異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
大会開始、そして様子見
コロッセオの中の様子は地球にあるのとほぼ同じ造り(写真でしか見たことないけど)になっており、違いといえば真ん中に円柱型の舞台があることと観客席の一部だけが塀で囲われており、そこに周りとは似つかわない絨毯や装飾、豪華な椅子が一つに体格の良い武装した兵士が五、六人ほど立っているところくらいだ。
その円柱型の舞台に参加者と思われる人たちが階段を上って行く。
直径五百メートルほど、高さ二メートルほどか。観客席の数は....うん、分からん。
そんなことを考えていると前の人が止まったので当たりかけるギリギリで俺も止まることが出来た。
それから少しして豪華だが少し動きやすそうな服を着た、偉い人には似つかわしくない体格の良いあれは犬かな?の獣人が現れた。
「初めに、シェルネス・ビン・アルタイル国王様より開会の御言葉です!」
そう司会の人、多分女性が言うとどこからともなく太鼓の音が鳴り響いた。
するとあの犬の獣人の人が少し前に出て来た。
「おほんっ...此度の大会もより素晴らしい物になる事を期待しておる。皆、己の持てる力を出し大会を盛り上げてくれ」
「「「「「「おおおおおおおっ!!」」」」」」」
王様の言葉に答えるかのように拳を上げ叫ぶ参加者たち。
王様はあの豪華な椅子に座った。あの人が国王なら王女もいると思ったが椅子の数的に違うな。
次に司会の人がルールを説明してくれた。
サナに聞いたこともあるが他にも、
・道具、固有能力の使用禁止
・場外した後にこっそり舞台に戻るの禁止
・帯を結び直すの禁止
・帯への小細工禁止
あとは、
・十数えたらスタート
・帯を取られたり、場外した場合速やかに客席に移動
などもあるそうだ。
まあ上の三つがだいたい重要なルールだそうだが、道具と固有能力の使用禁止か...流石に言語解析は許してもらっても良いよな。じゃないとこっちが大変だ。
それと神様からもらったこの指輪も許してもらいたい。ゲートは使わない、というか使う気もない。
「それでは受け付けの際に渡されました、こちらのを帯をご用意して下さい!」
司会の人が手を上げてそう言う。何を持っているのか見えなかったが多分受け付けでもらったこの帯のことだろう。
「こちらの帯を....このように結んで下さい!」
そう言って司会の人が帯をどこかに結んだようだ。これは流石にと思い、目を凝らして千里眼を使う。
猫耳のお姉さんが帯を額に巻いていた。
これって....
「.....それでは十数えます!」
お姉さんが周りの様子を見てからそう言った。すると一気に周りから人の塊がなくなり、みんな舞台に散乱した。
「...二!....一!....始め!」
お姉さんがそう言うと太鼓が盛大に鳴った。
それと同時に観客席と周りからうるさいほどの声が響き始めた。
周りの様子を伺っていると、みんな額に巻いた帯を取ろうと攻めたり、逆に受け流したり躱したりしている。
なるほど、つまりこの大会って....
「....このっ!」
「っと、これをもらえばいいんだよな?」
「 ︎このっ」
「危ないな、あと爪は切っとけよ。怪我するかもだから」
「この餓鬼」
「ま、帯はもらったから」
「え ︎」
背後から俺の帯を取ろうとして来た犬のおっさんが額を触り、自分の帯がないことに気がついた。これでこの人は脱落。
多分俺の予想で合っていると思うけど、これってつまり、地球の騎馬戦とかの“鉢巻取り”(注:呼び方はそれぞれ異なる)だろ?
これを国王が考えて大会にするとは....
まあ他人が決めてみんなが楽しんでいるのだから俺がどうの言う気はない。てか言っても相手にされないだろうし。
「へへへ、小僧。大人しく俺に帯をわた...」
「場外でもいいんだろ?」
「ぐふっ ︎」
「がっ ︎」
「ぐっ ︎」
男の腹のあたりを少し強めに蹴ると吹っ飛び、その背後にいたらしい運の悪い二人の獣人も吹っ飛んだ男に押されて場外へ吹っ飛んで行った。ギリギリ壁に当たらないところで落ちた。
強過ぎたか。もっと手を抜かないと大変なことにもなりかねないな。
そう反省しながら、周りの様子を伺う。
途中でキリとサナの姿が見えた。
女の子だからなのかどっちにも数人ほど周りを囲っている。助けようかとも思ったが、そんなことは無用だとすぐに思い知らされた。
その周りを囲っていた男たちは倒れているか、投げ飛ばされて場外、もしくは地面に落とされた。
うん、大丈夫そうだな。
「おらぁぁっ!」
「ふっ!」
「っと ︎」
「惜しい」
「しまっ ︎うあぁぁぁっ ︎」
こちらに突っ込んで来た兎耳の男の足を払おうと屈んで払おうとしたが避けられてしまった。
しかしそれで終わりだと油断したのか次の足を掴む攻撃には反応出来ず足払いの回転を利用してぶん投げられた。どうなったかは知らないけど多分場外だろう。
「あの子ども凄いな」
「あんな子、前はいなかったわよね?」
「さっきのやつ何で飛んでったんだ?」
「見えなかったのか?あの小僧がぶん投げたんだよ!」
「マジか!」
「大人を片手で投げるとか俺、出来んぞ」
「何かの見間違いじゃないの?」
などと少し観客席からの声が聞こえたような気がする。まあ、気のせいだろうけど。
さて、自分から帯を取りに行ってもいいのだがここは周りを観ていることにしよう。
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