(自称)小説家が異世界召喚されて勇者として無双するかと思いきや商売とバイトでしか無双出来ていません!

平涼

俺は地味に役に立っていました!

 今回呼ばれたのは食事会を開いて俺へのお詫びらしい。

 だけど残念ながら家に居たらこんな痛い目に合わなくて済んだ気がするのは間違いだろうか。

 なので食事会が終わり俺達はもう帰ることに。

 .......あれ?何か忘れてる気がするけど気のせいだろう。

 帰りはどうやら転移魔法というのが王国にはあるらしく、街に返してもらうらしい。

 だがその前に俺は一つ聞きたい事があった。

 「なあ、王様。手紙に俺が密かに役に立ってたって書いてあったけどあれどういうことなんだ?」

 王様は少し考える素振りを見せ、

 「あ、ああ。あれかあれはな、俺達が魔王軍と戦っているんだが最近魔王軍幹部が二人もお前が倒したようではないか。それで最近は魔王軍の勢力も指揮が下がっとるんだ」

 ん?んん!?こいつら魔王軍と戦ってたの!?そういえばよく考えたらベラもそうだ。

 魔人って人間と全然変わらない。ベラに確か変わっているのは長寿と魔力の違いとか言ってたな。

 成る程。それなら俺が手助けしたことになってるよ!

 「.......まあな。俺も一応手違いとはいえ呼ばれた身だからな!当たり前の事をしたままだよ!」

 「ねえ。あいつ絶対分かって無かった筈よ」

 それに後ろの二人は頷く。

 王様に聞こえてしまうから止めて欲しい。


 「そ、それよりも俺達もう帰るから!転移魔法かけてくれ!」

 「ああ。おい、返してやれ」

 「はい!」

 一人の青年が杖をもって現れた。多分この人が送ってくれるのだろう。

 「では皆さん。僕の何処でもいいので掴んでください」

 その人は魔法陣の様な物を書いてその上に立った。

 そう言われたので、皆で魔法陣に乗ってこの人の腕を掴む。

 「それから今からこの魔法陣から出ないでください」

 「出たらどうなるの?」

 リザは興味本位で聞いたのだろう。だが止めて欲しい。そんな事を聞くとほんとにそうなりそうだから止めて欲しい。

 だがその杖を持った青年は律儀に答える。

 「そうですね。確か転移魔法を使用している時に動いてしまうと、転移出来ない、もしくわ、魔法陣が壊れて、当分転移で帰る事が出来ません」

 「お前ら!絶対動くなよ!」

 俺は全員に一応言っておく。

 リザ辺りがちょっとやってみようかなとか思ってやりそうだから怖い。

 ほんとに止めてくれよ。折角セルミと最近上手くいってるんだからこれ以上邪魔をして欲しくはない。

 「では始めますよ」

 「分かりました」

俺が返事をすると、魔法陣が白く光りだした。

 おお!なんか転移魔法っぽいな。

 俺がそう思いながら待っていると、服を掴まれる感触が。

 .......服を掴まれる?

 「王女様!いけません!」

 そこで俺らの転移を見守っていた人の一人が叫ぶ。

 俺がそちらを振り向くと、王女様が俺の服を掴み震えている。

 何だ?そんな俺と別れるのが悲しいのか?俺全くこいつと話してないけど。

 「おい。何の用事か知らないけど危険だから離れろ」

 「......けないで」

 「ん?」

 「ふざけんな!」

 俺はその王女様に胸倉を掴まれ一本背負いをされた。

 「転移魔法!」

 その瞬間皆は街に帰った。だが現在俺は未だ王国にいる。

 俺が呆然していることに気付いてない王女様はそんな事はお構いなしで、

 「あんたほんとにふざけないでよ!私は待ってたのよ!それなのに帰るってどういう事よ!」

 そうでしたね。ですがね。先程の話を聞いていなかったのか。こんな事したら、

 「俺帰れないじゃないか!!!!」

 全員が今の状況に唖然としている中俺はそう叫ばずにはいられなかった。

 そして一度俺は王の城に戻り、現在の状況を確認した。

 まずリザ達は普通に帰ることは出来た。

 そこは良かった。だがこれからが問題だ。

 まずあっちの街から転移魔法で帰ってきた青年によれば、こちらの魔法陣は案の定故障して、直すのに時間がかかる。

 そして、青年がこちらに来た事で、もうあちらには転移魔法ではいけないのでリザ達はこちらに来ることは出来ない。

 まあ。それは仕方ない。

 だが話はそう簡単ではない。

 普通ならばここで馬車で帰れば時間は掛かるが帰れるのだが、現在、

 「なあ。放してくれないか?」

 「絶対いや!帰るでしょ!」

 鋭い王女様に服を掴まれ放してくれないのだ。

 先程から騎士の様な人達にも説得されているが離さない。もうほんとに勘弁して欲しい。

 皆はここで引き離して行けと言うのかもしれない。

 だがそんな事が出来ない。理由は簡単、この王女様俺より力が強くて敏捷が高い。

 ステータスを見てないが分かる。王族はどうやら異能かステータスが強い方々は多いらしい。

 それでこの王女様もそのステータスが高い一人である。

 よって俺はこの場から逃げる事も帰ることも出来ない。

 「ほんとに申し訳が無いんだが娘に冒険話を聞かせてあげてくれないか?数日話を聞いたらそれで満足すると思うんだ」

 王様にお願いされた。

 「分かった。今回だけだからな。ただ俺の仲間に少し帰るのが遅くなることを手紙でもいいから伝えておいてくれ」

 「分かりました。特急で渡してまいりますが、二日は掛かると思います」

 「分かった。ほれ、逃げないからお前も放せ」

 ずっと掴まれえるのも何だか居心地が悪い。

 「逃げない?」

 「逃げない、逃げない」

 するとようやく放してくれた。

 俺は数日ここに住むことになりそうなので、住む部屋に連れて行かれる。

 そうしてひとまず休むことが出来る。

 「はあ、ほんと勘弁して欲しいなあ」

 そう思うが今回はしょうがない。

 今回俺が受けたのは王様によって異世界に召喚されたお礼のつもりだ。

 確かに手違いかもしれないけどこんな世界に連れてこれただけでも感謝なのだ。

 だからこそしょうがないんだが、

 「何でお前そんなところにいるんだ?」

 王女様のさっきまでの態度はなんだったのかは知らないが、ドアからひょっこり顔を出してこちらを見ている。

 「.......さっきので怒ったと思って」

 意外と可愛いじゃないか!

 今日から俺は王女様の話し相手になりました。

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