(自称)小説家が異世界召喚されて勇者として無双するかと思いきや商売とバイトでしか無双出来ていません!

平涼

異世界召喚されちゃった!?

「ようこそ、我が国へ」

 そんなおっさんの声が聞こえた。

 いやいや、待て待て。ナニコレ。

 俺はさっきまでなにしてたっけ?

 ~数時間前~

 俺は小説のプロットを考えていた。だがなにも思いつかない。

 異世界ものを書きたいとは思っているんだが、何にも思いつかない。知識はあるがそれによって組み立てる小説が一切思いつかない。

 俺が一回ネットで出した小説は10話書いたところで躓き、更に評価はゼロだった。

 あれは落ち込んだな。だが、それから新しい小説を書こうと思ってはいるが一切思いつかない。

 多分寝たら思いつく気がする。寝よう。

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 そうだ、俺はあそこで寝た筈だ。多分これ明晰夢めいせきむだ。

 明晰夢は確か夢だと自覚しておきながら自由自在に夢をコントロール出来た筈だ。

「ごっほんん!」

 わざとらしい咳をして不機嫌なおっさん。

「えーと、俺になんか用か?」

 俺がやっと喋ったことに機嫌を直したおっさんが、

「そうだ。お前にこの国の勇者になって貰うべくここに召喚してもらった」

 ほう。中々良い夢だな。

 これは小説の材料になりそうだし話合わせとくか。

「わかった。俺にドラゴンでも倒させるのか?」

「いや、戦争に参加してもらう」

「......は?」

「だから、戦争に参加してもらう」

 ......あれえええ?おかしいな。異世界って言ったら冒険じゃないの?俺の思っている異世界と違うな。

 まあ夢だしいっか。

「まぁ、任せておけ。なんたって俺は勇者だからな」

 俺の言葉に周りの兵士が喜びの声を上げた。

 おっさんは俺の言葉に大変嬉しそうだ。

「なら、お前にはどんな適性の魔法があるか確認しよう」

 そうおっさんが言うと兵士が水晶を持ってきた。

 おっさんの説明によるとこれは適正の魔法を調べるものらしい。

 ちなみにこの世界は火、風、土、水が普通だが稀に雷属性を持った人もいるらしい。

 水晶では、火なら赤、風なら緑、土なら茶色、水なら青色、雷は黄色らしい。

 これは、もう分かるな。俺が稀の雷属性を手にしている奴だな。

 俺は自信満々に水晶に手を置く。

 しかし、水晶の色は変化しなかった。

「......うむ。これはどの属性にも適してないな」

 ちょっとおっさんは悲しい人を見るような眼をこちらに向けてきた。

 ......あれー?ナニコレ。おかしいな。壊れてるんじゃないですか?

 夢でも、俺の人生は残酷だった。

 俺は気を取り直した。これ、夢だし。気にしない。泣いてなんかないんだから!

 おっさんは何か納得の表情をしてこちらを向いた。

「魔力の適正がないということは、お前は異能が使えるんだな」

「あぁ、その通りだ。俺は異能が使える」

 異能がどんなのか知らないが俺はかっこつけて言ってやった。

 おっさんはやはりか、みたいな顔をして、

「お前の異能がどんなものか見せてくれんか?俺も見たことが無くてな」

 そんなとんでもないことを言ってきた。俺は咄嗟に、

「俺の力はここでは使えないんだ」

 とか言ってしまった。俺は何処の中二病だ。

 するとおっさんは、

「そうか。ならその力今から戦争で使ってきてくれ」

 てことも言ってきやがった。

 まぁ、所詮夢だし、すぐ終わるだろう。

「あぁ、わかった。見してやるよ。俺の強大な力をな」

 ほんと何処の中二病だよ。

 それから、俺は戦場の最前線に配置された。

 そろそろ夢も覚めるだろうし、本気出しますか!

 俺は相手に攻めに一人で攻めに行った。

 そして、一人の兵士と戦った時俺は初めて気づいた。

 これ、夢じゃない。

 俺はその兵士の剣が少しかすってしまった。その時痛みを感じたのだ。

 .....あれ?痛いんですけど。夢って痛み感じないんじゃなかったっけ?

 あぁ。俺マジで異世界召喚されてしまったんだ。

 俺はそれが分かった瞬間一目散に戦場から逃げた。

 相手の兵士が追っかけてくるが全力で自分の兵士の所に逃げた。

 .....!いや、無理だから。

 俺ただの(自称)小説家だから。ずっと家にいたから、筋肉もこれぽっちもない。

 逃げよう。何より、この国にいたくない。

 なんせ......あんな中二くさい恥ずかしいこといった挙句、戦場では、一人も倒せませんでしたとか絶対に嫌だ。

「ちょっとお腹痛いからトイレに行ってくる」

 俺は戦場にいる兵士にそう言って何処か分からないが逃げる。

 俺は逃げたのはいいが、どこに行けばいいか全くわからない。それに腹が減った。昼間から何も食べていないのだ。

 あぁ。俺もしかして異世界召喚で勇者として召喚されて餓死するのかな。

 こんな勇者絶対いないわ。

 多分珍勇者の称号を貰うに違いない。

 そんな自暴自棄になっていたところに、

「大丈夫ですか?」

 と美少女ではなく、優しいおじいちゃんが馬車を止めて話しかけてきた。

「大丈夫じゃないです。もしよければご飯と馬車に乗せてください」

 俺がこんな図々しいお願いも、

「えぇ。いいですよ。じゃあ馬車に乗ってください」

 この人は神様だろうか。

 マジで、さっき美少女じゃないのかよとか心で思ったことを許してください。

 そして俺は心優しいおじいさんに助けられ、ある村に行くがそこでも不幸が続くのだった。




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