異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

香の毒、そして難しい年頃?

 
 少女は驚愕な表情と忌々しそうな目でこちらを見ている。
『魔眼』によると毒の効果は腐臭と軽い嫌悪感や悪寒などが起こるらしい。
 原因は少女が使っていた香なのだが、その主成分にモキュチュチュという花の花弁と蜜を使って作られているようだ。
 聞いたことのない花だな。
 それにより魔獣が近づいて来ないのは分かった。
 しかし俺は彼女に近づいても上記のことを感じはしなかった。
 これはステンチスライムと同じだと思うので状態異常無効が発揮されるとは思えない。
 仮にされるのならあの時にも発揮して欲しかった...
 キリたちか鼻の良いサナやニーナが感じているのなら発揮しているのだろうが、彼女たちの表情にそれらしい気配はない。
 なので少女の言う「大人には影響がない」というのは推定でも十四、五歳以上には影響がないのだろう。
 しかしそう考えるとこの娘(こ)いくつなんだ?
 ....いや、女性の年齢は深く考えるのは止めておこう。

「....別に、あなた達には関係ないでしょ」
「確かに俺たちには関係ない。しかし君の毒が万が一にも村の子たちに移ったら、それはどうするつもりなのかは気になる」
「....極力村の人とは接してないから大丈夫。万が一移っても....軽度の毒だからすぐに薬を用意出来る!だけどコマチュリ草は今の時期にしか手に入らない!だから多少無理をしてでも、手に入れなきゃいけないの!」

 少女は徐々に大声になっていき、言い終えると肩で息をしている。
 彼女自身も分かっているはずだ。
 確かに毒は薄められているし、効果は大したことない。
 子どもが毒の影響を受けても薬でなんとか出来るだろう。
 しかし子どもたちが影響を受けてもなんとか出来るのは、少量だからだ。
 毒というのは弱くても免疫力の弱い子ども、特に乳幼児ほどでは最悪の場合も存在する。
 ずいぶん昔に風邪をひいた三歳の子どもに栄養をと思いハチミツを溶かした食事を与えた所、その子は亡くなったという記事を読んだことがある。
 ハチミツには少量の毒がある。
 成長し免疫力がある我々には効かないが、乳幼児あたりの子どもには危険な毒なのだ。
 そしてこの少女が使っている香の主成分には花弁と蜜が使われている。
 それを踏まえて彼女は言ったのだ。コマチュリ草が必要なのだと。
 何かあるな。でなければそんな危険を冒さなくてもある程度の傷なら薬草や自然治癒で対処するはずだ。

「そんなにあたしに文句があるなら、別に探してくれなくて良い!あなた達に時間をかけていられないの!」

 そう言って少女は早足で森の奥へと進んで行った。

「あっ」
「何やってんのよ....」

 予想外の行動に少々反応が遅れ、手を前に出して間抜け声しか上げられなかった。
 それをサナが呆れたような声で嘆く。いや実際呆れているのだろうが。

「あの子一人だと危ないわ」
「追いか、けよう」
「そうですね」

 対して冷静に行動しようとしているキリにユキナ、ニーナ。
 それに頷くサナ。

「申し訳ない」
「気にしなくて良いわよ」
「そうよ。それに、危ないと分かっていてもやらなきゃいけない事があるのよ、きっと」
「そうな、の?」
「多分な」

 どうやらキリも俺と同じように考えているようだ。

「よし、じゃあとっとと追いついて、まずは何があったのか訊くか」
「その前にあの子に謝りなさい」
「そうよ。あのくらいの歳の子は傷つき易いの」
「アズ、マの当た、り強かっ、た」
「女の子は繊細なんです」
「ええ、きっと難しい年頃なのよ」

 全員がうんうんと頷いている。
 うーん、難しい年頃なのか?それってむしろ君たちの方が合ってるような、いないような。
 とりあえずここは従っておいた方が良いな。

「ああ、ちゃんと謝るよ」

 俺がそう言うと全員「それでよし」と言いそうな表情になる。
 難しい、ねえ。

「...ところでアズマ」
「?」
「あなたの能力で草とか見分けつかないの?」

 そう言われて目に魔力を流し辺りを一周見渡す。
 そしてそれらを見た後に再び目線をサナへと戻す。

「────出来る」
「あんたねえー....」

 サナ含め全員が呆れた表情を表した。
 いや待ってくれ!今までそこいらに生えてる物から『草』としか表示されてこなかったから、てっきり出来ないと思ってたんだ。
 ああ、でも香の主成分がなんの花か見えてたんだから、そこいらの草でも出来るだろ!
 気がつかなかった。
 彼女が何を悩んでいるのかとか、リリーのこととか考えてたから、さらっと流したけど俺、見えてるじゃん!

「はぁ....」
「あ!」

 ため息を吐くとニーナが声を上げた。そのため全員の視線が彼女へ向く。

「どうしたの?」
「あのね、アズマさんには罰として今すぐにコマチュリ草見つけてきてもらいたいと思って」
「.....は?」
「もちろんアズマさん一人で」

 すごく良い笑顔で提案を口にするニーナ。
 え、何怖いんだけど...ニーナこんな顔で酷(むご)いこと言う娘(こ)だったっけ?

「え?は?いや、それよりあの娘(こ)を追いかけるんじゃ...」
「安心してください、作戦があるんです。皆さん、耳貸してください」

 そう言いニーナは全員に作戦について述べる。


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