異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
煽り、そして条件
「確かにその魔道具は強い。しかしそれがあるならお前はなぜもっと暴れていない?」
「....」
「理由はそれを使うのにはそれ相応の代償か条件が必要ってことだろ?だから暴れない。違うか?」
さらに言えばニコルがあの魔道具について知らなかったってことはその条件がバレるのもマズいからだろうけど、これは不確定だから止そう。
「....何も言わないってことは図星ってこ...」
「てめえ、立場分かってんのか?」
俺の言葉を遮ってボスが睨みながらドスの効いた声で言ってきた。
ちらりとワオルさんを見ると少し強張った顔をしているがどことなく笑っているようにも見える。
「立場...ね。俺たちはギルドから任された冒険者で、お前たちは他人に迷惑をかける悪党ってところかな?」
ドンッ
ボスが机を蹴り上げた。
「本当に分かっていないようだな!懺悔して俺の下に入れば見逃しても良いと考えていたが、もういい。今すぐそこに転がってるゴミと同じ目に合わせてやろう!」
余ほど癇に障ったようで、その目は鋭くなっている。
見逃すと言っているが嘘だろう。ニコルにも見せていなかった魔道具を俺らに見せたのだから生かしておくとも思えない。
確実に油断させて殺す気なのだろう。
そしてあと少しか....一応これも試してみるか。
睨んでいるボスに対して宝物庫から慎重に取り出した例のへし折った矢を取り出し投げる。
「 ︎ ︎」
何かを取り出したことには気づいたと思う。
しかし投げの速さがそれなりだったため、目でそれが何なのか認識出来ても身体は動けないだろう。
それでも毒矢がボスに当たることはなかった。
空中から落ちた毒矢には矢の部分に穴が開いており、そこからあの虫が二匹ほど出てきたがすぐに空気が抜けたようにシボんだ。
その際「キュゥゥゥゥ...」という甲高い声を出していたのが耳に残る。
「...ふん、その程度で俺を倒せるとでも思ったのか?甘いわ ︎」
実験の一つを何か勘違いされているようだが、まあいい。
今ので分かったのは『認識』とだいたいの『距離』くらいだな。
身体の動きなどは関係なく目で見ることが条件の一つなのだろう。
次に能力が発揮されるのはだいたい直径二、三メートル...いや、ニコルのことを踏まえると七メートルくらいかな。
範囲が狭いのが救いだな。
そして....
「終わりかな」
「はあ?何言って、がっ ︎ ︎」
「あがっ ︎」
鈍い声が部屋の中で響くことなく静かに消えた。そしてボスは倒れ、続いて背後で隠し武器に手を伸ばしていた女が倒れる。
本当にゲートは強いな。
「...どうしたんだ?...急に叫んだかと思ったら、倒れて動かなくなったぞ」
「しばらくは動けないようにしたから今のうちに警邏に連れて行って早く依頼を終えよう」
そう言って俺はボスに近づく。
「お、おい!小僧の能力を疑う訳じゃあねえが、そんな無警戒に近づくのは危ねえぞ」
「大丈夫、今はこの魔道具を使うことが出来ないからな」
「「「「⁈」」」」
魔道具の能力を発動させるのには魔力が必要となるそうだ。ならその魔力が流れないようにすれば良い。
『麻痺』は対象を麻痺させることが出来る。さらに魔力を多く流し対象をピンポイントで狙うことだって出来る。
だが、『麻痺』で魔力だけを止めることは出来ない。
ならば血流の途中を止めてしまえばいい。『ウォーミル』で魔道具がある所の血管を凍らせた。
凍らせた痛みは麻痺させたので、ボスからしたら身体を動かすことが出来ずまた、魔道具を起動させること出来ないという状態なのだ。
これはかなり恐怖を覚えるだろうけど、我慢してもらおう。今までの自分の行いの反省も兼ねて。
だが警邏に着いたら『ウォーミル』で凍らせた部分を溶かさないと血流を止めたままではいずれ死んでしまうからな。
「ほら、とっとと行こう。早く帰りたい」
「...あ、ああ」
「...は、はい」
二人の気のない返事を背に俺がボスを、ワオルさんに女とニコルの死体?を任せてこの部屋を出る。
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