異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

回避、そして追い討ち

 
 互いにフェイントを織り交ぜつつ、剣を交わし合う。
 彼のスタイルは基本的に双剣と同じ。
 ユキナとも模擬試合をするため双剣と対峙することも多少なりとも経験済みだ。
 双剣はスピードや細かなテクニックなど立ち回りが重視となる。普通の剣とかよりも力の加わりが少ないためだ。
 それは軽く刀身が短いためより身体の動きが重要となる。しかしそのお陰で連続を利かすことが出来るのだが、彼の場合は連撃の割り合いが少ない。
 理由は、普通の剣を使用しているからだ。重いのだ。

「このっ!」

 男はあの構えから左胸、急所....いや、少しズレてる。脇辺りを目がけてロングソードによる突きを放ってきた。
 しかしそれは先ほど同様軌道が途中で変化し、下へとズレた。手首をグッと下げることで剣先が左胸から右足の方へと変わった。
 彼が好んでやるこの攻撃方法。見ていた感じでは相手の虚を突くためだと思っていたが、やって来ると分かっている相手に使用してもさほど効果はないはずだ。
 事実、驚くことなく対処することが出来た。
 小刀でその攻撃を弾く。
 そしてこうすると、次の狙いは──

「ふぅー....」

 やはりすでに構えていた。
 右の剣を頬の所まで上げ、狙いを定めている。
 ここもだ。連撃のタイミングで、そんなことをすればこっちだって対処までの行動に移れる。
 威力を重視して重い普通の剣を使っているかもしれないが、それは途中の休憩で相手に猶予を与えている時点で逆効果だ。

「すっ!」

 そしてその剣は一矢のごとく放たれた。
 それを最小限の動きだけで完全に避ける。

「.....」

 しかし完全に避けたと思ったのだが彼の剣はしっかりと肩に届き、四センチほど刺された。
 一旦彼から距離を取るためバックステップで後退する。
 だが、彼も逃す気はないらしくすぐに追って来る。
 そして距離が詰まると同時にあの構えから、ロングソードによる顎めがけての普通の突きを放ってくる。
 それを身体を左に逸らせつつ小刀で反対側の方へ押しながら流す。
 しかしそれは途中で奇妙に止まる。

「はあぁ!」
「ちっ」

 そのことに違和感を抱きながらも次にくるであろう攻撃に備えようとした所で、キリが割り込んで相手の動きを封じる。

「邪魔しないでくれるー!なーんで、後一歩って所であなた達は邪魔する訳⁈」

 先ほど同様途中で邪魔が入ったことに悪態を吐きつつ、今度はキリを相手する。
 彼は先に剣を動かせられるようにするために、彼女の腹に向かって横蹴りをする。
 だが残念ながら、キリが当たる前に身を引いたためそれは空を蹴るだけとなった。
 そして空いた右の剣を切り上げるように大振りし、キリに距離を取らせる。
 しかしキリは引くことなくその切り上げを途中で剣で受け止める。

「ふぅー、っ!」

 次に男が俺に狙いを変え、その体勢のまま首目がけてロングソードを右から真一文字で切りかかってくる。
 その攻撃をウォーミルを使用した右腕で押して一時的に威力を減らしてから身を屈める。

「はぁあ⁈」

 そしてその体勢で今度は俺が攻撃を仕かける。
 大股で踏み込み距離をグッと縮め、さらに腰を捻って
 小刀で彼の腹部目がけて突く。

「!...うぐぅっ ︎」

 狙いに気がつき避けようとしたが、僅かに回避が間に合わず小刀が彼の左脇腹を掠(かす)める。
 そしてそこには俺が来る前にキリが切りつけた傷がある。つまり傷口の上からさらに傷つけた訳だ。
 そこを突いたため男が一瞬怯んだ。
 そのタイミングをキリは逃さず、剣を引いて彼の剣を宙へと走らせ、畳みかける上段からの振り下ろし。
 これで勝負がつくと思ったのだが、彼はそれを冷静に回避した。



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