの世界全域に声が届いた。誰もがその声に空を見上げる。しかし空には何も無い。声のみが聞こえる。


『今回参戦して頂いたプレイヤーの皆様。これより最低で一週間。サバイバル生活を行って頂きます。優勝するには最後の一人とならなければなりません。他人と手を組むのもあり、他人を殺すのもありです。但し、皆様の体は精密に作られている訳ではありませんので一部対応していない器官などもあります。気を付けてください。それでは健闘を祈ります。』


運営側からの放送はこれだけのようだ。僕はここでダイブ前に言われていたステータスについて思い出した。僕はこう唱える。


「【ステータス】。」


このVRMMOではこの詠唱によってステータス画面を表示する事が出来る。このステータスは他人に見せる事も出来るが基本は見えない仕様になっている。僕はステータスを確認した。


◆ステータス◆


Day:10分


Name:Star
Gender:男
Level:1
Location:日本/静岡


Lanking:11382917/11382917
Kill:0


Item:
[SSS級]ワールドマップ


Weapon:
[F級]Tシャツ
[F級]長ズボン
[F級]スポーツジュース
[F級]トランクス


Skill:
Nothing


◆-----◆


運営側が言っていた一位獲得者の特別アイテムとは〈ワールドマップ〉の事だろう。レア度が[SSS級]と上から二つの超レアアイテムとなっている。


この世界は地図は地球と同じ地図である。しかし魔法やスキル、アイテムがある。この地球では考えられないようなものも多く存在している。


さらに全ての概念にはレア度が存在している。魔法にもスキルにもアイテムにも、だ。


そのレア度は上から[X級][SSS級][SS級][S級][特A級][A級][B級][C級][D級][E級][F級][NO RARE]である。


ここでの[NO RARE]はレア度に入らない、ゴミなどのようなものだ。また[X級]も極稀にしか入手出来ないが、その上に出現率が0.01%である、ネットでも都市伝説レベルの[UNKNOWN]というレア度がある。


これは別名[OVER RARE]と呼ばれ、神級のアイテムとなる。その全てが古代文明に関わるアイテムで[OVER RARE]のアイテムは〈古代道具エンシェントアイテム〉に分類される。


それにしても未だに10分しか経過していないようだ。意外と次回の進み方は遅いようだ。さて、行こう。


僕が最初に目指したのは川である。このゲームには飢餓システムが存在している。食べないと死ぬ訳だ。同じく飲まなければ死ぬ。


僕が数分歩いている内に水の音は大きくなってきた。本当に川があるようだ。魚がいればさらに良い。そして遂に川が見えた。川には魚がいる。


「よし。」


僕はつい声に出していた。あまり声は聞かれない方が良い。ここまでの道のりは足音もなるべくさせないように気を付けていた。プレイヤー数が多すぎる為に初期地点が近い場合があるのだ。恐らく既に脱落者もいるのではないだろうか。


僕は川の側に行くと水を飲んだ。綺麗な水だ。透き通っていて美味しい。魚を捕まえるのは時間が掛かるから後にしよう。


僕は川から離れると近くにある木に大きなバツ印を掘った。これで分かる……かな?


再び足音に気を付けつつ、森の中を歩いた。この世界でも熊は危険な生物だ。他人だけでなくそのような生物からも逃げないといけない。


もしもの時の為に僕は石を3個ほど持っている。先程の川原から取ってきた。上手く当てる自信が無いから、今日の夜でも練習するとしよう。


来た道は草が折れている為に分かりやすい。敢えて付けた目印である。これで迷う事が無い。方向音痴では無いため、大丈夫だとは思うが万が一という意味を込めて、だ。


初期地点は森の中なのに草が茂っていなかった。少し広い地になっており、野宿するならそこが最適だろう────しかし、僕は違う。


これまでのこのゲームの経験上、絶対にそれであれば気付く。どちらかと言えば僕はここで住むふりをして、敵が来た時に返り討ちにするというタイプである。騙し討ちだ。


「あ。」


そうだ、忘れてた。先程ステータスを見たのに肝心のアイテムがどのような物か調べるのを忘れていた。僕は唱える。


「【アイテム召喚:ワールドマップ】」


アイテムは全てのプレイヤーが異空間から取り出す事が出来る。その時の詠唱がこれだ。因みに異空間に戻す時は【アイテム収納:ワールドマップ】などと唱えれば良い。


僕の手元には召喚したワールドマップがある。それは紙ではなかった。まさかの機械である。要するにGPS機能の存在している地図だ。


さらにこの地図を見ると、全プレイヤーの場所が分かった。加えて詳細まで。どこを根城にしているかも一目瞭然だ。僕はこの地図を最大まで縮小するとやはり地球であった。


日本人であるから中心は勿論日本である。その中でも僕は静岡にいるからその中央付近だ。僕の近くには一人だけいる。しかし数キロ離れているようだ。見つかる心配は無いだろう。


