異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
場所、そして帰宅
結局悩んだ末に彼らを帰すことにした。
悩みの種である家庭内暴力についてはしばらく張り付いて様子を見て決めようと思う。
なあに、俺には壁なんてお構いなしで覗くことの出来る『千里眼』がある。これである程度離れていても彼らの様子を見ることが出来る。
人様の家を覗くのをどうかと思うが心配なのだ。
それに彼らの様子を見ていると帰りたくなさそう、という訳でもなさそうだし。
ということで、彼らを送るために家の場所を訊くとエネリアの街よりさらに下にある“ネビュラ”という街の出らしい。
俺も港へ行く時に一回だけ寄ったことがある。
港と王都の通り道にある街だけあって活気に溢れている。それに王都やエネリアに比べて少しだけ物価が安い。
さらにネビュラは王都の次に酒場の多い街だ。
それと聞いた話ではその酒場の中に港から引っ越してきた料理人がいて珍しい肴(さかな)を出してくれる店がある、という噂があるらしい。
それは次来た時に是非とも食べてみたいと思った。
まあ噂だから本当かどうかも怪しいのだが、こういう楽しみを抱きながら酒場を回ると考えればより酒が美味いのだろう。
と、そんなことより、ネビュラには一度行ったことがあるのでゲートを繋げることが出来る。
子どもなら見せても問題ないと思うし、とっとと行....
「待って、二人ともエネリアまで馬車で来たの?」
「はい」
「ならその馬を連れて行かないとダメだな。どこに預けてあるんだ?」
「あ、いえ私達は途中で乗せてもらって来ただけなので馬車は持っていないんです」
「そうなのか、なら大丈夫だな」
俺はそう思いゲートを繋げた。
しかし帰りは歩いて帰るつもりだったのだろうけど子ども足だと結構あるんだけど、分かっていたのかな?
そう思いながら突然現れたゲートの輪にたじろっている二人の背中を押して一緒にゲートを潜る。
「「ええーーーーーっ ︎ ︎」」
ゲートを潜り、裏路地から出るとそこには昼前ということで客を呼び込むために声を張っているおじさんやおばさん、立ち止まって商品を見ている人、話をしている人、他にも色々な人が道を行き来している。
その景色を観て思わず大声を上げる二人。
「えっ、ここ....え ︎」
「何で?僕たちさっきまで......え?」
「俺の能力でネビュラまで来たんだよ」
そう説明はしたが二人とも驚きのあまり固まって聞き取ったのか怪しい状態になっている。
とりあえず二人が落ち着くまで待ってから家まで送って行くことにした。
歩いて数十分くらいで家に着くことが出来た。
「「ただいまぁっ ︎」」
二人は家が見えると走り出し、勢い良く家の中へ入って行った。
少し遅れて俺も家の前に着き、中の様子を見る。
そこには痩せ細り首に包帯を巻かれ、我が子に微笑みを返している女性と、はしゃぐ姉弟の姿があった。
「...っ!」
母親は俺の存在に気がつくと一瞬怪訝な表情を浮かべたがすぐにその表情は消えた。
「お母さん!あのお兄ちゃんが僕たちの事、助けてくれたんだよ!」
「ゴブリンとかに襲われそうになった時に現れて、バッて全員倒しちゃったの!それにニグや私の怪我も治してくれたんだよ!」
母親は二人からの話を聞くと、
「娘達を助けて頂きありがとうございました!」
そう言い深々と頭を下げた。
「いえ、たまたま近くに用事があってそれで偶然だっただけなのでお気になさらず」
「何もありませんが、どうぞお上がり下さい」
「....ではお言葉に甘えて、失礼します」
俺は女性に勧められるままに家にお邪魔する。
まだ分からないけど今のところは優しそうな母親だし暴力を振るうようには見えない。が、安心するのはまだ早い。
客人の前だからという理由かもしれないしな。
少女は気を利かせて俺に座布団ー布を一枚ーを敷いてくれた。それに腰を下ろし、母親に愉(たの)しそうに旅の話をし始める姉弟(ふたり)。
母親も二人の話に相づちや驚きなどをして愉しそうに話を聞いている。
俺はしばらくの間それを眺めているだけ。
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