異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
ボス、そして予想外
移動し始めてから小一時間が経ち、日が暮れたくらいにあるボロい酒場に着いた。
酒場の入り口前に人力車が止まりドゥクルが重たい音を立てて地面に降りた。
そして酒場の中へ入って行く。
「やってるのか?」
「ねえだろ。儂だったら絶対入らんぞ」
「テメエら!早く入りやがれ!」
入るのをためらっていると男が怒鳴る。
「あんたは入らんのけ?」
「入れる訳ねえだろ!本当は下っ端は入れるはずねえのに。ドゥクル様に感謝しろよ!ほら!とっとと入れって!」
「おいおい、押すんじゃねえ」
男はワオルさんの背中を押して酒場に無理矢理入れる。
ワオルさんに続いて俺、アル、ブルスさんという感じで中へ入る。
酒場の中もぼろぼろで机や椅子も朽ちかけている。そして本来酒場のマスターが立っているであろう場所に少し古びた扉がある。
その扉の前にドゥクルが立っている。
「付いて来い」
そう言って扉を開けた。扉が古びているせいか木くずが少し落ちながら鈍い音を立てて開いた。
ドゥクルが奥へ進む。俺らも後を追って奥へ進む。
扉の向こうは螺旋階段が下へ続いていた。左右の壁に松明が刺さっているので足下がよく見える。
螺旋階段を下って行くと壁の所々に傷やヒビが入っているのだが、どれも自然についたものには見えない。
故意につけたものだろうけど....
そんなことを考えていると階段は終わり、石で舗装された一本道へと出た。高さは三メートル、横二メートルほど。
松明で照らされているのに奥の壁が見えない。
ドゥクルがその一本道を歩く足音が反響する。
数分ほど歩いて行くと扉のない部屋へと出た。
「「「「 ︎」」」」
部屋は大部屋になっており、学校のプールくらいはありそうだ。
そこには高価そうなソファーや机、その上に酒がある。そこまでならまだ良い。
何で裸の女性がこんなにいるの ︎
数人の半裸、もしくは全裸の男性とその倍近くの全裸の女性が周りにいる。年齢はバラバラ。
女性は酒を注いでいる者もいれば男性と絡んでいる者もいる.....
「頭、骨のある新人が手に入りました。如何でしょうか?」
そうボスと呼ばれた左眼に眼帯を付け、顎髭を生やした強面の男が酒を飲んでいた。ボトルで。
「ふぅー....」
パリンッ!
ボスは一息吐いてから持っていたボトルを投げ、ドゥクルの足下で割れた。
「....でぇ」
ボトルが割れたことで静かになっていたところにボスの低い声。
「それだけか?」
「....はい」
ドンッ
ボスは自分の前にあった机を蹴り上げた。それにより乗っていた酒瓶などが割れ、酒で地面が濡れた。
「もう一度だけ訊く、それだけか?」
「.......はい」
「それは何の冗談だ?ドゥクル。そんな事を一々俺に報告しに来んなっつたよなあ?」
「いえ、こいつらの腕は確かです!現にボクチンの部下一六人を数分で...」
「お前の部下なんぞ何人束になろうが変わらねぇし、弱い。そんな奴らに勝ったと言って腕が立つ?笑わせんな」
目つきが鋭くなり強面の顔が余計に迫力を増した。
「頭、どうせなら試してみたらどうだい?」
女性を数人まとっている宝石や首飾りを身に付けた男がそう言う。
「試す?」
「ガーズを使ってみろよ。本物なら使えるしな」
「ふんっ、貴様が欲しいだけだろうが」
「さあな」
二人の男が不敵な笑みを浮かべる。
「....分かった。ドゥクル、貴様の眼で選んだ部下とガーズを闘わせる。貴様の部下が負ければ、分かっているな?」
「 ︎そ、それだけは...」
「....」
ボスがドゥクルを睨み付けて黙らせる。
「はははっ!馬鹿なことしたなあー!精々お前の部下が勝てることを願っておくんだなあ!」
「「「「「「「ふふふ...」」」」」」」
男が高らかに笑う。それにつられてか周りからも笑い声が漏れる。
その笑い声の中に
「新しい幹部様は辛いわねぇ」
「またやらかしたな」
「いつ終わるのかしら」
「あの部下達も後悔するだろうな」
などという声も聞こえてきた。
「明日の昼、ここに来い」
「....そんな.....そんな.....」
「追い出せ」
膝をついて絶望の顔になっているドゥクルに対してボスが冷たくそう言うとがっちり体型の男七人が現れ、連れ返そうとする。
俺らは特に何もされず言われるがまま入ってきた方へと向かったが、ドゥクルは二人の男に両腕を持たれ、引きずられながら連れて行かれた。
「人が多過ぎたな」
「全部で四十五くらいか?」
「いや裏手の方に十人ほど、それと机の下に武器を隠していた者も数人いた」
「よく気がついたな」
「俺らが入ってから少し妙な動きをしていたから分かっただけだ。裏手の方は背後のあいつらが出て来る時に見えた」
「小僧、お前本当に子どもか?」
「当然」
そんなやり取りをしていると螺旋階段へ着いた。
明日決行したいがボスは来るとは思えないな。何とかしないと、ここまで大事になるのは予想外過ぎた。
そう反省しながら階段を上る。
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