この地図を見て分かった事は以下の通りだ。


・縮小拡大自由の世界地図
・衛星写真にする事が可能
・リアルタイム更新
・動作が早い
・プレイヤーを含めた生物の位置が分かる
・マーク機能がある
・条件設定可能の検索機能が付いている


という事だ。これは凄すぎる。流石は[SSS級]である。僕は最適な野宿場所を探した。検索条件は洞窟で川付近という事だ。それはすぐに見つかった。


候補地点は数億とあったが、検索条件に付近と打ち込めばすぐに絞られた。それだけでも数百はある。僕はその中の一つに目星を付けた。


時間の流れ方は変わらないが、空を見るにもうすぐ日が沈む。急いで行くとしよう。僕は〈ワールドマップ〉を確認して危険な生物がいないと分かると駆け出した。


このゲームでは運動や筋トレなどでレベルを向上させる事が出来る。またスキル獲得などでもだ。僕が目星を付けた場所に着く頃にはレベルが上がっていた。


ここで〈ワールドマップ〉を起動。マーク機能の一つである〈名前付け〉をする。この機能では地点に名前を付ける事が出来る。例えるならば電話帳で相手に自分で好きな名前を付ける……だろうか。


僕はこの洞窟を〈始まりの洞窟〉とした。マークも付けて〈ワールドマップ〉を付ければ一目瞭然だ。洞窟内を調べてみるとあまり奥は深くない。流石に洞窟で寝ると体を痛めてしまうので、落葉を拾ってきた。因みにこの世界では虫などはいない。サーバーが重くなってしまいすぎるからだろう。


落葉を拾い集めた頃には日がすっかり暮れてしまっていた。失敗した。食料が無い。夕食だけは抜いても余裕だが、問題は明日の朝食である。朝食が無いと明日一日の行動に支障が出る。


殆どのプレイヤーが明日から行動が本格的になるだろう。途中で発見されるのは危うい。食料の位置を調べよう。捕まえやすい生物か……。鹿……?それにしよう。


洞窟から出ると〈ワールドマップ〉を頼りに足音を消して近くの鹿へと近付いた。僕が持つのは石三つのみ。石は何度でも使えるが気付かれれば捕らえることは出来ないだろう。一撃のうちに沈める。


鹿はこちらに気付いていない。僕は草むらから鹿を窺う。近くに他の生物はいない。今がチャンスだろう。狙いを定めて────投擲……!!


バキッ!という音ともに鹿が崩れ落ちた。ヘッドショットが決まったようだ。これで食料は手に入れた。血はあまり出ていないな。他の生物も寄ってこないだろう。引きずって帰るとしよう。


僕は右手に石三つ。左手には鹿の死体を引っ張って洞窟に帰ってきた。次にやるべきはナイフの制作と火を起こす事。どこかから良い感じの太さの枝と薪があれば良いんだけどな……。


兎に角僕は一度鹿を洞窟から離れた所に置く。あまりにも獣臭いのだ。流石にこの臭いを嗅ぎながら暮らすのは厳しすぎる。サバイバルはやはり大変だ。


洞窟には幾つかの部屋がある。解体は外でするとしても焼いた肉などを保存する場所を明日にでも決めるとしよう。今日は一旦寝るか。寝る前にステータスだけ確認しよう。


「【ステータス】。」


慣れた感じで詠唱する。大会前にもこの詠唱は幾度となく使った。本当に慣れているのだ。伊達に一位を何度も取ったわけでは無い。



◆ステータス◆


Day:12時間20分


Name:Star
Gender:男
Level:3
Location:日本/静岡/始まりの洞窟


Lanking:11382610/11382917
Kill:
[Player]0
[Creature]1


Item:
[SSS級]ワールドマップ
[D級]鹿の死体


Weapon:
[F級]Tシャツ
[F級]長ズボン
[F級]スポーツジュース
[F級]トランクス
[F級]丸石 ×3


Skill:
[D級]投擲/Lv.1〈NEW〉


◆-----◆


ステータスに変更点があった。まずゲーム開始より12時間。今は現実時間での00:20である。大会開始は12:00からだ。


次にレベルが上がって3になった。走ったり鹿を殺したりしたからだろう。位置情報は〈ワールドマップ〉のマーク機能が適用されるようだ。そしてランキングが上昇。既に何人かは脱落していることだろう。キル数も生物のみ1になっている。鹿か。


最も重要なのは最後。スキルが増えている。〈投擲〉。石を投げた事による入手か。本人の投擲技術が上昇すればスキルレベルも上がる。さらにレベルが上がる事に恩恵がある。命中率の補正が掛かるだろう。当てやすくなる。また威力が高くなる。これはレベルMAXまでいけば人でも殺せる。


────石って怖い。


なんだか充実した12時間であった。

コメント

  • 桜

    面白いです!期待してます

    0
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