異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

割り込み、そして狂気?

 
 しかし氷から伝わる冷たさと痛みに耐え続けてニーナの元へ向かおうと進み始めた時だった。
 パキンッ!!
 皿などが割れるような音が鳴った。
 その音のした方へ視線をやれば、まさに今こちらに攻撃しようと詰め寄って来ている。
 そんなっ!あの氷に囚われても無事だったのっ ︎
 彼は直前まで立っていたはず。つまり他の男たち同様全身か動けないレベルで氷に捕まっているはずなのだ。
 そんな状態にも関わらず、彼はそれを突破して来たのだ。
 この体勢では流すことも避けることも出来ない。もろに喰らえば、キリ以上のダメージを負う。
 そう悟った瞬間、サナの前に人影が横から割り込んで来た。

「アズマァッ ︎」

 その割り込んで来た人物に驚く。
 サナからキリと東がいた場所は六メートル弱あった。
 それだというのに彼はボーノが迫っている途中で入って来たのだ。それで驚くなという方が無理である。
 ......いいえ。冷静になって考えると彼ならあり得そうね。模擬試合の時はこっちに意識を向けているから似たようなことが出来ているけど、まさか咄嗟でも出来るなんて。
 相変わらずデタラメね。
 ダンッ、ボキッ!
 そうアズマに呆れていると目の前からそんな音が静かになっていたこの場に響いた。

「あの距離から間に合うとは.....この氷といい、貴方は恐ろしい。しかし───」

 ボーノは姿勢を正して、肩をすくめて呆れた表情でそう述べているとアズマが左腕をダラリと垂らす。

「そんな貴方でも私の敵ではありませんね」
「く!」

 彼は嘲笑の笑みを浮かべて東を見下す。
 そんなアズマはといえば、自身の左の前腕を右手で押さえている。

「次は何処を壊しましょうか。足かもう片方の腕か?それともあそこの小娘のように内臓諸共破壊しましょうか?」
「.......」
「貴方にはあの方の遊戯を邪魔し、台無しにした報いを受けて頂く必要がありますのでどうぞおか───っ ︎」
「 ︎」

 飄々と告げていた彼の動きが強張る。
 彼だけではなく、サナも息を呑む。
 ボーノの発言の途中でアズマから急に殺気が放たれたから、二人とも動きが止まったのだ。

「小娘のように内臓諸共破壊?キリのもそんな症状だったけど、お前の仕業か。ましてや遊戯?遊び?それで皆にこんなことをしただと?」
「あがあぁっ ︎」

 アズマがいつもより暗く低い声で睨みつけていたかと思えば、一瞬にしてボーノに詰め寄り彼の顔面を右手で鷲掴みにする。
 アイアン・クローである。
 恐怖で強張っておりさほどしか距離はなかったとはいえ、あの時ニーナとの距離を瞬く間に詰めた彼に全くの反応をさせないで近づき、なおかつ顔面を鷲掴む。
 果たしてどれほど恐ろしい速さで動いたのか。
 彼の背中だけしか見えていないサナだが、恐らく真っ正面から見ていても捉えられたかは怪しい。
 それほど、今の東は力を抑えていないのだ。
 ゲートリングをハメていないためレベルの差があるが、サナとて冒険者の中でも上位の実力とそれに見合ったレベルである。
 そんなサナを圧倒した男に彼は圧倒しているのだ。
 いかにゲートリングを着けていないと彼が危険なのかが、よく分かる。

「言え。あの方とやらはどこにいる?」

 そう怒気を抑える気などなく、彼は問う。

「........くふっ。くふふふふふ」

 しかしボーノはそんなアズマの問いに笑いで返した。
 顔面を鷲掴みにされている状態にも関わらず彼は、笑っている。
 それはもはや狂気に染まった者のようである。



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