異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
連れて、そして強情
とりあえず今の村の状態と冒険者が来ていること。その冒険者が新手だと思い、先に村へと向かったことを伝えた。
「成る程。それはそれは、なんと有り難い事でしょうか」
老婆そう朗らかな笑みを浮かべて言う。
果たして本気にしているのだろうか、怪しい笑みだ。普通に考えて信じるだろうか?
ここから村までおよそ三百五十キロ。馬を全力で走らせてもこの数時間ほどで戻って来れるかどうか。
まあ、疑っていても仕方がないし、話したのだから後は連れ戻るだけだな。
「それじゃあ、村まで送ろう」
「はい。宜しくお願い致します」
再び檻の方へ向かえば、村の人たち全員が整列して並んで待っていた。
「ではこれから村に戻たいと思うが、その前にあなたたちにはやってもらいたいことがある」
そう言ってから了承も待たずに困惑と疑いを抱いている彼女らに指示を出す。
といっても全員で手を繋ぎ、大きな輪を作ってもらうだけだ。
「それじゃあ、目を閉じて村のことを強く想ってくれ!」
その指示に全員渋々ながらも従ってくれる。
さて、こっちも始めるとするか。魔力が少ないからあまり派手には出来ないけどな。
輪の中を中心として薄く氷の膜を張る。両隣りの方は冷たいだろうが、我慢してもらおう。
そして両手の人差し指だけ浮かす。右手の指先で小さく開いたゲートを通して下の氷を溶かす。
「開け門」
小声でそれっぽく言っておく。
薄膜の氷の下に村へと繋がったゲート。それが開いたことで上にいた村の人たちは全員穴へと落ちる。
「「「「「「 ︎」」」」」」」
いきなりの浮遊感に驚く一同。
大人もいるため少し高めから落ちることになったため子どもたちは驚いて何人か尻餅をついている。
しかしそれ以上に、一瞬にして檻のあった地下から村の付近へと移動したことの方が驚いている。
「娼館の男たちはこっちで警邏に引き渡しておく。それと被害の報告も。それで───」
「っ!ダメ!」
これからのことを述べていると途中で遮られてしまった。
その声の主へと全員の視線が向く。
声で既に誰なのか分かっているが、この既視感ある光景。声の主はモアちゃんである。
「なぜだ?」
「そんな事したらクーラ兄(にぃ)達も捕まっちゃう!そうなったら...村が困る!」
「安心しろ。だから今から捕まえた連中の中から村の人だけ抜くために何人かに協力してもらおうと思っている」
「そうなの。なら、大丈夫ね」
彼女はそう言って視線を逸らした。
「てことで続け様で悪いけど、誰か手伝ってくれる方は?」
そう言っている途中からモアちゃんが手を挙げている。
「出来れば二、三人いた方が───」
「あたしだけで十分!」
「......そうだな。頼む」
強情な彼女に白旗を上げる。
「村でのことは来ている冒険者たちもある程度は知っているから、あとはそっちに任せる」
「それは大丈夫なのですが、貴方様方は何故ここまで良くして頂けるのですか?」
「なんで......うちのが世話になった場所だ。少なからず協力するに決まっている」
「......」
どうやら納得いっていない様子。しかし俺は言うこと言ったのでとっとと場所を移す。
これ以上ゲートを見られる人数を増やす訳にもいかないし、何より偽装するために回復している途中の魔力を使うのも厳しい。
一人くらいなら目を隠してしまえば良いのだし。そう考えるとモアちゃんだけとなったのは結果的に良かったな。
歩きながら考えている俺の後を少し小走りで追いかけて来るモアちゃん。
その二人を不安そうに見つめる村の人たち。
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