異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

ワイバーン、そして邪魔

 
 さすがにすぐに着くということはなく、翌日の昼少し前くらいまでかかった。意外と遠かった。
 まだワイバーンの姿は見受けられない。
 冒険者がワイバーンを発見したのが報せを受ける二日前。馬を走らせてきたらしいがワイバーンと接触するまでにこんなにかかるものなのか?
 普通なら途中で出会していてもおかしくないのでは?
 そんな疑問を浮かべているうちにそいつら・・・・は現れた。

「なっ!」
「いっ ︎」
「う、嘘だろぉ……」
「聞いてないぞ!」

 など、周りから驚きの声が漏れる。
 それもそうだ。

「グギャアァァァッ!」
「「グギャアァァァッ!」」

 そこにいるのは藍色、紺色、そして緑色の三頭のワイバーンがそこにいた。
 そして周りの人たちが見えているかは分からないが、緑色のワイバーンの背には人が乗っているのが見える。
 俺は『千里眼』を使いその座っている人を見る。
 金色(こんじき)色の髪を腰くらいまで伸ばした顔立ちの整った、美女という言葉がピッタリな女性。
 その女性の口にはうっすらと不敵な笑みが浮かんでおり、目はどこか期待のこもった緋色の眼でこちらを見ている。
 もう一度言うがそんな美女がワイバーンの背に座っているのだ。
 それは普通に考えるなら異常的なことだ。
 魔獣の、それも竜の上に座っているのだから。
 しかしワイバーンは決して頭が悪い魔獣ではない。この世界ではワイバーンを使役させている人も少なからずいるのだ。
 なのでもしかしたら冒険者の報せは彼女の使役獣(ペット)を逸れ竜と間違えて報せただけかもしれない。
 しかしこの考えに至ったのはここいる者の中で東だけだった。
 そして東、ウィーネ、そしてオーメルの三人以外の者たちは三頭の竜に恐怖し逃げ出したり、腰を抜かし動けなくなっていたりと混乱状態だった。
 それは仕方のないことだろう。
 こんな状態で冷静に魔獣の背にいる女性を観ている方がおかしいのだから。

「っ!」

 先に動いたのはウィーネだった。正面切っての突撃だ。
 何考えてんだ ︎
 そう思い俺もすぐ追いかける。もちろん彼を止めるためにだ。

「 ︎」

 しかし俺が走り出してすぐに辺りに白い煙が立ち込み始めた。

「(煙幕 ︎いつの間に…)」

 魔眼に魔力を多めに流し、煙を透けさせる。
 一番最初に飛び出したウィーネはすでに右横から紺色のワイバーンに迫っていた。
 速い。

「うらあっ!」
「グギャラアッ ︎」
「んおっと」

 煙幕の中敵の場所をハズすことなく近寄り、勢いよくジャンプしどデカいバトルアックスを振りかざした。
 横からの攻撃だったため完全に避けることは出来なかったが、それでもすぐに尻尾を振り、横払いをしてきた。
 それを彼は難なく避ける。

「おい!そのワイバーンは....」
「グギャラアアッ!」
「ふっ」

 俺が女性の存在のことを教えようとしたがワイバーンの雄叫びによりそれは途中で遮られた。
 視線を声のした方に向けるとオーメルがロングソードでワイバーンと戦っている姿が視界に入った。
 あーもー!そっちもか!
 どちらも彼女のワイバーンに攻撃を仕かけ始めてしまった。
 早く止めなければ殺してしまっては彼女に悪い。
 それに幸いなことに今はまだ煙が立ち昇っている。ゲートを使ってもバレないだろうからとっとと二頭と二人を動けなくさせよう。
 そう考え、ゲートを開こうとしたまさにその時だった。

「 ︎」

 背後からわずかな殺気が発せられた。
 俺は横に転がるようにその場から離れた。その直後俺がいた場所に見覚えのあるタルワールが突き刺さっていた。
 魔眼によりその武器の持ち主までに秋色の霧が漂っていた。
 その霧は木の木陰から伸びている。

「そこに隠れているのは分かっているぞ、なんのつもりだ」

 俺がそう言うとそいちは姿を現した。
 その男には覚えがあった。あんな特徴的なヘアスタイルを忘れることはない。
 ウィーネの仲間の一人、ケルンだ。

「おや、こりゃあ誰かに当たりかけやしたか?すんまんね、何しろ煙で見えねえもんで」

 そうケルンは悪びれもない顔で言う。
 見えてない、か。
 さっきの殺気は明かに俺に対してだった。この煙の中、移動した俺の位置を正確に捉え、多分逃げ出した者の中に混じって背後まで来ていた。
 それで見えていないで済ませる気かよ。

「....次から煙が晴れてからにしろ!」
「へーい」

 ケルンは軽い返事をしてから再び木の陰に戻った。
 また狙われそうで怖いな。
 それにしてもなぜ俺を狙った?何かした覚えはない。

「グギャァァァッ!」
「おら、こっちだ!」
「こちらですよ!」
「グギャラァッ」

 俺がケルンに構い、そして彼の行動について考えていた少しの間に二人は互いに別方向にそれぞれ相手をしていたワイバーンを連れてこの場から離れて行く。
 マズい、離れるという選択肢は普通の状況だったら正解だけど今のこの状況では不正解だ。急いで動きを止めないと!
 そう思った矢先、再び殺気が発せられた。今度は上から。
 俺は後ろへ飛び退く。
 そして俺がいた場所に再びタルワールが突き刺さる。
 俺は上を向き、ケルンを見る。
 十メートルくらいは上にいる彼は、あいも変わらず悪びれもない顔でこちらを見下ろしている。
 それが頭にきた俺は二頭と戦っている二人より先にゲートを上にいるケルンの足辺りに繋げ、ゲートに手を通す。
 そしてケルンを足首を掴み、手首を捻って勢い良く下に投げた。

「なんだっ ︎」

 彼はそのまま地面へと落ちて行った。俺の真上から。


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