(自称)小説家が異世界召喚されて勇者として無双するかと思いきや商売とバイトでしか無双出来ていません!

平涼

ベラは真剣

 突如ベラが泣きそうな顔で家に入って来た。

 「どちら様ですか?」

 「何馬鹿な事言ってんのよ!緊急事態なの!」

 そこにはベラがいるのだがメイド服を着てるんだが。

 「聞きたくないから帰っていいよ」

 「ねえ!あんたの契約にも関する事なのよ!」

 今聞き捨てならない事を聞いた気がする。

 「どういうことだ?」

 俺はベラに事情を聴くと、話してくれた。

 ベラは俺のお金で一括で店になりそうな家を買ったらしい。

 それは別に構わなかった。だがこいつはアホだったらしく、そのお店として買った家がデカすぎたのだ。二階建ての広い店になりそうな所を買ったらしい。

 そんなにも大きな店だったら誰の眼にもつくのは間違いないのだ。

 しかもベラは普通に料理が美味しいのだ。

 ただ、そのせいで人数が大量に入ってきて、

 「人手が足りないの!」

 「なあ。お前って本気で馬鹿だろ?」

 ベラはそれには答えず、

 「だからあなた達が今日だけ手伝ってくれない?」

 そんな事を言い出した。

 「お前アルバイトとか雇ったらどうなんだ?」

 するとベラが目を逸らしながら、

 「......家にお金を殆ど使って食料とか色々買ってたら無くなりました」

 「ほんとの馬鹿だろ」

 それにベラは目を逸らすだけ。

 「なら今日は閉店にして明日なら仕方ないからアルバイト雇うだけのお金を貸してやるから」

 「それは絶対に嫌なの!」

 ベラが今までとは違い真剣な表情で訴えてる。

 「折角私の料理を楽しみにしてきてくれてる!こんな事初めてなの!お願いします!」

 .......お願いが上手いじゃないか。

 「悪い。俺今からちょっとこいつの店に行ってくるわ」

 俺は仲間にそう言ってベラと行こうと思ったら、

 「待ちなさいよ!水臭いじゃない。私達も手伝うわよ!」

 リザがそんな事を言ってきた。

 それに他の皆も頷いている。

 「......お前ら。よし、行くぞ!」

 そして俺達は全員で店に向かう途中俺はどうしても気になったのでベラに聞いた。

 「お前何でメイドの服なんだ?」

 「これは私が昔行った所でこの服で飲食店を出している所が人気だったのを思い出してこの服にしたの!」

 俺はそこでふと思ってしまった。

 こいつがメイド服ってことはここにいるメンバーも......。

 俺は全力で店に向かうのだった。

 そして店に向かうと殆どの席は満席で、

 「おい!料理はまだなのか!ずっと待ってんだけど!」

 そんな文句が殺到していた。

 それに皆が狼狽えているので俺が指示を出した。

 「ベラは急いで料理を作ってくれ。アイナ、リザ、シャルはベラの補佐をしてくれ」

 それに全員が頷くが、

 「光也はどうするの?」

 リザがそんな事を言ってくるが決まってる。

 「こいつらを何とかこの店で待ってもらう為にミリアとどうにかするからそっちは頼むぞ!」

 俺とミリアはそれから客の殆どが見える位置に行った。

 「お前従業員か!?飯はまだなのかよ!もう腹が減って仕方ないぞ!」

 そこから続けて文句が飛び交う。だからこそ俺はバイトをしていた時困った時があればマジックをしている店長を思い出す。

 俺が日本で働いていた頃の店長はマジックをして少しでも客の注意をこちらに引き寄せるのだ。

 そうする事で一時的だが、お腹が空いた事を忘れることが出来る。客のイライラも多少は収まる事を祈る。

 なので俺はここで待ってもらう為に、

 「私はここの従業員じゃありませんがこのお店の従業員の知り合いの者です!皆さんには大変ご迷惑をおかけしますが色々と都合で多少遅れていますが今賢明に作っております!そんな皆さんの退屈しのぎになるかは分かりませんが今から僕とこのミリアでオリジナル魔法を見せたいと思います!」

 俺はそう言ってお辞儀し、それにミリアがつられてお辞儀した。

 そして俺はまた文句が飛び交う前に披露することに決めた。

 「それでは今からこのミリアの服が突然変わります!」

 すると全員の眼がミリアに向く。

 俺はミリアにメイド服をイメージさせた。創成魔法によってミリアの服がメイド服に変わった。

 「「「「おおお!」」」」

 「すげー!どうなってんだ!?あれがオリジナル魔法なのか!?」

 全員から感嘆の声が上がる。よし。

 「次にこの子をドラゴンに変身させてみせましょう!」

 それに本当に出来るのかと皆の目線がミリアに向いた。

 俺はミリアの方を向くとミリアが頷いた。

 そしてミリアが俺の魔法を使わずにドラゴンに変身してくれる。

 「「「「おおおおお!!!」」」」

 「すげー!すげーぞ!」

 だがちょっと待て。

 「お前!俺が折角出したメイド服が!」

 メイド服がドラゴンに変身したことによりびりびりに裂かれた。

 「なんだこいつら!」

 店の中で大爆笑が起きる。

 よし。ここまでは順調だ。俺はそれからもミリアと一緒に俺の魔法を使いながら芸を披露していると、

 「大変お待たせしました!」

 リザ達がご飯を提供している。よし。

 「おっと。もうそろそろご飯が出来てきています!あと少しで美人の女性陣が可愛らしい服装でご飯を提供させていきますので少々お待ちください!」

 ここにいる殆どが男性だ。美人と可愛らしい服装に反応しない男はいない。美人が来るならもう少し待ってもいいだろうという気持ちになる筈だ。

 俺はそれからその場を退散し、厨房に行くと、そこには賢明に仕事をしているベラの姿が。

 ......手伝ってやろうって思ってしまうじゃねえか!

