異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
騒動、そして矢文
彼女の首裏へと手をやり、ペンダントを外そうとした時だった。
里の方の上空に線のようなあれが、上がった。
その後にドォンッという何かが落ちたような大きな音が鳴った。
それによって俺は手を止め、エルフたちも一緒に全員がそちらに顔を向けた。
「....!ボイラン、マース!里へ戻り、様子を見てこい!」
「「了解」」
エンリュは状況を把握し部下二人に指示を出し、現場へと向かわせた。
残ったのは四人。
エンリュが再び弓矢を構える。
「これは貴様の仕業か?」
「そんな訳あるか。探していると言ったのに、騒動を起こせば見つけ難くなるだろうが」
「それは分からんだろ。私なら、敢えて騒動を起こして逃げ惑っている中から探す.....いや、その探し人自体がこの騒動から視線を逸らすための虚言という線もあるな」
面倒だな。確かに彼が言った最初の行動は俺も思いついてはいたが、この場合騒動を起こしたとしてもそれに巻き込まれて死んでしまったり、逃げ惑っている中から一人を探すというのはかなり難しい。
ましてやその人がこの里にいるのかすら分かっていない状態なのに、こんな騒動を起こすメリットは俺らにはない。
ただこれを相手が知る由なぞないのだが....
「何か言いたい事はあるか?」
「...何度も言うがさっきのあれについて、俺らは何も知らない」
「ではそれが証明出来るか?」
証明しろと言われてもそれが出来ないから今苦労しているのだ。
彼との関係性は先ほど話したが、当然のように認められはしなかった。
例え他のみんながそれを話したとして信じられはしないだろう。どこかに俺らの関係を模した書か何かに全て記載されていれば出来ただろう。
しかしそんなことを誰がしているというのか。現実逃避をしている場合ではないのだから。
現実逃避?逃避....避ける.....
もしあれがあの男の仕業か、もしくは他の誰かだった場合はこの手でいこう。
ということで、ここから少し時間稼ぎに移るか。
そう考えていた時だった。
エンリュの背後から高速で走る何かが視えた。
『魔眼』でそれが矢、それも「疾風の矢」と表示されたのを認識したが、その頃には既に彼の背後まで迫っていた。
間に合わない!っと思ったが、その矢は彼には当たらず彼の右斜上に刺さった。
刺さったことで分かったのだが、矢には文が巻かれている。
それをエンリュが矢から解き、中に目を通す。
すると読み始めてから少しして彼の表情が険しくなった。そして手紙からこちらへ視線を戻す。
「証明出来ないのなら、残念だが貴様らを捕縛させてもらう」
捕縛か。彼の表情とさっきの線と音、何かあったのは分かるが、こちらが理解出来ないまま捕まるのは色々と厄介を生む可能性が高い。
....なら、こちらにも知る権利という名目で観させてもらおう。
そう言い訳しつつ『天眼』を彼の頭上、さらには手紙へと向ける。
『客人の男が暴れている。至急応援を要請する』
と書かれている。
やはりあいつだったか。まあ、予想はついていたのであまり驚きはしないのだが。
さて、ならさっき思いついた作戦を決行させてもらうとしよう。
「断る」
「....貴様らに拒否する権利はない。大人しく捕まる事を推奨する」
「なぜ拒否することが出来ない?」
「それは先ほど述べたように貴様らに疑いがあるからその証拠を提示してみせたら、だからだ。そしてそれを貴様らは出来ないというのだから、拒否する権利を貴様ら有していない」
少し考え込んでいるうちに、俺が証拠を提示することが出来ないと勝手に認識されてしまったようだ。
だが、これから行うのは成功率はさほど高くない。なので彼の認識も一概に間違いではない。
しかしそれでもやらなければ、リリーを助けられる可能性を逃してしまうのだ。
やるしかないだろ!
「出来ないと言った憶えはないのだが?」
「....では、それを見せてもらおう」
「俺が彼を止める、これが俺と彼に繋がりなんてない証拠だ」
これが証明であり証拠だ。
もう一度言うが、これの可能性はさして高くもないことだが、今出せる最大の手でもあるのだ。
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