異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
減少、そして血液型
魔力を流したことでゲートが現れるが、その大きさは直径三メートル。
これでは意味がない。もっともっと小さくしなくてはならない。最低でも二十五ミリ以下にまで小さくしなくてはいけない。
通常のように魔力を流してもそれに比例して大きくなるのなら、今度は逆に少なくしてみる。すると思った通りゲートの大きさが小さくなっていく。
ん、結構難しいな......
今まで魔力を多く流すのは適当にやっていればおおよそ出来ていて簡単だったが、少なくしていくのは難しい。
例えば、今では常時発動させている『魔眼』や『千里眼』も弱めてはあるが苦労はない。
常に少しだけ目を凝らしている感じだ。慣れれば苦ではない。
しかしこれは魔力を強く流している状態で発動する「対象の情報が視える」ではなく、少量で発動する「周囲が明るく見える」という風にしているだけ。
対して今やっている「流している魔力を徐々に減らしながらゼロにはしないようにする」は......脱力、が近いか?
強く手を握っている状態から握っている状態を崩さずに力を抜いていく。さらに腕に一切の力を加えず、だらりと垂らしている状態。
それをキープさせなくてはいけない。
「良し......出来た」
なんとか目標の大きさまで縮めることは出来たが、かなり集中していないと無駄な魔力が入ってしまう。
本当はもう少し小さくして一番大事な脳に繋がる頸動脈である血管の五ミリ以下にまで抑えたかった。毒が流れた首回りから施したかった。
しかし今はそうなるまで試している暇はない。
最低ラインの二十五ミリは心臓の動脈の太さ。
そしてこのゲートをリリーの体内、血管に合わせて開く。
毒は主に血液によって全身に回る。だからその血液をなんとかすれば良いのだが、毒を治癒核で対処することは出来ない。
あれが出来るのはあくまで傷の治療のみだ。
ただ全身に流れている血を抜いてしまうと命に関わるので、ゲートを伝って俺の血と入れ替える。
血に含まれている毒が白血球などの組織を破壊し、完全に神経を麻痺させる前に入れ替えられれば、最悪死なない。
神様のお陰で俺は毒が効かないのだから。恐らく体内に入った瞬間に毒の効果が消えるはずだ。
しかし問題は、もし血液型の違う血を体内に取り込んでしまえば、赤血球が破壊され死んでしまうことだ。
昔見た『間違った血液型の血液パックを輸血して死亡』というニュースでそんなことを言っていた。
俺の血液型はB型。合うのは同じB型かO型、AB型。
それでも他の血液型では危険があるため同じ血液型が望ましいが、正直神頼みだ。
「ニーナ、リリーの身体を少しだけ浮くようにこの布を身体の下へ。ただ首から上は上がらないように注意してくれ」
「分かりました!」
宝物庫から十枚ほどタオルを取り出し、彼女に渡す。
「ユキナ。俺が良いって言うまでリリーに治癒核を使ってやってくれ」
「ん。分か、った」
次に宝物庫からありったけの治癒核の欠片を取り出していき、彼女に渡す。
薄いのも合わせて三十一個。だいぶ減ったな。
これは今から血の流れを『水流操作』で一時的に早くするためだ。
しかしそんなことをすれば高血圧、弁や血管への負担が大きくなる。
負担による負傷などを治癒核で常時治してもらう。
そして治療中に周りに邪魔をされないように全員が入るだけの氷のドームを作る。
六メートルくらいあるドームは少し寒いが、我慢だ。
ただリリーの手にはカイロを持たせておく。ただでさえ体温が下がっている状態だからな。
「キリ。今から俺がやろうとすることは......成功するか?」
そんなことをしていても不安が拭えず、思わず彼女に訊いてしまう。
キリの能力は絶対に等しい。だからこそ救いでもあり、恐怖でもある。
「......ごめんなさい。言えない」
「......そうか」
助けられないのだろうか。
答えを渋る彼女の暗い顔。申し訳ないという顔。
その答えによってか、それとも俺の不安が伝染してなのかみんなが不安そうにこっちを見てくる。
......考え直そう。キリの能力は百パーセント当たる訳ではない。
あくまでそれに等しい的中率のある感覚での判断。未来視ではない。
だからハズれることだってある。
そのハズレを今引くだけ。そう考えれば何も難しくない。
大当たりであるハズレを引く。それだけだ。
「すぅ......はぁ......準備は良いか?」
深呼吸をして気持ちを切り替える。
そして周りに目をやれば、全員が頷いて返してくれる。不安の影はあるが、全員意を決している。
「行くぞ!」
ゲートリングの座標を変更する。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
221
-
-
0
-
-
4
-
-
59
-
-
34
-
-
337
-
-
381
-
-
147
-
-
127
コメント