Endless Game!

深谷シロ

第1話ㅤSurvival in the world

時は2072年。


かつてはゲームの大半を課金ゲームが占めていた時期があった。制作会社にとっても課金者プレイヤーにとっても利益の多いこのシステムは誰もが続くだろうと思っていた。


但し、課金ゲームはとある事件を切っ掛けに数を急激に減らしていった。


2072年現在、課金ゲームは絶滅寸前まで追いやられている。ゲームというものは勿論作れば数は増やせるだろう。だが、ゲームという分野には両者の利益が重要視される。


先程も言ったが、制作会社とプレイヤーの相互の利益である。どちらかでも不利益となればそのゲームは売れることが無い。


そして、急激に減少することとなった課金ゲームの代わりに頭角を現したのがVRMMOだ。


VRMMO。〈Virtual Reality Massively Multiplayer Online〉の略称である。日本語訳では〈仮想現実大規模多人数オンライン〉と呼ばれる。


課金ゲームが台頭していた時代にはVRMMOはまだ実現していなかった。


VRMMOが初めて開発されたのは2050年。年が変わると同時に初めてのVRMMOのゲームの発売が決定した。


そのゲームの名は〈リビルド・ユア・ライフ〉。これは今も尚流行り続けるジャンル〈異世界転生〉をゲーム化したものだ。VRMMOの知名度は開発前から高かったために発売が開始されると同時に瞬く間に売れてしまったのだった。


新年が始まり一時間も経たないうちにだ。ネットでも話題となった。どんな店に行っても〈リビルド・ユア・ライフ〉のみが売り切れていた。


週間ランキング、月間ランキング、年間ランキングで堂々の一位を飾り、さらに一年後には総合売上ランキングでも一位を飾ることとなった。


この衝撃的なVRMMOの始まりは新たな時代の幕開けだった。2051年から一つ、また一つと新しいVRMMOゲームが発売されてきた。


どの作品も人気を博した。VRMMOのゲームが発売される度に数々のランキングでは首位をとる。


完全に時代はVRMMOとなったのである。


そして、今年。かの人気ゲーム〈リビルド・ユア・ライフ〉を開発した制作チーム〈Progressプログレス〉が新ゲームを発売を開始する。


そのゲームの名は〈サバイバル・イン・ザ・ワールド〉。通称〈SW〉。〈異世界転生〉を題材とした〈リビルド・ユア・ライフ〉とは打って変わったサバイバル系のゲーム。


このゲームが売られると同時にある宣伝があった。


『〈Progress〉の新作ゲーム〈サバイバル・イン・ザ・ワールド〉は多人数でのサバイバルゲーム。二ヶ月後〈Progress〉はこのゲームで大会を開催します。』


要するに〈SW〉内のゲーム特性を活かした大会を開催するのである。勿論、賞金ありで。この大会の開催を受けて名だたるゲーマーはこのゲームをプレイした。


そして、二ヶ月後。


東京にて開催されることになった〈SW一位決定戦〉。各国のゲーマーが集まり、一万人を超えていた。


列になって受付をしている。


ここまでゲームばかりの話をしてきたが、そろそろ自分の説明もするとしよう。


僕の名前は星丘ほしおか祥汰しょうた。年齢は22歳である。今は大学に通いつつ、ゲームに明け暮れる毎日だ。バイトはゲームがあるからしていない。


僕の人生はVRMMOと共にあったと言っても過言ではない。まず僕が生まれた年に初代VRMMOである〈リビルド・ユア・ライフ〉の発売が開始。


親はあまりゲームに興味が無いため、このゲームが家に置かれることになったのは僕が10歳になる頃だった。


それから多く発売されるVRMMO。僕は年齢が上がるともに様々なゲームをプレイしてきた。勿論、その過程で初代の〈リビルド・ユア・ライフ〉もプレイしている。


どちらかと言えば僕はゲームが得意な方だと思っている。学校でも友達と対戦をすれば全戦全勝であった。無敵である。その内に僕は仲間内から〈無敵ゲーマー〉などと皮肉を込めて呼ばれるようになったが僕は誇りに思っている。


とは言っても僕はゲームをすることで、友人関係が疎かになる、などといったことは無いようにしている。


親は勉強ばかりしていた。だからこそ偏差値の高い大学に行って、一流企業に就職出来たのだろう。その代わりに親は友人がいなかったのだ。


親は僕に勉強しろとは言ったが、程々にしか勉強はしていない。だが、僕の進んだ大学は皮肉にも親と同じ大学であった。


今は大学の冬休み。早々に宿題を終わらせ、ゲームに明け暮れているのだ。……偶に友達と遊びには行く。


そして、遂に開催されたこの大会。僕は勿論〈サバイバル・イン・ザ・ワールド〉を購入し、何度も何度もプレイした。大規模多人数オンラインであるため、プレイヤーは当然多く、ランキングシステムも存在していた。


