異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

共闘、そして回復

 
 男は空中から一回転をし体勢を整えてから着地する。
 白いマントをはためかせながら降り立った姿に加え、整った顔に中肉高背の彼はさながら姫を助けに来た騎士のようだ。
 しかし先ほども言ったが、彼は防具を身につけていない。
 そうなると彼は冒険者なのか?それともあの村の誰かが何かしらの理由でここにいるのか?
 どちらにしても剣のみで魔獣が出易い森に来るということは相当腕に自信があってのことだろう。
 それだけじゃない。今、彼が現れるまで近づいて来たことにすら気がつかなかった。それだけの気配隠蔽の能力も高いということだ。

「──っ!、シャァァァッ!」
「!」

 唐突に現れた男について考えていると先にマダルノ蛇が我に返り、その威嚇の叫びによって俺も我に返る。
 彼に注意を払いつつ視線をマダルノ蛇へと向ける。
 さっきはしっかりと眼で見なかったから面倒ごとを増やしたが、今度はちゃんと『魔眼』を黒のマダルノ蛇へ向ける。
 そこにはまだ死の文字は表示されていない。
 瀕死なのは観て取れるがまだ生きているとなれば再び『毒霧』か『毒弾』を放ってきても可笑しくはない。
 先に狙うはあっちの方か。
 そう決めるとほぼ同時に二人が動く。

「おらぁ、よっ!」
「はあぁっ!」
「 ︎っ、ギジャシャァッ ︎」

 俺は先ほど男が切り崩して出来た手頃な岩をつま先で持ち上げ、サッカーのように蹴り飛ばす。
 男は剣を十字に振るうとそれに伴って十字状に線が飛ぶ。
 その二撃を藍色のマダルノ蛇が自ら進み受けた。
 どうやら男の狙いは黒のマダルノ蛇ではなく藍色の方だったようだで、それが功を成して二撃が互いに邪魔し合わずに済んだ。
 攻撃を受けた藍色のマダルノ蛇は倒すことは出来なかったが、岩によって当たった場所が少し色が変わっている。
 また男の攻撃はマダルノ蛇が動いたため少しズレてしまったようだが、それでも身体を深々と裂かれている。
 どちらの攻撃も硬い鱗を貫いての一撃となっている。
 藍色のマダルノ蛇もあと少し倒せるはず。腕ももう動かせそうだし、次で決める。
 そう考え宝物庫から剣を取り出そうとした時だった。
 突然藍色のマダルノ蛇の背後に並ぶ木が二本、倒れたのだ。

「「 ︎」」

 意図していなかった出来ごとに驚き俺と・・藍色のマダルノ蛇・・・・・・・・の視線・・・がそちらに向く。
 そこには倒れた木々の下敷きになっている黒のマダルノ蛇の姿があった。

「.....ジシャァァァァァァッ!!」

 それを呆然と眺めていたが、その光景を理解した藍色のマダルノ蛇が今まで最大の咆哮を上げた。
 しかし俺はその呆然としている間にその木が倒れた理由を確認した。木の端は明かに切られた跡が見られた。断面が綺麗に整っているのだ。
 しかしそこからやその付近から霧が見えない。
 つまり少なくとも木々が倒された際に人が斬ったりしていない可能性が高くなったのだ。
 となると誰が、という疑問なのだがあの男が先ほど放った線状の斬撃が一番あり得るだろう。
 ただ能力でも霧は発生するはずなのだがさっき言ったが何もないのだ。
 だから可能性で考えても彼がやったというのがあり得たというだけで残念ながらやったという訳にはならない。
 なんだか今日は不明なことばかり起こるな。
『ウォーミル』は不発するし木々を切った者も分からない。
 まあ今考えていても結局答えが出ないなら考えられる時に考えた方が良いか。敵を前にして考える方が可笑しいしな。
 そう決め今度こそ宝物庫から剣を取り出して駆ける。

「ン、ジシャッ!」
「っ、はあぁっ!」
「ジシ──」

 寄って来る俺に二発の『毒弾』で攻撃してきたが難なく回避し、一閃する。
 次の攻撃へと移らせる前にその首を落とす。
 だがこれで終わりではない。上から叩き切るように振り下ろしてから右肘を後ろへ引き、それに伴って左手を突き出す。
 身体を捻ることで左手のリーチを伸ばし、マダルノ蛇の銅に触れる。
 そして一気に魔力を流し藍色のマダルノ蛇に『ウォーミル』を発動させる。
 蛇やうなぎなどは頭がなくともしばらくは動ける。
 そのため身体を凍らせて動けなくさせるのが一番手取り早い方法なのだ。
 今思えば黒の方も熱ではなく冷却にしておけば問題なく倒せたのではないだろうか?
 などと後悔混じりに反省しながら藍色のマダルノ蛇を凍らせて動けなくさせる。
 これで討伐完了である。


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