(自称)小説家が異世界召喚されて勇者として無双するかと思いきや商売とバイトでしか無双出来ていません!

平涼

在り得ない事実!

 俺は即座にツッコンだ。

 そのツッコミに対してお姉さんは目を逸らした。

 「どういうことだ?なんで俺こんな場所に連れてこられてんの?」

 そこでお姉さんは観念したのか姿勢を正して言った。

 「正直に言えばそんな理由でここに連れてきてはいけません」

 「あんた今よくそれが言えたな。今までの時間全てが否定されたぞ」

 これはあり得ない。すると、お姉さんは慌てて弁明した。どちらが取り調べを行っているのか分からない。

 「聞いてください。今までずっとこの留置所には二人ほど常連のように来ていてこの場所は必要とされていました。ですが最近はこの街は平和なのです」

 「いい事じゃないか」

 「ですがそれだとこの留置所は必要なくなり、私達の仕事は無くなり給料が無くなります。ですから最近では少しでも怪しい人物は取り敢えずここに連れて来て取り調べをしてすぐに帰すようにしてるのです」

 「冗談?」

 「冗談にしては笑えませんね」

 「ほんとだよ!」

 マジどうなってんの?こんな事が許される世界何てありえるの?いやあり得ない。

 まあ確かに仕事がなくなると給料安くなるのは分かるんだけども。バイトの時も人が少ないと早く終わるんだよな。

 閑話休題それはさておき

 「それじゃあ俺は帰して頂けるんですよね?」

 ようやく帰ってゆっくりすることが出来る。

 「いえ、あなたは帰しません。少しあなたは危険な人物だと分かったので」

 先程までとは違い真剣な表情でそんな事を言う。

 「マジ?」

 「マジです」

 「寝る所は?」

 「この留置所の地下です」

 うん。これは大変よくない。駄目だ。逃げたいけど逃げれない。だがここでこそ俺の知力が発揮される。

 「あのですね。もしもの話をしてもいいですか?」

 「何ですか?」

 お姉さんは不思議そうな顔をしていた。

 「もしも僕の魔法が間違って使ってしまってここにヌメヌメの何かが出てきてあなたを襲ったらどうします?」

 それに若干戸惑いの表情をするお姉さん。

 「......冗談ですよね?」

 「冗談にしては笑えないですね」

 お姉さんは先程までとは違い焦りながら、

 「え、でもこのまま逃がすわけも行かないんですよ?分かりますよね?」

 お姉さんは訴えてくる。

 「まあ、俺は何も悪い事はしていないですし、せめて寝る場所とかをねお姉さんの家にしてくれるとか無いんですかね?そうしてくれたら俺は大人しく明日も取り調べに応じてもいいですけどねーー」

 ......俺自分でももうクズと思ってきた。だけど勝手に連れてこられて更にはまだここにいてもらいますとか言われているのだ。少しぐらい得があってもいい筈だ。

 俺がお姉さんをチラチラ見ながら言うと、お姉さんは即答した。

 「いいですよ」

 「へ?」

 俺はつい間抜けな声が出てしまう。そんな即答されるとは思わなかった。

 「何でですか?」

 「何でって言われましても自分的に得しかない事だからですよ。一緒の家に泊まって何かあったらそれこそ裁判になって私の選択が間違ってない事になりますし、取り調べに明日も応じてくれますし、それに加えてイケメンと寝れるなら友達にも自慢できますしね」

 .......んん?今俺は人生で言われたことがない言葉が聞こえた。

 「今俺がイケメンって言いました?」

 「はい。あなたは誰から見てもイケメンだと思いますよ」

 え?ほんとに?あれか!異世界だと俺はカッコイイ系なのか!

 日本では誰からも普通と言われ続けたこの顔が.....。

 「まあ、中身がクズですから意味が無いんですけどね」

 「俺の感動を返せ!」

 「まあそれにしても黒髪で黒目で、それだと.......」

 そこでお姉さんの声が止まった。

 「どうしたんですか?」

 「......もしかしてあなたは貴族の方ですか?」

 「いえ。違いますけど」

 それにお姉さんは一度溜め息をついて、

 「はあ。ならよかったです。それで私の家に来るんですか?」

 「行きます」

 俺は即答した。いやね。悪い事してませんし。

 「それなら足の鎖は外しますが手の方は外しませんよ?」

 「何かのプレイですか?」

 「黙ってもらっていいですか?」

 「すいません」

 もの凄い目で睨まれた。だが分かってないなこの人。

 手が塞がれているこの状況。それならば食事に関しても俺が手が使えないから......。

 完璧だ。今俺の運は絶好調かもしれない。

 俺はそう思いながら足の鎖を外れるのを待っていると、

 ドッカン!

 そんな音が聞こえたのだった。

 世の中そう上手くはいきませんよね。

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