異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

最後の抵抗、そして説得

 
 少女はキリとサナの想いを聞き、困惑の表情を浮かべていた。
 彼女とてキリやサナが言わずともそんなことは理解していた。しかしいくら理解していても、理解してくれと言われても、彼女の過去がそれを許さないのだ。
 冒険者によって村がどうなったのか、自分がいない間に冒険者が何もしなっかたことを考えるだけで許せないのだ。

「そんなの....口だけで信じろなんて無理!」

 それが今彼女が言えるせめてもの抵抗のようなものだった。
 しかしそれは抵抗なんてものにはまるでなっていなかった。だがそれが答えという訳でもない。
 それをキリたちも理解している。
 彼女が言った過去を考えれば自分たちの言葉だけ・・・・では少女の意思が簡単に変わるとは思っていなかった。
 ならばどうするべきか?
 答えは───

「確かに今は口でしか言えないけど、それでも冒険者の中には信用出来る人もいるって信じて欲しいの。でないと、あなたや村の人が今も生活出来ていることを疑わなきゃいけなくなるわ」
「....どういう事?」
「ここ最近、村の周りに魔獣が寄って来るのが少ないとは思わない?」
「.....確かに香を焚いていなくてもあまり見なくなったような....っ!そういえば復興が始まる少し前から以前よりも遭う頻度が少ないって村の大人達が言っていたような....」
「それはギルドからこの辺りの討伐クエストが増えているからよ」
「討伐クエストが?なんで....」

 少女は再び困惑の表情を浮かべ、考え込んでいる。

「グラルド、ルフ」
「 ︎」

 ユキナの呟きを聴いた少女はばっとユキナの方へ視線を向ける。
 その目にはどこか憤りの気配が窺える。

「グラルドルフがなんだって言うのよ....」
「以前グ、ラルドルフ、が暴れた、後に、それをと、う伐したぼ、う険者が、ギル、ドに話、て、村の周、辺をちゅ、う心に討ば、つクエス、トを検、討してもら、えるように、ギルドマス、ターに直せ、つ要せ、いしてく、れたか、ら減ったの」
「ギルドマスターにっ!直接っ ︎」
「あいつ、そんな事までしてたの?」
「え ︎お姉ちゃん、知らなかった!」
「私も知らなかったわ」

 ユキナの説明にそのことを知らなかったサナとキリが少々呆れた表情で言う。

「ただふ、通のクエ、ストよりもほ、う酬が少、ない」
「らしいですね。調査や発見報告なしのクエストですから、その分が引かれますからね」
「けどク、エストを受、けるぼ、う険者、は、たくさんい、た。何があ、ったか知って、いる人がお、おかったか、ら」
「!知ってたのならなんで来なかったの!」
「討伐な、ん易度、が高か、ったのも、あるけどグ、ラルドル、フが暴、れた時に、はまだそれ、がか、く認されていなか、ったから来、れなかっ、た」
「嘘....そんなの、聞いてない....」

 少女は愕然と肩を落とし、顔色も徐々に青ざめていく。

「それで、も辺りがぜ、ん部壊され、ないう、ちに冒、険者がと、う伐してく、れた」
「もしそれがなければ今、あの村が復興される事は多分なかったと思います」

 これが彼女らが導き出した答えだ。
 冒険者によって彼女が受けた冒険者へのイメージは酷いものだろう。
 しかしその抱いていたイメージとは違う冒険者がいることを自分の周りで実際に起こっていては口だけ、とはならず、許せないと頑なだった想いが緩んだ。
 情けからか報酬が少しでも欲しいからなど様々な想いからクエストを受けた冒険者もいただろう。
 それでも村のために危険を賭してクエストを受けてくれていたと知ってなおも冒険者は全員悪、と決めつけることが出来ることはない。
 少なくともそのクエストを受けてくれた冒険者は少女が抱いていたイメージの冒険者とは別物なのだから。
 それを理解した少女の頬には涙が伝っていた。

「「!」」

 少女が涙を流した時だった。
 サナとニーナが先にその音を聴いた。

「みんな、気をつけて!何か近づいて来る!」
「「「!」」」

 サナが危険を皆に促し、警戒態勢へと移る。
 それを聞いた面々も同じく警戒態勢を取り、少々を四方で囲むようにし辺り警戒する。
 次第に全員にも聴こえるようになった音は、何か大きな物を引きずっているようなずずずっという音と葉や枝を踏む音。
 それが徐々に近づいて来る。
 そしてユキナの向く方面からそれが姿を現した。

「「「「「 ︎ ︎」」」」」

 そこに現れたのは幅だけでラグビーボール一個半はありそうな白色の頭部の蛇、マダルノ蛇だった。



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