異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
回収、そして村
キリたちの方も色々あったらしく、かなり負傷していた。
恐らく元凶であったであろうサキュバスは追い払えたが、正直心身共に疲れているだろう。
一度ユキナと合流して休憩にするか?
そうしよう。魔力なら歩いているうちにでも回復するだろうから、ゲートリングをとっとと回収してしまおう。
「到着致しました」
視界が暗闇から晴れるとそこにはまだ建て直し途中のエルフの里。その奥側にある長の家の近く。
そこには倒れたり切り倒されたはずの木が、既に新たな芽を出していたり、抉れた地面が所々平(なら)されていたり、凍っていたりしている。
ようは俺とあの女が戦った場所に着いたのである。
氷には触れないでくれっと頼んでおいたが、ちゃんと守ってくれたようだ。
ここを出る時にはなだ警戒されていたから心配だったけど、杞憂に済んで良かった。
さて、のんびりもしていられない。
場所はだいたい憶えているので、後は『魔眼』で詳細な場所を探せば───
「あった」
すんなり見つけることが出来た。
最後に『ウォーミル』を使って氷を溶かし、先に指輪を回収してからさらに魔力を流して氷を全て溶かす。
「色々助かったよ。ありがとう」
背後で待機してくれているドライアドの方を向く。
彼女は柔和な笑みを浮かべる。
「いえ、アズマ様の御役に立てて恐悦至極に御座います」
そう重々しく返された。
うーん、彼女が俺にここまで良くしてくれたのは、天使(トールさん)と神様の気配があるからそれで精霊が敬っているためなんだよな。
例えると、社長の息子が父親の権威のせいで周りから良くしてもらってるって感じかな。
別に俺は偉くもなんともないから、こうも丁重に扱われても困る。
まあ、これについてはことが片づいてからにしよう。
「では、また」
「......」
敢えて彼女の前でゲートを開く。
やはり彼女は動じない。恐らく知っているだろうと予想はしていたが、本当に知っていたか。
まあ、この森でも頻繁に使っていたから仕方がないけど。でも、全く気配も見られている感覚もなかったんだよな。
普段から『魔眼』は使っているけど、彼女らの反応はない。
今は普通に表示されているのに。
多分そういう能力が種族の固有能力で存在しているか、単純にあの移動中とかでは『魔眼』を通しても見えないか、精霊が何かしているか。
候補はいくつか上がるが、決定的なのは特にない。
しかし今は分からないことをずっと考えている暇なんてない。時間がある時にでも考えるとして、この件は頭の隅にでも置いておこう。
ゲートを潜り、ユキナの元に来る。
彼女は先ほど別れたドライアドに似た顔立ちのドライアド二人を従者のように連れて角材を能力で運んでいる所だった。
成人男性ですら持てるか怪しい分厚めの角材を三本も同時に運べている彼女の能力は優秀だが、恐ろしくもある。
と言ってもユキナ、あれよりも重いのも動かせるけどな。
「あ、アズ、マ!」
「お疲れ」
俺に気がついたユキナが駆け寄って来る。
疑っていた訳ではないが、どこも怪我していないようで安心する。
さっきから疑ってばかりで悪いとは思うけど、こればかりは仕方がない、とさせてもらおう。
ふと、周りの様子が気になりユキナから視線を外す。
復興中だった村はあのサキュバスによって送られた男たちによってボロボロにされた訳だが、また復興を再開したようで、村の中で捕らえられていた人たちがせっせと修復作業に勤しんでいる。
しかし女性や子供が多いためか作業はさほど進行しておらず、そのうちの何人かはこちらをチラチラ見ている。
その表情は怪訝と不安が入り混じった顔だ。
俺、何かした.....ああ、今は男が信用ならないのか。
「どうやら俺は長居しない方が良いらしい。この後サナたちもこっちに連れて来るけど、かなりの戦闘だったみたいだからしばらく休憩しておいてくれ。必要なら一旦家に戻ろうとも思ってるから....とりあえず、少し待っててくれ」
「ん。でも帰、るなら、さ、きにモアちゃ、んたち、を連れ戻、したい」
「!そういえば見かけないな。人質を何人か連れて行ったとは聞いていたけど、モアちゃんも連れて行かれてたのか.....」
急いで探しに戻った方が良いな。
手を出しているとは思えないけど、あのサキュバスのせいで理性を失っている可能性は十分にあるから、万が一もあるしな。
「悪い、急ぐ」
「ん。お願、い」
ユキナに別れを告げ木々の方へと走り、周りから見えない位置でゲートを開く。
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