異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

開戦、そして武器

 
「第二部隊、反逆者を取り押さえろ!」

 小僧が抵抗したため、彼奴の周りに六人の騎士が集う。
 それだけでは済まさず、外で待機している第二部隊も追加され、少々法廷内が狭くなる。
 あっちはあの女達がどうにかするだろう。
 そう考えて小僧から視線をへーネル、ではなくその後ろにいる先程毒矢を放った男に視線を送る。
 彼はその視線に気がつくと、軽く頷き自身を拘束している男に何かを小声で伝える。
 それを聞き終えた騎士は近くで待機していた仲間に何かを伝えると、その騎士はすぐに法廷から出ると、そのまま法廷の周りを取り囲んでいる騎士達の方へ駆けて行く。
 その姿を見届けた後に、小僧らの方へ視線を戻す。
 すると十人程はいたはずの騎士は、残り三名まで減っていた。あとの者は、全員地で寝ているか、法廷の檻に身を預けて項垂れているか。
 血は流れていないが、外傷がないのか? つまり大きな怪我を負わされていない状態で再起不能にさせられた、と?
 そんなに弱いのか? あの騎士達は......いや、そんなはずはない。
 仮にも貴族に属している騎士達。小僧の打撃の一度や二度でダウンするはずはない。とすると能力か?
 しかしあの小僧が持っているのは『氷』ではないのか? 現に法廷内を凍らせた。その氷ももう溶けているが。
 うーむ、分からん。どうやって騎士達を倒したのか......
 今残っているのは......顔は分からんが、剣からしてあの女騎士は残っているらしい。
 周りの騎士と違う意匠が施されているから認知し易い。
 周りの騎士は主人から支給されている物のため飾り気がない。
 それに比べてあの女騎士が持つのは、普通の騎士と一風変わった意匠で、柄の部分はフィランギの様に別の持ち手が付いている。
 しかしフィランギと違い柄の太さは普通の剣と同じ。変わった飾りだと思えば、あとは同じだろう。
 それにしても小僧一人にあそこまでやられると、使えん連中だ。挙げ句の果てには、奴に倒された者の中に剣を奪われた間抜けまでおるようだ。
 騎士達が持っている支給品の剣を小僧が手にしている。

「っ、何をしている! 貴様ら、それでも誇り高きアンタレス王国の騎士か! 子供一人にやられおって!」

 彼女もその事が気に入らなかったのか、怒りに任せて部下に当たる。

「しかし部隊長。相手もそれなりの実力者の様で、中々こちらも手の出しようがなく......」
「もう良い! 貴様らはあちらにいるこの男の仲間を罰しなさい! こちらは私が相手をする!」

 部下の自信のなさに痺れを切らした女騎士が、部下達に命令を飛ばす。
 そして彼女は何故か剣を鞘へと収めた。
 武器を構えている相手を前にしてその行為は明らかな愚行に思える。

「子供。貴様、随分とうちの部隊に恥をかかせてくれたな。粛清した後に断罪すると、先に伝えておこう」

 そう言い終えると同時に彼女は剣を抜き放ち、駆け出す。
 その手に持つのは先程のとは違い、支給品の剣よりも刃幅がかなり狭い物だった。レイピアよりは太いが、斬撃には少し不向きな太さである。
 そもそもレイピアは刺突がメインの武器であり、その細さと鋭さが長所である。あの剣でその特性と同じ攻撃を披露するのは難しいだろう。
 それにどういう事だ? 支給品と明らかに違う物を何故持っている? それに先程見た時は普通の刃幅の剣だったはず。
 あんな物を持っているという情報は聞いていない、はず。誰かが私の知らない所で渡した?
 一体いつ、誰が......

「文句ならあんたらの主人(しゅじん)に言え。こっちはそいつのせいで迷惑しているんだ」
「我等が主人(あるじ)に危害を加えた者が、ぬくぬくと平穏に暮らせる方がおかしいのだ。悪い事をしたら罰が下る。親に教わらなかったか?」
「はっ、どの口が言う。罪のない市民を殺しておいて」
「反逆者は刑に処すと言ったはずだ」
「言う前から問答無用で切って捨ててただろ」

 互いに剣をぶつけ合いながら言い合いをする二人。
 そんな彼らの背後でも戦闘が始まっていた。
 小僧の仲間である女達が後続で入って来た騎士達と交戦しているが、小僧程ではないにしても騎士の方が押されているらしい。
 武装しているはずの騎士が! 体術や能力らしき物を使って戦っている女達に! 押されている。
 どうなっているのだ。弱い。弱過ぎるぞ。


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