(自称)小説家が異世界召喚されて勇者として無双するかと思いきや商売とバイトでしか無双出来ていません!

平涼

感謝・お礼

  馬車に乗せてくれた爺さんと、おにぎりを食いながら他愛もない話をしていた。

 因みにこの世界でもおにぎりはあるが日本人の俺からしたら少し味が薄かった。

 「お前さんは何処から来たんじゃ?あんまり見かけん格好じゃが」

 ここでのテンプレは完璧だ。

 「俺は遠い東の国からここで冒険者として働く為に来たんだ」

 爺さんは感心したように、

 「ほう、お前さんは凄いな。わざわざこんな所まで来るなんて。しかしわしが今から行く所は商業の街じゃがいいのか?」

 「いいよ。流石にそこまで迷惑かけられねーよ。それに、そこでも冒険者ギルドぐらいあるだろうし」

 俺はそう言い、これ以上ボロが出ないよう話を変えた。

 「おじいさんはなんであんなところを走っていたんだ?」

 「あぁ。わしが今から行く所はこの道を通らないといけないんじゃよ」

 「へぇ。けどこんな所走って大丈夫だったのか?戦争がすぐそこでやっているだろう?」

 「それはお主も一緒じゃないか。それにな。この国には勇者が召喚されたそうじゃよ。だから、すぐに戦争が終わると踏んで出たんじゃが、駄目じゃったな」

 と笑いながら言う。

 逆にボロが出るよ!

 俺は嫌な汗をかきながら、

 「....それじゃ、俺ちょっと飯食って眠くなったから寝るわ」

 「おお、そうか。馬車の中で寝心地悪いかもしれんがしっかり休んでくれ」

 俺はすぐに寝たふりに直行した。

 .....いや、待ってくれ。これ俺が思ってた異世界召喚と違うんですけど。

 まずさ。俺に能力も何一つないのに俺を召喚すること自体がおかしい。

 なんで、俺召喚されたんだろう。

 日本に今すぐ帰りたいんですけど。

 しかも、期待されるとかマジで勘弁してくれ。この爺さんも俺に期待してたし。

 それにさ、異世界召喚だったら、俺を呼び出すの普通お姫様とかだろ。

 なんでおれはおっさんに召喚されてんだよ。誰に需要があるんだよ。

 そんな事を考えてると、俺はいつの間にか眠っていた。

 爺さんに起こされた。

 「おい、お前さん。もう街に着いたぞ。ここでいいんじゃろ?」

 どうやら疲れて眠ってしまったらしい。

 「あぁ、ここでいいよ。マジでありがとな。爺さん」

 まあ、ここが何処か知らないんですけどね!

 俺はお礼をいい街に入ろうとするとすると爺さんに止められた。

 すると爺さんはポケットにあるお金を俺の手の上に置いた。

 「いいよ。いらない。流石にそこまで世話になるわけにもいかない」

 だが、爺さんは受け取らなかった。

 「お前さんはお金持ってないんじゃろ?冒険者になるんだったら、お金が必要だったはずだし、持っていけ」

 「そういうことなら。マジでありがとな、爺さん。」

 俺は爺さんにお礼を言って街に入った。

 街に入ると多種多様な種族がいた。

 獣人、エルフ、ドワーフなどいた。

 おお!これだよ!これが異世界だよな!

 と思いつつ周りをきょろきょろ見てると、看板などがあるが、あることに気が付いた。

 全て日本語なのだ。召喚された時は夢だから日本語なのは当然と思っていたけど今考えたらおかしいよな。

 多分召喚される代わりに文字は分かるようにしたんだろう。

 言語変換よりチート能力が欲しかったが。

 そんなことを思いながら街を歩いていると、ギルドはデカかったのですぐに見つかった。

 商業の街でも意外とギルドはデカいんだなと思いつつ、中に入る。

 ギルドの中は意外と俺が考えているようなものと同じだった。

 掲示板、受付などがあった。

 周りは、冒険者でいっぱいだ。

 重装の剣士、ローブを着て杖を持った魔法使い。

 そうだよ。ほんとこれだよ。これが異世界だよな。

 どっかのとこみたいに戦争が起きるとかじゃないよな。

 そう思いながら受付に行く。

 俺は、

 「あの、冒険者登録したいんですけど」

 と言うと受付の人は笑顔で、

 「そうですか。ようこそ。冒険者の街メルグへ。こちらで登録する場合登録料を払わないといけませんが大丈夫ですか?」

 「大丈夫です。持ってます」

 と言い、ポケットからさっき貰ったお金を出そうと.......いや。待て。この人今なんつった?

 「あのここって商業の街ですよね?」

 受付の人は不思議そうな顔をして、

 「いえ。ここは冒険者の街ですよ」

 「.....ちょっとすいません。急用が出来ました」

 俺は急いでギルドから出た。

 引きこもってて体力が全くないが、それでも全速力で走った。

 この街の入り口の場所に行くと今丁度この街から出ようとする爺さんがいた。

 「爺さん!」

 俺は大声で呼び止めた。

 爺さんは俺に気が付き振り向いた。

 爺さんが何かを言う前に、

 「爺さん。本当にありがとうございます。俺はいつか必ずあんたに恩返しをするから。それまで気ままに生きててくれ」

 俺は土下座をして感謝を込めて言った。

 爺さんは笑顔で頷き、

 「顔を上げてくれ。お前さんに、少しでも楽をさせてあげようとする爺さんの計らいじゃよ。ただ、お前さんの名前を教えてくれんか。名前を覚えとかんと、わしは爺だから顔を忘れそうでな」

 俺はここまで親切にしてくれた爺さんの行いに泣きそうになるのを堪えながら、

 「俺の名前は結城光也ゆうきみつやだ。いつか、必ずあんたに恩返しをする名前だ。覚えといてくれ」

 「そうか、光也というのか。覚えておこう。恩返し、楽しみにしとるぞ」

 そう笑顔で言い、馬車でどこかに行ってしまった。

 俺は馬車が見えなくなるまでずっと頭を下げた。そういえばあの人の名前聞きそびれたな。

 まあ、顔は忘れないし大丈夫だろう。

 見えなくなって頭を上げると、周りの人か沢山見られていたので、急いで冒険者ギルドに戻った。

 ここから、ミツヤの冒険者としての物語が始まる。

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