異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

回復、そして拾う

 
 剣を再び作り出し、それをモリア目がけて投げる。

「っと」

 しかしその攻撃を感じ取ったのか、槍を使って剣を砕く。

「やっぱり見えてるじゃないか」

 振り返って砕いた、その僅かな停止時間の間に一気に距離を詰めた小僧。
 投げられた剣を相手した事でモリアの正面は空いている。そこを小僧の突きが彼の右肩目がけて放たれる。

「イヤらしいわー。そんな狙い方されたら、避けなあかんですやん」

 瞬間、確かに至近距離まで詰めていたはずの二人の距離が一気に開く。
 どちらかが吹き飛ばされたのではなく、モリアが瞬間的にその場から後方へと下がっていた。
 あの技で回避したのか......
 まさに一瞬のうちに移動したため、捉えていた小僧の攻撃さえ当たる事はなかった。

「......もう視力は回復したらしい、なっ」
「おおっと」

 右へ移動しモリアの動きを窺いつつ、奴の視界端ギリギリ辺りで再び剣を投げる。
 しかしそれを涼しげな表情を浮かべながら身を僅かに引いて避ける。

「はて、どーでっしゃろ。もしかしたらまだ回復してあらへんかもですよ?」
「なら避けるなよ」

 今度は左へと移動しながら先の様に剣を作っては投げてを繰り返し始める。
 モリアは小僧を追いかけながら飛んでくる剣を躱し、払い落として行く。
 その動きは小僧の言う通り見えている様にしか見えない。
 小僧はこれを確かめるためにわざわざ不格好な剣を使っていたのか? しかしそれなら結局の所確かめずに殺しているはずか。

「......ん?」

 そんな中小僧の進行方向にある物が落ちている事に気がついた。
 剣だ。小僧が作っている不格好な氷の剣ではなく、私の騎士から奪った本物の剣。
 それを牽制しながら拾う。
 すると氷の方の剣を投げるのを辞め、今し方拾った剣を構えて向き直る。
 そして間髪入れず追って来ていたモリアへと近づく。
 急な行動の変化に戸惑う事なく、小僧の下から迫り上がってくる攻撃を槍で弾く。
 しかしそれで止まる事はなく、互いに打ち合っている。

「急に殺意向けてくるの、怖いわー」
「元から殺意満々だよ。特にお前らには」
「えー、ワイとは初めましてぇやあらへんですか。そないに嫌われる様な事しましたぁ?」
「お前がどこまで噛んでいるかは知らん。でも確実に一枚は噛んでいる。なら、それで理由は十分だろ」
「さて、なんの事でしょう」
「......言ってろ」

 モリアは今まで同様飄々とした態度で小僧の相手をしている。
 しかしその表情には最初の頃の様な余裕綽々といった感じはなく、焦っている様にも見える。
 その考えを肯定するかのように、徐々に小僧が押し始める。

「その間に終わるだけだ」


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