異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
ニーナの質問、そして証言者
「問います。貴方の部下が盗られたというのは、間違いないのですね?その頸鉄鎖(ペンダント)で」
サヘルに対する問い。
確認か?
「......ふん、獣人風情が!一丁前に俺等と同じ言語で話すか!」
へーネルがニーナに喰ってかかる。
「それに、話聞いてなかったのか?そこの野郎が盗んだって、何度言わせる気だ!」
彼は声を荒げながら、リリーを指差す。
「貴方には聞いてません」
しかしニーナは動じることなく、突き離す。
サヘルにこだわっているみたいだけど、狙いが分からない。何か見逃しているからか?
「......ああ、間違いないとも」
「ならそれを証明してください。法官にしたように、私達にもしてください」
なるほど。確かにそこは聞いていなかったな。
「ふっ、はははは!良かろう......おい!入れ!」
高らかに笑い、門番の方に声をかける。
すると外から四人の男女が入って来る。事前に門番に話を通しているらしく、すんなりと中へ通される。
そんな彼らは、前に三人、背後に一人という列で、へーネルがいた場所まで向かう。
先ほどまでそこにいたへーネルは、サヘルが「入れ」と言ったタイミングで最初の位置へと戻っていた。
「“話せ”」
まるで、いやもはや『命令』。彼らと目を合わせようともせず、サヘルは告げる。
「では、私から。あの悲惨な出来事が起こる前......」
三人の内の一人が手を挙げる。
その手を挙げた三十代後半くらいの赤毛をオールバックにしている女性が、一呼吸置いてから語り出す。
「私が港でへーネルを追っていた時です。そこの男が、道中でへーネルにぶつかった後にそのまま去って行きました。そのほんの少し後にへーネルが男を追いかけ、何か言い合っていました。離れていたので、ほとんど内容は聞こえませんでしたが“盗った”、“返せ”、“大切な物なんだ”と言っていたのは聞き取れました。するとそこの男は、へーネルを数発殴った後に逃げ出しました。私が見ていたのはここまでで、そこからは見ていません」
言い終えた女の次に、その隣にいる顔中傷だらけの少し筋肉質な男。その傷は首の方まで続いている。
彼が、その先について話し始める。
「私がそこの男が逃げた先の路地裏。そこから少し離れた店の屋根を直していた時でした。たまたま目に入ったので、見ていたんです。どうせ、片方が盗みを働いたって...... そこでへーネルを待ち構えていたのは、そっちの男と周りにいる女たちでした」
そう言ってこっちを指差す男。
「そこで危機を感じたへーネルが、今度は逃げました。見た感じそこに居る連中は、異国人だったからか土地勘がなかった様で、取り逃してました。そしてへーネルが呼んだのか、周辺からそいつらの行き手を阻むように何人かの男が出てきました。しかし彼らの失態は、武器がショボかった事ですかね。質の良い剣を持っていた彼らには、全く敵わず、全員やられて行き、そこは地獄と化していました。本当に人間なのかって思いましたよ」
彼の証言は、確かにへーネルの言ったことと同じだ。
ただ、後半部分からは、嘘だ。確かに追いかけはしたが、追いついたのはどこかの家だ。
そこでそこへ逃げて行ったへーネルとその仲間を襲ったのが事実だ。
なので、その現場を見ることは叶わない。
やっぱり嘘の証言者を用意していたか。
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