異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
採取、そして村へ
交渉によって皆の所へ行くことが出来るようになったので俺と男は村の方へと走っていた。
そしてその走っている間に『天眼』を発動させてコマチュリ草を探す。
『天眼』の良い所は『千里眼』が届く範囲であればどこでも発動可能なのが便利だ。さっきの位置くらいに合わせれば、多少離れていても探せる。
ただ『天眼』ばかりに気を取られていると木にぶつかるので、そこら辺も考慮しながら探している。
さらに頭や目への痛み軽減のため、最初に広げた範囲を約六分の一ずつに分けて観ている。
これなら最初よりも情報が多くないため見逃しも減る。
そう考えながらもう少しで村へ着くくらいに六分四目の範囲でコマチュリ草を見つけ出すことが出来た。
俺はコマチュリ草を初めて見るのだが、スズランにどこか似ている。しかし花の色は白とかではなく、毒々しい黒紫色。
正直これを薬ですと言われても信じがたい見た目だ。
そんな気持ちはさて置き、後はこれを彼に気がつかれないようにゲートを発動させて、手に入れ宝物庫に入れれば達成だ。
「うおっ ︎」
そう考えていると足元が疎かになったため木の根に足を取られて転びそうになる。
そのこけかける瞬間、人は痛みから身体を守ろうとするため自然に腕が前へ出る。
それを利用して手が支える先にコマチュリ草へとゲートを繋ぎ、地面に手が着いた瞬間受け身を取る感じで採る。
幸い転んでしまえば身体が邪魔して片腕がゲートの先にあるためその場にないことも、ゲートの存在もバレない。
後は身体が邪魔になるようにして起き上がれば、ゲートを見られることなく腕を抜ける。
そして立ち上がる際に多少不自然だが宝物庫を近づけるために片足をコマチュリ草を持っている手の横くらいまで持ってきて、立ち上がる前に宝物庫に入れる。
泥は走りながらでも払えるので、再び走り出す。
男は俺の後ろを走っていたが俺が転ぶと走るのを止め、じっとこちらを観ていた。
そして俺が走り出すと彼も走り出した。
それから数分くらいで村へと戻って来た。どうやらキリたちは既に戻っているようだ。
眼でキリたちがいる家へと向かう。
彼女らがいるのは周りの家々から少し離れた場所に建てられた、だが周りよりに比べてかなり大きい家にいるようだ。
大きさ的には他の家よりも二倍くらいはありそうな大きさの建物にいるようだ。
しかもそこだけほとんど完成している。
向かう途中村の人々から睨まれたり怪訝な表情を向けられたが気にせず進み、とっとと中に入る。
建物の中は普通の宿屋のような感じだ。ただ妙に変な臭いが漂っているのが気になる。
内装は俺らがいる玄関から向かって真っ正面側に左右にそれぞれ三つずつの部屋。
ここからでは詳しくは分からないがその部屋へ行く前の廊下には十字路のような分かれ道もある。
それぞれの部屋の扉から玄関、そして左の廊下へは手すりが取りつけられている。
既視感があるような、ないような....
そう考えていると左の廊下から足音が近づいて来るのに気がついた。
数秒ほどでユキナが姿を現した。
「ん、アズマ。お、かえり」
「悪い、遅くなった」
「大じょ、う夫。わた、したちも、さっき戻、ったと、ころ」
「みんなは?」
「こっち」
そう言ってユキナを先頭に皆のいる所へ向かう。
案内されたのは十字路の右側へ行き、さらに横T字路の廊下を真っすぐへと向かった先にある部屋。
そこはキッチンと居間のような造りの部屋で、キリたちは居間の方で椅子に座っていた。
「 ︎」
しかしキリとニーナは怪我を負ったようで包帯や傷版をしていた。
重傷を負っているのはキリのようだ。
「魔獣が出たのか?」
彼女らのレベルを考えると相応の魔獣だろう。
しかし念のためで彼女らには治癒核を渡しているはずなのだが...
「マダルノ蛇の希少種に運悪く遭遇しちゃってね」
「「っ!」」
サナの返答に一瞬言葉が詰まる。
「そっちにも出たのか。怪我は大丈夫か?」
「ええ、モアちゃんが手当てしてくれたから大丈夫よ」
そうキリが言うと少女の方を向き、笑顔を浮かべた。俺もそれを追い、少女へと視線を向ける。
少女、もといモアは急に話が自分の方へ向いたからか視線を下へ向けてしまった。
「ありがとうな」
モアに近づき礼を述べると彼女はこくりっと首を振って返した。
この反応、まだ嫌われているのだろうか?
やはりあの短時間でさらにマダルノ蛇を相手にしていては誤解を解くのは難しかったのだろう。
それにしても──
「マダルノ蛇は二匹じゃなかったのか?俺の方のを合わせたら三匹になるぞ?」
「子どもとかじゃないの?モアちゃん曰く、あの森の長で夫婦らしいし」
「そっちに出たマダルノ蛇の色と大きさは?」
「私たちの方は白でした。大きさは五メートルほどです」
「うーん、ならこっちにいたのが子どもの可能性があるか」
あくまで大きさ的な判断だが。
「それにしてもあなた、当然のように勝ってるのね」
「あー、いや今回は苦戦してな。そこを彼に助けてもらったんだ」
サナが呆れた表情を浮かべていたが、その表情が一瞬にして驚愕の表情へと変わった。
しかも全員。何?そんなに驚くこと?
そんな彼女らを無視するかのように男は軽く礼をして終える。
しかし気のせいだろうか、彼の表情がどこかキリたちを嘲笑っているように見えるのだが....
まあ多分気のせいだろう。初対面の彼女らを嘲笑う理由もないのだから。
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