異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
追撃、そして崩壊
「ふっ!」
「ぐぅっ!」
遅れてアズマが女に追撃を仕かけるが、こちらは爪で受け止められてしまった。
そして爪で短剣を流しその間に後方へ距離を取る。
「キリ!」
「はああぁぁっ!」
「くっ ︎」
しかし距離を取った途端にその間をキリが駆け、攻撃を仕かける。
今度はタイミングを合わせての接近だったためギリギリで攻撃を止めることが出来たようだ。
「んん...っんえ!」
互いに力で攻めぎ合っていたが、女がキリの剣を押し返して後方へ飛び退いて片足を着くと今度は上へ跳んだ。
「「「「っ ︎」」」」
そう彼女は飛んだのだ。文字通り。
それも彼女は背中から黒く細い翼をはためかせて飛んでいるのだ。
「ふふふ、素敵よ。その顔」
女はそう悠然とした笑みを浮かべている。
先ほどまで切羽詰まった表情だったのに飛んで安全な場所へと移動出来た優越感に浸っているようだ。
でも、これはどうしたものかしら。
彼女は私たちが飛ぶことが出来ないからこそあのような表情を浮かべられている訳なのだ。
「貴方達の強さ、予想以上だったわ。アタシはこの辺りでおさらばさせてもらう事にするわ」
そう言いながら彼女はどんどん上昇する。
しかしここは地下のはず。さらに上は娼館が営業しているため、上に上がったところでこの場からどう脱出する気なのか?
そう思って彼女を見ていると、爪の伸びていない方の手を自身の前へと持って来る。
そしてぎゅっと握れば、天井の一部が崩壊し始めた。
さらにその隙間から水が漏れ出してきている。
「恨むのなら、飛べない自身の無力差かしらね」
そう嘲笑の笑みを浮かべると天井が一気に崩壊し、かなり大きな穴が空いた。
水、否、湯気が見えるのでお湯である。お湯の溢れる勢いが増し、崩壊と同時にドバッと入り込んできた。
しかし水は彼女を濡らすことはなかった。まるで水自体が彼女を避けているかのような。
まるで水すらも彼女に魅了されたかのように。
「それじゃ───」
「飛ばなくても跳べば良いじゃないか」
そう言っている彼は氷の柱に乗り、水の上を滑るようにして天を昇っている。
そしてコロッセオの頂上付近まで来るとそこからアズマは跳んだ。
ただ飛んだだけだがそれだけで彼はなおも上昇中の女に追いついた。
「落ちろ!」
「くぅっ!!」
アズマが短剣ではためく翼に斬りかかろうとしたが寸前の所で爪に阻まれてしまった。
しかし予期せぬ攻撃だったため力を込めることで出来ていない様子。
「逃がさないぞ。お前だけは、絶対に!」
「っ.....ふふ」
アズマの鬼の形相に見ている私たちですら気が引けてしまいそうなほど、怖かった。
にも関わらずそれに直面している女は、急に笑い声を漏らしたのだ。
「来るのが少ーし遅かったわね」
「どういう....!」
アズマが上を見上げたので私たちもそちらに視線を向ける。
するとそこには腰に布を当てているだけであとは全裸の男たち数人が困惑の表情でこちらを見下ろしていた。
そのことにアズマや私たちも驚き、困惑していると女だけが叫んだ。
「助けてー!この男が私を襲おうとしているのっ!」
「「「「「っ ︎ ︎」」」」」
彼女のその切羽詰まった表情と言葉による力なのか、それとも彼女の魅了による無理矢理なのか、男たちは彼女の言葉を信じてしまった。
背中から黒い翼を生やしている女でも、魅了されてしまうのだからその恐ろしさがよく分かる。
男たちはどこからか縄を取ってきてそれを使い降りて来る者、アズマが凍らせたお湯を伝って器用に降りて来る者、そしてその場から飛び降りて来る者と分かれた。
「なっ ︎」
「はああぁっ!」
「ぐふっ ︎」
「「「アズマッ!」」」
その行動に一瞬だけ力を緩めてしまった隙を突かれ、反対の手の爪も伸びアズマの腹部を貫いた。
もう片方も出せたことは彼にも予想外だったのかそれに抗うことも反撃することも出来ず、引き抜かれ地面へと落ちて行く。
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