異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

証言者、そして言葉遣い

 
 小僧の動向を窺う。

「魔道具による真偽の前にこちらも証言がある」

 法生司長へ向けて進言を申し出る。
 やはりフェーネはその用途で使うという事は、少なくとも能力の事は把握しているな。
 ダマンナはかなり神経の図太い女だ。
 フェーネについて貴族や商人との交渉でいくら積まれても首を縦に振る事はなかった。
 私との交渉でさえ、その土地を所有している貴族に話をつけ、店の融通に金二十ダイヤンも出してやると言ったというのに、あの女涼しい顔で断りおった。
 そこらの貴族なんかより余程良い条件で下手に出てやったというのに、庶民風情が!
 ......はぁ、という事はあの小僧が金だけで買った線も薄いな。そうであるなら、何故私の提案に乗らなかったのか説明がつかん。
 そうなるとやはり奪ってきたという事になるが......いや、あの小僧はあれでも冒険者だ。
 何か珍しい魔道具を、姿を消す魔道具を持っていてもおかしくないか。
 そんな魔道具があると噂程度で聞いてはいるが、実際そんな魔道具を見た事はない。
 しかしそれを持っているとなれば納得がいく。

「彼女がその時の状況を見ている。フェーネさん。お願いします」
「は、はい! 頑張ります!」

 あの強気な物言いから考えても恐らく本当だろう。偶然にも見られていたという事か?
 どうする? 騎士団を動かすか?
 ......いや、この場で明かされようと構わん。それよりもあの娘の能力を見るのはこれで二回目だ。
 あれの能力はいつ見ても面白い。

「えっと......皆様長い時間の議論お疲れ様です。奴隷の身ではありますが、この場に立てて光栄だと感じております」

 フェーネは法生司長に対し深々と礼をする。その後同じ様に法官、我々へと礼をする。
 その奇怪な行動に全員が困惑表情を浮かべる。
 こんな行動を取るなど誰も想像していなかった。
 しかしそもそもの話奴隷は身分が低い。加えて、奴隷が法廷に上がる事などまずない。
 奴隷が何か悪事を働けば即処分だ。大概の事は主人が折檻する方が多いがな。
 そのためどういう態度が正解なのかは知らんが、あれが奴隷(ほんにん)なりに考えた礼節なのだろう。

「それでこんな私が今回行わせて頂きますのは、被告人さんの証言です。私が見ていたのは、最初と本当に最後の辺りだけです。それではこちらをご覧ください」

 謙った態度はダマンナの店での接客からか、それとも奴隷であるから主人に目をつけられない様に立ち回るためにか。
 どちらにしてもそこら辺の奴隷よりかは丁寧な言葉遣いをしている。
 確かに奴隷が敬語や丁寧な言葉で話す事はよくある事であり、彼女のような違和感を感じるのも少なからずいる。
 しかし話し方と見た目のせいで違和感しか感じんな。
 そう思っていると法廷の中央にステータスに似た、しかし大きさは小屋の扉程か。それが地から人、一人分くらいの高さで浮いている。
 ちょうどフェーネの背丈と同じ高さか。


「異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く