異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

嬉々、そして狂気

 
 私はワイバーンから飛び降り、彼へと目を向ける。
 彼は相変わらず私を睨んでいる。うん、睨んでる。それだけで身体に鳥肌が立ってしまう。
 今すぐ彼とやり合いたい、でもその気持ちを無理矢理抑え込む。
 そして一呼吸置き、口を開く。

「頑張って私を楽しませて下さい、ねっ」

 自分なりのとびきりの笑顔で言ってから、地面を蹴り彼へと迫る。それと同時に腰に挿しているレイピアを抜き、構える。
 そして剣の間合いに入ると真一文字にレイピアを横に振るう。

「....」

 彼はそれを平然とした表情で避けた。それもほとんど動く事なく、切っ先の当たらないギリギリで。
 空を切っただけだった。
 ならばと思い、一度弧を描くように左から下、そして上へとレイピアを上げ胸元まで持ってくる。

「ふっ!」

 そして彼の喉を狙って勢い良く突く。五撃連続で。
 レイピアが空を切る音を立てながらその切っ先が彼の喉を狙って鋭く突き貫く....事は出来ず、全て紙一重で躱(かわ)された。
 続く技の連続は全くを持って彼にダメージを与える事はなく、躱されるだけだった。
 ....んふ。
 しかし彼女は笑っていた。
 自分の技が全て紙一重で躱されているにも関わらず彼女は嬉々としていたのだ。
 ああぁ、やっぱりね。彼は強い、強いの。でもそうでなくちゃ困る。だって愉しめないの、嫌だもん。
 でも....
 私は後方に数回飛んで彼から距離を取る。

「ねえ、なんで剣を抜かないの?私、見たいんだけど」

 私はちょっと怒った感じでそう言った。
 だって前は剣持ってたのに、なんで今は持ってないのか気なるし交たいの。

「なんで抜く必要がある?」
「....へ?」

 彼の返答に思わず変な声が出てしまった。

「なんでって....そうねー、強いて言うなら気になるからかしら」
「気になる?何が?」
「貴方の腕前が」
「悪いけど、あんたが望んでいるほど俺は強くないぞ」
「それは、試してみないと分かんない事よ」
「それもそうだ」
「ふふ、分かってくれて嬉しい。じゃあ、早く抜いてくれる?」
「断る」
「....なんで」
「俺はワイバーンの討伐をしに来ただけなんで、あんたとやり合うつもりはない」
「ふふ、この子達を討伐。確かに貴方がいるなら難しい事でもないかもしれないね」

 私は背後にいるワイバーンの方を向く。
 この子達はそれなりに強いけど、今言ったように難しくないし彼に深傷を負わせる事さえ出来ない。

「別にこの子達を討伐する事は構わないけど、それだと君はすぐに帰っちゃいそうなんだよね。だから、それを阻止させてもらうね」

 そうは言ったけどこんなのただの建前であって、こう言えば彼が仕方なく私を相手してくれるはず。
 だから、早く抜いて欲しいなぁ。

「...はぁー、そう言うことなら仕方ないか」

 そう言って彼はどこからか鞘に収まった剣を取り出して、剣を抜いた。
 その剣は白くて長くて、太い。普通の剣よりも剣身の幅が広い。でも彼は平然と持っているから多分そんなに重量性の物じゃない。
 多分攻撃と耐久性を重視した剣ね。
 あれが私を突いてくれる。考えただけでゾクゾクしてきちゃう!

「ふふ、やっと抜いてくれた。でも私、あんまり焦らされるの、好きじゃないの。だからお仕置きね、っ!」
「っ!」

 地面を蹴り取っていた間合いを詰め、右下から左上に切り上げるように振るう。
 それを彼は真っ向から受け止めた。
 すぐ様私は剣を引き、上から振り下ろすように見せかけて、手首を捻って今度は左下から切り上げるように振るった。
 それでもやはり彼は受け止めた。

「っん!」
「っと」

 彼は剣でレイピアを押し、さらに足払いをして来た。払われそうになった足を上げ、足払いで力の弱った押しの隙を反対の足に力を入れ飛んで離れる。
 空中で構え直し、そして地面に足が着いたとほぼ同時にまた詰め寄る。
 間合い入ると彼の剣が既に振られていて、顎下少し前まで来ていた。
 それを身体を捻ってギリギリで避ける。
 さらにそれで終わりではなく、右脚の回し蹴りが私の左脇腹に命中した。

「んがっ ︎」

 それにより飛ばされ地面に一回ぶつかるとバウンドした。しかし二度目はぶつからず、左手で地面を押して空中で回転して着地する。

「 ︎」

 起き上がって視線を上げると彼は地面を蹴り一気にこっちに向かって来ていて、次の瞬間には間合いにまで入っていた。
 痛みで上がり辛い左腕を動かして下から切り上げる。
 彼はそれを空中で身体を捻ってそれを避ける。が、そこからさらに空中で一回し、その際に顎を蹴ろうとして来た。
 それを顔を横に背けて避ける。蹴りが頬をカスって髪をかき上げられた。
 地面に着地するタイミングでレイピアを振るうけど、彼は空中でそれを剣で弾いて、飛んで距離を取った。
 ふふふ、思っていた通り、やっぱり彼は凄く強い!楽しい!彼と剣を交えて命のやり取りが愉しい!
 もっと!もっと激しくイクよ!

「っ!ふっ!」
「ん....くっ ︎」

 一呼吸置いてから地面を蹴り、突きを撃つ。
 カウンターを入り交えて、数十撃で放つ。それを完全に避ける事が出来ず、頬や腕に切り傷が出来た。
 まだよ、まだまだ足りないの!だからまだ壊れたりしないでね!
 そこからさらに互いの剣と剣(レイピア)のぶつかり合い、それを繰り返すごとに互いの身体に傷が出来ていく。
 それでも私の口には笑みが浮かんでいた。

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