異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

理由、そして脱出

 
 その理由も教える気があるのかないのか、はっきりしないモリアの相手をし続けるのもバカらしく思えてくる。

「おい、貴様ら。いい加減にウェンベルを殺さんか」

 そういう訳でモリアの事を無視して再び騎士共に命令を下すもやはり動こうとはしない。

「本当に使えんグズ共が! 何をそこまで躊躇う事がある!」

 近くにいた一人の騎士の肩を掴み、グッと引っ張って此方に振り向かせる。

「申......し訳ありま、せん......サヘル、様......」

 振り向いた騎士は震える声で謝辞を述べる。
 私に怯えている? そこまで強く当たっただろうか?
 先程から声を荒げている自覚はあるが、ここまで怯える程ではないだろう。ましてやこれは仮にも騎士だ。
 訓練で私以上に言葉を浴びせられているだろう。そんな者があの程度の事で怯えるとは考えられん。
 よって私ではない、別の何かに怯えているのだろう。

「な? 無理やろ?」

 しかしまたしても考え込んでいるとモリアが軽く、そして人を小馬鹿にする様な感じで告げてくる。
 相変わらず此方の気分を害する喋り方をする。

「一体どうしてこうも......」

 使えない者ばかりなのか。そう嘆くしか他ならない。

「ウェンさんが怖いからぁ、動けんのやで」

 するとモリアが変な事を言い出した。

「......どういう事だ?」
「だからぁ、おっさんの騎士達はウェンさんが怖ーくて動けんくなってしまったんや」
「いくらウェンベルの剣技が凄かろうとそれを発揮しようにも腕は氷に囚われているのだぞ? そんな相手に何を恐怖する事がある」
「ウェンさんクラスの殺気を浴びたら、ワイだって怖くて逃げたいわー」
「殺気、だと......?」
「せや。おっさんも一応は貴族なんやし、殺気を向けられた事くらいあるやろ? そういう事や」
「そんなので納得出来るか! たかが殺気で人が動けなくなるなんぞ、あり得んだろうが!」
「あー......知らんのかぁ。本当に貴族なんかいな......」
「なんだとっ!」

 モリアの言葉に眉根が吊り上がる。

「あきゃっ、気にしないで良えよ。まあ、そういう訳でおっさんの騎士達は動かれへんって事や」

 失礼な事を言ったにも関わらずモリアはその事を詫びる態度も見せず、今まで通りの飄々とした態度で続ける。
 ふざけているのか、それとも真面目に言っているのか。この男の態度ではそれを見抜くのも面倒だ。
 仮にモリアの話が本当だとするならば騎士らが動けなくなった理由にも説明は着く。っと言ってもかなり無理矢理ではある。
 むしろ魔道具によるなんらかの状態異常だと言われた方がまだ信憑性がある。
 ......なるほど、そういう事か。魔道具による『状態異常』を隠すために殺気のせいだとか妙な事を言い出したのか。であるなら納得が行く。
 ここは話に乗りつつその魔道具の情報を引き出すとするか。
 そう考えたまさにその時だった。
 バキバキバキパリッ、ガンッ ︎ バキ、ガンッ ︎

「っ ︎」

 横から破壊音と共に氷が飛ぶ。
 正面に顔を戻せば、張りつけにされていたはずのウェンベルの腕が解放されている。
 そしてその腕が少しブレたかと思えば脚を捕っていた氷が切り壊される。

「冷たく痛いですね。氷の中というのは」

 さして辛そうには見えないウェンベルが嘯く。
 腕を回して具合を確認している。

「さすがウェンさん。ついでにワイのもお願いします」
「そんな事をすれば貴方の脚から血が大量に出る事になりますよ。治癒核は持っているのですか?」
「持ってませんなー。まあ、自分でなんとかしますから──」
「では後は自分でお願いします」

 ウェンベルはそれだけ言い残すと、地面を蹴ってこの場から姿を消す。
 辛うじて向かった方向が影で捉える事が出来、そちらに視線を向ける。
 するとそこには小僧とその仲間達、そして小僧の背後で剣を振っている所だった。
 そしてその斬撃によって切られ、盛大に血飛沫が上がる。


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