異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

提案、そして論破

 
「んー....失礼だが、この店では何を売っている?」
「ここは料理屋さ。だから飯を売ってるって所かね」
「料理の名前なんかが乗った、献立表はあるか?」
「....まあ、良いけど。おい!どれか表板持って来な!」

 店主が怒鳴ってから一分以内に一人の女性がキャンパスノートより一回りほど大きい木の板を持って来た。
 彼女もフェーネさんと同じくらいボロボロの服を着ている。
 というかさっき「誰か」じゃなくて「どれか」って言わなかったか?聞き間違いか?

「これがそうさ」

 その板をこちらへ渡してくる。
 軽く目を通すが、やはり他国なので知らない品名がズラリと並んでいる。
 値段もかなり安い。と言ってもベガの値段基準で考えて、だが。
 この木板と店の雰囲気や傷み具合から売り上げを予想する。

「そうだな。店を畳まずに済めば良いが、そういかないなら仕方ないな。正直言って俺は大きめの商会と少々縁がある。だからここで稼ぐよりも稼げるかもしれない。どうする?」

 相手に託す言い回し。
 こういうのは一見相手に判断を委ねて主導権を握られているように見られるが、すでにこうすると提案して相手をそのことに対してだけ選ばせている。

「....確かに魅力的だねぇ。是非ともそうしたい所だ」
「そうだろ?だったらこの話は成立ってことで」
「待ちな。魅力的とは言ったが、誰もそれで了承なんてしてないだろ?」

 終わりかと思った矢先、店主はそんなことを言い出した。

「さっきも言った通り、こっちだってかなり金を掛けなきゃいけない。そんな負い目があるってのに、可能性が低い提案に乗る程、あたしは甘くないよ」

 彼女の言葉はもっともだ。正直それは俺も思っていた。
 縁があるというのはもちろんクレイン商会のデオルさんだ。ただいくら何度か商品のアイデアの提示をしているとはいえ、店を出す手伝いをしてくれるかは分からない。
 断られればそれでお仕舞いだ。

「坊やは、成功するか失敗するかも分からない相手に大金を賭けれるかい?まあ、坊やがそれでも良いって言っても、結局払うのはあたしだ。良いはずない」
「....ふっ、そうだな。確かにそんな未確定なことに大金を賭けるのはバカのやることだと思う」
「はは、言うじゃないか。なら、どうする気だい?」
「そうだな...」

 様子を窺っている彼女の目は、どこか楽しそうに見える。これはどういう気持ちから成っているのか....
 爪が甘かったからこうなる。少し金があるからって大金見せて、それでいて余裕ぶって無茶な交渉をする。
 それで挙句論破されて追い詰められる。
 ははは、本当にバカだ。無策で行くからこういう目に遭う。なんだか前にも経験した気がするが、どこだったかな....


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