異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
誘い、そして微笑み
その美しい顔から放たれる魅惑の笑み。
その笑みを見た者は例え枯れ果てたヨボヨボの老人ですら、魅入られるほど凄みを帯びている。
そして逆らうことなく彼女を受け入れてしまうほどの。
「さあ、こっちへいらっしゃい」
「.......」
それはアズマとて例外ではない。
彼女が手を差し伸べるとアズマはゆらりと歩き出す。
「そんな、アズマッ⁈」
そんな彼の行動にサナは驚いた。
確かに彼女の美しさは認めるけれど、まさか彼がそうホイホイついて行こうとするとは思っていなかったのだ。
止めるために手を差し伸べたいが生憎両手とも塞がっているためそれは叶わなかった。
「ん.....んー....お姉、ちゃん.......?」
そう慌てていると腕の中でニーナが目を覚ました。
それは喜ばしいことなのだが、今のサナにはそちらに気に傾けている暇はない。
一歩、また一歩とアズマは女の方へと歩み寄って行きついに互いに手が届く範囲にまで辿り着いてしまった。
「ふふ....さあ、欲望を曝(さら)け出しなさい。貴方の愉しんでいる姿を彼女達にも見せて───っ ︎」
舌舐めずりをしてアズマを歓迎するように両腕を開く。舌舐めずりのせいで、その唇がとても妖艶の光を放つ。
そしてそちらにアズマが吸い寄せられるように歩み行き、手を差し伸べた所で急に女が後退した。
そのためアズマは何も得ることなく虚空に手を伸ばす形となった。
「「?」」
姉妹でその光景に疑問符を浮かべる。
彼女はなぜ後退したのか?その理由が分からないのだ。
「.......驚いたわ。まさかその歳でアタシの美貌を前に逆らう男が居るなんて.....」
二人の疑問が解消する前に、女は驚きとそして不敵な笑みを浮かべた。
「バレてたのか」
アズマは伸ばしていた腕を引く。
「確かに逆らう男は何人か居たけど、貴方の歳では居なかったわ。どうしてかしらねー.....もしかしてその小娘(こ)達がいるからかしら?」
「.........」
そう彼に問いが投げられる。
しかしアズマは何も答えない。
「あら、図星だったようね」
そんなアズマの様子を見て、彼女は得心のいった表情を浮かべた。
そしてとても美しく妖艶な笑みを浮かべる。それは不敵な笑みのようでもあるのだが、美しいという方が際立っているためそちらが霞んでしまっているのだ。
「でも手を出していない。紳士なのね」
からかう様に笑うその姿さえ品のある所作に思える。
「でも、アタシの魅力に抗える男なんて、居ないのよ」
そう言って彼女はアズマを真っ正面から見つめる。
「貴方はアタシのモノよ」
彼女はそう言いながら見つめる。
対するアズマも彼女から目を逸らすことなく見つめているため、結果的に見つめ合っている。
「さあ、アタシの元へ来なさい」
彼女はそう言うと今度は手の甲を上にして前に差し出す。
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