異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

遮る、そして質問の意味

 
 しかし彼女の答えに異議を唱える者が二人。

「だーかーらー、話が理解出来ないなら黙ってろって!見てたやつが、持っていたと証言してるんだから、それが事実に決まってるだろ」
「貴様らが幾ら足掻こうが、幾ら下手な言葉を紡ごうが、あった事実までは変えられん。そこの、言葉を理解出来ないその獣を下げろ。不快だ」

 サヘルは俺に向かって告げる。
 確かにその通りだ。後半の部分はどうでも良いが、彼女が何を得たいのか。さっきの言葉の意味はなんなのか。
 そこがさっぱりだ。

「ニーナ」

 ゆっくりと彼女はこちらを振り返る。
 さっき彼女が言ったことを思い出す。“ その方が言ったは最後に被告が持っていたというだけです。それが今回の盗まれた物だという証明は、まだされていません”。
 これの意味を単純に考えると…… 

「気にしないくて良い。続けて」
「……はい!」

  彼女は笑顔を浮かべて返事をしてくれる。

「おい!お前ら、これ以上に、公判をめちゃくちゃにする気か!」
「法生司長!あの獣風情共の戯言など、もうどうでも良かろう!さっさと判決を下せ!」
「そうですね。貴公等の質疑には、今公判には無関係であると判断。被告人は、サヘル・トライスチレム・ボワン伯爵の使者、へーネル・トレ氏から預かり受けた頸鉄鎖(ペンダント)を略奪、加えて暴行。また、被告人の犯行の加担に加え、多くの民衆に残虐非道を働いた“アズマ・キリサキ”。当両名に判決を──」

 相当気に喰わなかったらしく、サヘルが公判を終わらせようとする。
 なのでこの法廷の内側を完全に氷で覆う。
 うん、細かく操るのはまだ難しいが、この程度ならちょっと誤差は起こるけど使えるな。
 高さが二メートルほど伸びたり、先が鋭利な氷柱がまばらに生えているくらいの誤差だ。

「「貴様っ!」」

 内側にいた二名の門番が、武器で脅しながら俺の前と横に立つ。
 さっきは反応しなかったのに、今回は動く。単に反応出来なかったか、それとも何か別のことがきっかけになっているのか。

「判決はまだ早い」
「……これはどういうつもりですかな?判決の邪魔は、許されざる行為です」
「確かに邪魔をしたのは、悪いと思っている。だが、判決はまだ早い」
「…………であると言うのであれば、それが正しいと示せるのですか?」
「そうだな…さっき彼女が言ったこと、“最後に被告が持っていただけ”。その通りの事実じゃないのか?」
「事実を告げた証言。それを否定しても、結果は変わらない。それでも目を逸らし、無駄な言葉を紡ぐ。それは、無意味な事だ」
証言で・・・述べられたのは、事実だろう。だが、それが“どこからか”までは、述べられていない」

 その言葉にへーネルがわずかに反応した。
 考え直してみて、ようやく理解が間に合った。ニーナの言葉の意味。

「答えは、まだちゃんと出てない。これじゃあ、足りないか?」
「…………分かりました。では、公判を再開──」
「それはならん」

 納得させられたと思いきや、まだ難癖をつけたい様だ。


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