僕はそのサバイバルランキングにて毎回一位を取ったが、偶然だと思っている。


世界中の人がプレイしていて毎回同じ僕が一位取るなんて偶然以外の何物でもないさ。


そして、今。僕は受付を待つ列にいる。


「次の方、どうぞ。」


おっと僕の番だ。


「ユーザー名とユーザーIDを教えて下さい。」


この大会は〈SW〉でプレイしているユーザーしか出場する事は出来ない。そして、一週間以上のプレイ期間を必須としている。年齢制限は存在しない。


この〈SW〉のユーザーシステムとして、変更不可のユーザー名とユーザーIDが存在する。これでプレイヤーを見分けるのだ。


「ゲーム名は『Star』です。ゲームIDは『star_0227』です。」


「……」


受付の人が必死に探しています。名前はアルファベットでしか登録出来ないために順番は当然アルファベット順なんだろうけど、その数が多いのだ。


僕と同じ『S』から始まる名前だけでも数千はいるようだ。


「……はい。確認出来ました。会場内へどうぞ。そして、大会中は絶対にこれを無くさないようにして下さい。」


受付の人はICカードのような物をタブレットに接続して、何やら打ち込んだ。そしてそれを僕に渡した。


「これは……?」


「ユーザー認識システムが入っています。これはあなたの証明書となるので無くさないように気を付けてください。」


「分かりました。」


僕はICカードを受け取った。そのICカードの表面には〈Player Card〉と書かれている。工夫されてるんだな。


そのまま入口に入る列に僕は加わった。


今回〈SW〉の大会が開催されるこの会場は、数年前に建てられた最新施設である。


施設名は〈東京フューチャータワー〉と言う。全部で90階建ての施設で世界最高の高さとなった。この施設を〈Progress〉が全て貸し切って大会を行うのだ。〈Progress〉の資本の多さには誰もが驚かされる。


大会開催期間は一週間である。別に予選などがある訳では無い。言うなれば一週間サバイバルだ。それで最後まで残った者が優勝となる。優勝賞金は十億円。金額が大きい代わりに準優勝賞金は存在していない。


『一時間後に大会を始めます。各プレイヤーの皆様は一階のエレベーター搭乗時にエレベーター内のボタン下にある黒い透明な板に配布された〈Player Card〉を翳して下さい。』


僕はエレベーターに丁度乗ろうとしていたので他の人と同様に翳した。するとエレベーター内で音声が流れる。


『ユーザー名『Star』様。90階です。』


どうやらこうやってプレイヤーを分けているらしい。今は特に無い筈だがこれも最新施設だからこそ導入されている技術なのだろう。


順々に人が降りて行き、最後は当然僕だけとなった。88階の人がいたが、後はいない。僕は90階へ辿り着く。


エレベーターのお馴染みの到着音が流れ、ドアが開く。僕は外に出た。


この〈東京フューチャータワー〉は構造として89階までが階自体の面積は変わらないが、90階のみが他の階よりも面積が広くなっている。そして、余剰分は地面がガラス仕様なのである。ありふれた恐怖スポットだ。


僕がどこに行くべきか迷っていると男の人が近付いてきた。


「〈Player Card〉を見せて頂けますか?」


「あ、はい。」


僕は首から下げている〈Player Card〉を手渡した。それを男の人はタブレットに接続する。受付と同じだ。


「ありがとうございます。『Star』様ですね。こちらへどうぞ。」


僕は小さな部屋に案内された。長机と椅子が置かれている。何かの講義室のようだ。そこには数名人がいた。どうやらここで一時間待てという事らしい。


僕は本を持ってきていたので本を読む。因みに僕が読む本はゲーム攻略本などでは無い。普通に小説である。今流行りの作家の新作を読んているのだ。親から借りた。


一時間待つ間に来た人は三人だった。既に部屋にいた三人に加えて僕と後から来た三人で合計七人。


そして最後に先程もあった男の人が来た。


「これより〈SW一位決定戦〉を開催します。皆様は他のプレイヤーと別の部屋を用意させて頂いております。」


そう男の人は告げた。部屋の中に数人の独り言がこだまする。


「皆様の共通点は〈SW〉内にて一位になった事がある方々です。」


合点がいった。そういう事か。僕はプレイする度に運良く一位を掻っ攫った。しかし僕もずっとログインしている訳では無い。ログイン出来ていない時には他の人が一位を取っていたのだろう。


他の人達も納得がいったようだ。それを確認した男の人は再び話し始める。


「では皆様にはここから〈SW〉にログインして頂く訳ですが、皆様にはボーナスを用意させて頂いております。」


一人がそれはズルでは無いのかと指摘したが、「当ゲームを愛用して頂いている証拠なので。」と躱していた。指摘しても変わらないものは変わらないだろ。それよりも賞金が近付くのだから有り難い話だ。


「皆様に渡されるボーナスは〈サバイバルアイテム〉です。ゲーム内で存在しているあのアイテムの事です。」


男の人が言った〈サバイバルアイテム〉とは、通常のサバイバルで当然必要となる道具の事だ。これが支給されるらしい。


「これは全プレイヤーにあるボーナスですが、皆様は特別なボーナスとなっております。それはログイン後にお確かめ下さい。それでは皆様こちらへ。」


男の人は僕達を〈ダイブマシン〉のある所へ案内するらしい。VRMMOをする際にはこの〈ダイブマシン〉が必須である。コンパクトであるため、狭い部屋でも安心して購入出来る。


男の人が案内した先はベッドが沢山置かれた部屋だった。良かった。床にそのまま寝るということはないらしい。


「皆様、お好きな所でログインしてください。ログイン開始は三分後です。」


僕は部屋の隅を選んだ。目立ちたくないからだ。他の人が〈ダイブマシン〉をセットし始めたのを確認して、自分もする。


そして〈ダイブマシン〉を付けた人々はこう言うのだ。


「【ダイブ】!!」

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