異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

知らず、そして糸口

 
 そんな超高価な魔道具ではないとはいえ、あれもれっきとした看破の魔道具。
 その後一度しかない物でどうこの公判を乗り切るのか。

「どういうことだ?その魔道具には回数制限があるのか?」

 小僧が法生司長に問う。
 慌てた様子を隠しているつもりなのだろうが、その様から完全に動揺や焦りは抜け切ってはいない。

「勿論です。そちらの真蒼偽紅の球が先程嘘に反応した際の色合いは、その魔道具が初めて発する色合いから数段落ちています。そしてその色合いから残りの回数を知る事が出来ます」

 法生司長が懇切丁寧に説明する。
 ふむ、なかなか良い色合いだと思ったが、あれで数段落ちた物だったか。
 少々初めの色がどれ程なのか気になるな。
 小僧を捕らえた際にでも聞き出してみるか。

「............その回数を超えると、どうなる?」
「色が失われ、完全に能力を発動出来なくなります」

 本当に何も知らない様で、小僧は法生司長に教えを乞う。
 それにしても使用回数の制限も知らんとは......
 確か情報では五輪核全てを所持しているとあったはずだが、仔細も知らず所持しているとは、やはり庶民に高価な物を持たせても意味を為(な)さんな。

「アズマさん......」

 狐の獣人が小僧に何かを言った。
 口の開閉の数と状況からして、恐らく奴の名だろう。
 ふっふっふっ、さっきまで威勢の良かったあの獣人でさえ、どうするべきなのか分からず動けんでいる。
 これ程愉快な事があろうか?
 小僧はといえば、ずっとどう打開するべきか考え込んでいる様子。
 そしてその周りにはただただ観ている事しか出来ない愚女達。
 もう諦めろ小僧。貴様風情では打開への糸口を見つける事は叶わん。

「......被告弁護人、これ以上質疑がない様でしたら被告人の審議に移ります。宜しいですね?」

 法生司長が進行の促しをする。
 もはや笑みが止まらん。この公判を勝利で終えるまで、もう間もなく。
 このまま進めば、あの小僧は当初の予定通りに処刑出来る。

「東」

 私が想像した未来が確かになろうとしている。
 そんな最中に銀色の髪の女が小僧と何か話している。
 そこに銀髪エルフが小僧の右手を取り、ジッと奴の目を見て頷く。
 それに遅れてもう片割れの獣人が余ったもう片方の手を握り、強く頷く。
 無駄な励ましか、はたまた失態に対する慰めか。
 どちらでも良い。もうすぐ終わるのだからな。


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