異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

見えていた、そして重い空気

 
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「えっ!あの時能力が使われていたんですかっ⁈」

 公判が行われる場所を目指して歩く道中、先ほど店で行われていたことを話した。
 それに対して首を縦に振って肯定する。

「まあ、あいにく能力の詳細までは分からなかったが、何かを漏れ出てる状態にするらしい」

『魔眼』で表示されたのはそれと術者のいる場所くらいまでだ。
 他にいた奴隷の中に混ざって能力を使っていた。雑事をしながらこちらに悟られずに行使していたあたり、過去にも何度か同じようにやってきたのだろう。
 ただ見た目から考えるに十、十一歳くらいだと思う。
 あの中で一番若かったから余計に記憶に残っている。

「漏れ出る....秘密を漏らしてしまう能力って事よね?何よそれ、今回みたいな交渉で使われたら不利じゃない!」
「交渉ってそんなものだよ、お姉ちゃん」
「そう。いかに自分の手札を増やしておけるかが交渉では重要なんだ。それに唐突に押しかけたのはこっちだしすでに揃えていた相手に文句を言っても仕方ない。あれも防ぎ方を知らないし、もう諦めた方が良い」
「でも──」

 話を終えようとしてもサナが食い下がってくる。妹の失態に思う所がある様だ。
 しかしそれは今言ったように防ぎ方を知らないのだからどうしようもない。
 もしかしたら俺ならその能力の影響を受けなかったかもしれない。だからそれで考えるなら、やはり彼女に任せた俺に責任がある。

「ニーナ。辛い目に遭わせて本当に悪かった」

 立ち止まってニーナに対して深々と頭を下げる。

「も、もう大丈夫ですから。だから頭を上げてください。アズマさんは、悪くないです」

 ニーナが慌てた様子で早口で述べるが、最後だけが徐々に小さくなっていった。
 これはこちらに対して怒っているのか、それとも落ち込んでいるのか。
 彼女の言葉に悪意や怒りは感じられないし、表情も明るくしようとしているようだがいつもの彼女の笑顔からは遠い。
 故に彼女の気持ちを読むことが出来ない。
 さらに顔を上げて彼女の様子を窺ってみれば、バッと視線を外されてしまった。

「もうは、じまる」
「え、ええ、そうね...二人共!止まってないで急ぎましょっ!」

 重たい空気が流れつつあった所をキリとユキナによって無理矢理行動へと移された。
 加えてキリが俺の腕を引っ張る。
 彼女に引っ張られ走っている最中背後を向けば、ニーナもまたユキナに引っ張られている。
 また彼女らに続いてサナがフェーネさんと一緒に走っている。
 再び視線をキリへと向ける。
 彼女の視線は真っ直ぐ前を向いており、目的地を目指している様子。
 ....ありがとう。
 彼女に負担がかからないように自ずと走り出す。
 目指すは、貴族と民衆地の中央!


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