異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

詮索、そして情報

 
 まずはあそこに居たのが今上がった名前の者と同じ人物なのかを探らなくてはならない。

「あら、誰(だぁれ)?そのアズマって」

 あくまで知らないフリをする。なので知っていると悟られてはならない。と言っても本当にあの彼が同じアズマなのかは不明ではあるが。
 違ってくれることを願いながら、彼らの返答を待つ。

「あれ、“ネメア”さんは知らないんですか?アズマ・キリサキの事」

 ネメア。それがサキュバスである彼女の名。
 その名をバジルが呼ぶ。

「冒険者ですよ。銀ランクの」
「へえー。強い男って良いわね」
「彼の場合は、強過ぎますけどね」
「そう!アズマは強くて、強くて!それでいて意外と優しいのよね。ふふふ、また彼に会いたい」

 呆れながら彼のことを教えてくれたバジルに変態女が再び喰いついてきた。
 にぃーっと気味の悪い様な、それでいて美しくもあるその笑みを浮かべて。
 強過ぎる。確かに何年もかけて作った地下が一瞬のうちに氷に覆われた。それに加えて淫魔(サキュバス)である私の能力さえ通用しなかった。
 後者は強さ云々の話かは置いておいて、前者は規格外の能力だった。
 それに不意を突いた攻撃以外は入らなかった。
 あれだけの動きが出来るのなら銀ランクと言われても頷ける。
 いやでも、頷いてはダメ!そんなことをしたら認めてしまうということなのだから!

「そんなに逞しいのなら、私も会って───」
「ダメよ」

 私の言葉を遮って、変態女が文句をつけてきた。

「.....何故かしら?」
「貴女なんかに彼を汚されたくないの。アズマは私の」
「あらぁー、貴女がそこまで意固地を張るなんて。よっぽどの殿方なのね」
「ええ。貴女なんかに近付かれたら、彼が腐ってしまいそうだもの」
「あら、直ぐに腐る様な殿方なら私も遠慮したいわ。私は逞しく、勇ましい殿方の方が好みね」
「なら彼が相応しいようね。でも、だからと言って貴女なんかに会わせたくもないけど」
「うふふ、中々面白い冗談だこと。私なんか、とは随分と聞き捨てならないことを言ってくれるわね。私の何処がなんか、なのかしら?」
「自分の胸に訊いてみては?っと失礼。その御自慢の胸では訊くことも叶わないわね」
「あら、無駄な心配ご苦労様。サキュバスは容姿を自由に変化させられるので」

 そう言うとネメアの容姿が変わり、大きかった胸がまるで空気を抜かれたかの様に小さくなった。

「そう言う貴女こそ、その程度の物では男を喜ばせることなんて出来るのかしら?」
「私だって似た様なことなら出来るわ」

 変態女の姿がボヤける。そのボヤけが元に戻ると先ほどまでそこに居た金色色の髪の方ではなく、知らない顔の緑色のセミロングの女。
 顔からしてベガではなく、アンタレスかしら?
 そしてその女の胸は、先ほどまでのネメアと引けを取らない程の豊満な胸が備わっている。それも本物の。
 彼女の能力である。

「私は貴女よりも自由が利くの」
「でもそれは紛い物でしょ?貴女のではない物なのだから。やっぱり男は“本人の”が好きでしょう?」

 答えが分かりきっていることを、横で傍観している男達に問う。

「貴女達、今はそんな話ではどうでも良く。この男バジルが何故あの方の予定について知っているのかについて話し合う必要が───」
「「そんな意見は求めてない(の)!」」

 オーメンがバジルのことを責めようとしたが、私達が求めている意見を言いそうになかったのでぶった切る。
 その際変態女と被ってしまったが、知ったことではない。今は、どっちが良いかを訊いているのだから。

「......それにそのアズマって男、そんなに強くて銀ランクの冒険者なら愛人くらい居るのではないの?」

 自分の目的を思い出し、それらしい質問をする。もしあの時居たのが同じ人物なら、女を三人連れている。
 しかしそんなこと、そうそうある訳......

「そうね。邪魔な虫が四、五匹くらい居たわね」
「僕、一度だけ彼女達の戦っている所見てたけど、普通に強かったなぁー」
「調べでは、二人が青。二人が赤。そして一人は不明ですね。あまり冒険者活動をしていない様です」
「僕は髪の長い銀髪の剣士の子が気になっているかな。あの子の能力、かなり強かったし」
「それはもう聞きました」

 ありました。女三人以上引き連れており、その内一人は銀髪の剣士。
 いやいや、まだ確証を持つのは早い。そんな女他にだって幾らでも......

「しかし獣人を連れてたのはやっぱり珍しいよね。あんな獣の何処が良いんだろ」
「好みは人それぞれと言いますが、私は遠慮したい」
「そうね。弱い女なんかが彼の隣に居るのは相応しくない」

 獣...人......まで....
 そ、それでもまだ....たまたま偶然、そういう好みだったということも....

「彼にはどんな虫(おんな)も寄せつけさせない。彼の真っ黒な瞳に映るのは、私だけ」

 あ、もう彼ね。
 既に姿を戻してうっとりとした表情を浮かべる変態女のその言葉で別人であって欲しかった私の願いは、無と化した。


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