 「アイナ、シャル、リザ、ミリアはこの服装に着替えてお客に水などを提供して来てくれ」

 「「「え?」」」

 三人の声が重なる。ミリアは先程着たから何とも思ってないようだ。

 だが皆が驚くのもしょうがない。その服はメイド服だから仕方ないのかもしれないが、

 「え?じゃねえよ。ここではメイド服で仕事をするんだよ!」

 そんな事は聞いてないがそう言うしかない。メイド服姿が見たいのだから。

 「けどこの服似合うのかしら?」

 シャルのそんな声が聞こえるが、似合わない訳がない。見てくれは三人とも美人なんだから!

 「絶対に似合うから!お前らなら似合う!客も待ってるから!俺はここでベラの手伝いをするから!」

 そう言って俺はベラの手伝いをする。

 三人は観念したのか着替えて水を提供しに行ってくれた。

 「ミリアもこのコップに水を汲んで持ってない客に出してくれ」

 ミリアは頷いて持って行った。

 「あの子にやらせて大丈夫なの?物とか壊したらそれこそ客がキレそうだけど」

 ベラが料理をしながら俺に聞く。まだまだこいつも分かってないな。

 「ミリアはまだ幼女だが美人でもある。逆に物を落としそうになるミリアを見る客も現れて一瞬でも食事を忘れることが出来る筈だろう」

 「なるほどね」

 後で絶対あいつらのメイド服を拝もうと決め俺はバイトを思い出し、手伝いに真剣に取り組む。

 俺は野菜を切ったりするだけの下準備だ。

 だが下準備を馬鹿にしてはいけない。

 これがないと料理をする人はスムーズに作業する事は出来ない。

 「あんた分かってるのね。さっきはシャル達が料理をしようとしていたから下準備だけお願いって言ったのに、あんたは初めから下準備しかしないのね。それに手際もいいし」

 「ここはお前の店だろ?俺が作っても意味が無いんだろ。手際が良いのは元からだ」

 ここで初めて俺の一人暮らしの成果が出るとは思わなかった。それにバイトもしてたしな。

 俺とベラは阿吽の呼吸というものだろうか。

 完璧に息の合った行動ででスムーズに行うことが出来た。

 そして何とか閉店まで持ちこたえたのだ。

 「はあ。本気で疲れた」

 俺は外の空気を吸いに出ていた。辺りは真っ暗だった。だがそこはやはり日本とは程遠いものだと改めて実感する。

 そんな景色を見ていると、隣にベラが座った。

 「はいこれ」

 そう言って飲み物を渡してくれた。

 「サンキュー」

 俺はそれを飲んでいると、

 「今日はありがとね。まさかこんなにも楽しいものとは思わなかったわ。最初は適当な感じだったんだけどね」

 そこにはいつもの調子のベラではなく普通の女性のようなベラがいた。

 「それは俺もお金を貸してよかったと思える。まあこれからが大変だろうけどな」

 バイトもそうだ。最初は楽しく感じるのだ。だが後々めんどくさくなるものなのだ。その期間を乗り切れば後は楽なのだが。それが意外と難しいのだ。

 「確かにね。だけど今日ので実感したわ。私はちゃんと真っ当に働いてこれまでのお店にお金を払いに行くわ」

 ベラは決意した目でそう宣言した。

 「そう思えるならいい事だろうな」

 「あなた光也にもきちんと返すからね」

 ベラはそう微笑んだ。俺は何だか照れ臭くなったので、

 「店に戻るぞ。今からメイド服を見に行かないといけないからな」

 「一応私もメイド服着てるんですけど!」

 そんな軽口を叩きながら店に戻ると、メイド服を着た四人が一つのテーブルで寛いでいた。

 こいつらやっぱり見た目だけは相当な美人なんだよな。そう思わずにはいられない。

 アイナは黒髪でもありそのメイド服がとても似合っていた。

 シャルも金髪でそのメイド服をいつも着ていて欲しいと思える。

 リザも似合っていて、なんだかドジっ子メイドの印象がある。ミリアはリザと同じ印象だ。

 俺はここにいる全員との生活でいつしか日本に帰らなくてもいいんじゃないかと思えてきた。

 ~翌日~

 俺達はギルドに来ていた。だが俺達の眼前には赤髪のお姉さんがいて後ろには護衛なのか騎士のような人が二人ほどいて俺の方を向いている。

 俺はここで悟った。これ告白だわ。

 まあ、そりゃあ魔王軍幹部を二人も倒したんだ。逆にモテない筈が無いのだ。

 俺はお姉さんの告白を待っていると、

 「あなたが結城光也さんですね?」

 あれ?俺の事を知らなかった?少し不思議に思いながらも、

 「はいそうです」

 「あなたには危険な魔法持っちゃってる罪がかけられています。我々と一緒に来てください」

 俺はそれを聞いた瞬間に即座にその場から逃げ出した。

 「どうせこんなことだろうと思ったよ!」

 やっぱり日本に帰りたい!

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