異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
報告、そして実験
ベラリアルを無事に下山することが出来た俺たちは1日宿に泊まってから帰宅した。
帰る前にスノウマンたちが全員倒れたことやその時にヒューズさんたちを襲った寒気などの説明をしようとしたが、ヒューズさんには「別にいい」と言われ、バジルには「アズマの能力とかだったんでしょ?」と訊かれた。
詳しく説明しても時間がかかりそうだったのでそういうことにした。
その後俺たちは馬車に乗ってアトラス州を後にした。
バジルたちから見えない所まで来ると馬の少し離れた前方に家の近くにゲートを繋ぎ、潜って帰って来た。
翌日、クエストが終わったのでギルドへ訪れた。
「あの」
「はい、何でしょう?」
「ギルドマスターのティアさんに会いたいんだけど」
「申し訳ございませんが会わせることは出来ません。招待状か何かはお持ちでしょうか?」
なんか前にもあったな、こんなこと。
「ない」
「でしたら会わせる訳にはいきません。お引き取り願います」
「....分かった」
俺は諦めて家に帰る....はずもなく、ギルドから出て路地裏へ入りゲートを開く。
行き先は...
「どうも」
「わぁっ ︎」
千里眼でギルド内を覗き、ティアさんを見つけたので部屋にゲートを繋いで侵にゅ、お邪魔させてもらった。決して侵入ではない。
いきなり現れた俺に驚き、目を通していた書類を投げ出してしまった。
悪いことしたな。
「ア、アズマさん⁈ど...何処から?」
「あー...普通に入り口から。気づかなかった?」
「はい...そうでしたか。気がつきませんで申し訳ございませんでした。ところでアズマさん、クエストの方は?」
「ああ、終わって昨日帰って来たところだ。核を壊したから証拠はないが、それでも大丈夫か?」
「申し訳ありませんがそれは流石に...アトラス州のギルドマスターに偵察班を出してもらいますので、確認が終了次第改めて連絡させていただきますので」
「まー急ぎでもないからいいけど」
「ありがとうございます」
ティアさんが深々と一礼する。
ゲートを使えばほぼ一瞬なんだがもちろん使えるはずもないのでここは引き下がる。
「それじゃ」
「お疲れ様でした」
ちゃんと部屋の扉から出て、誰もいないことを確認してから家にゲートを繋ぎ家に帰る。
______________
「....」
「....」
ティアさんにクエスト終了の報せをしに行った翌日、神様に来てくれと念話で呼ばれたので来たのだがずっと無言が続いている。
俺から話しかけようにもずっと不機嫌そうな顔をしているのでどうにも話しかけ辛い。
「...何で呼ばれたのか、分かるかい?」
「...分からん」
「これを見てくれるかい」
そう言って神様が懐から紙を出してぽいっと宙に投げると俺のところまで飛んで来た。俺はそれを受け取って目を通してみる。
文字の上に日本語が浮かび上がって来る。
______________
怪我人:14人
失神者:103人
家畜
失神:65頭
死亡:10頭
なお、寒気や震えなどの症状も見られている
______________
と書かれている。
「それは先日、アトラス州で起こった謎の現象によって出た犠牲者の数だよ。その現象が起こったのはちょうどアズマくんが殺気でスノウマンたちを気絶させた時だけどね」
「...それって、もしかして...」
「はぁ...お察しの通りだよ。アズマくんの殺気による被害だよ」
「マジか...」
俺はどうすればいいのか分からず固まっているしかなかった。
「とりあえずアトラスでは魔獣による被害として捉えているのが幸いと言ったところなのかな」
「謝りに行かなきゃダメだよな」
「行ったところで誰が信じると思う?」
「うっ...」
「私が言うのもなんだが、放っておくしかないようだね」
「はい。本当にすいません」
「だけど流石にまた同じことが起きてもらったらそれについて考えさせられたりする私が面倒だからね。ゲートリングを貸してくれるかい?」
俺はそう言われ、黙って従った。指輪を神様に投げる。
それをキャッチするとキャッチした手の隙間から光が漏れる。
「はい」
「っと」
光が止むと指輪を投げ返された。
「何をしたんだ?」
「アズマくんには反省も兼ねてしばらくはそれを外していけないからね」
「いやだから何をしたんだって」
「今回の件ではアズマくんのレベルが周りよりも高過ぎたのが原因だ。それは私にも責任があることだからね、君のレベルを抑える呪いを付与したのさ」
「神が呪いを付与させるなよ」
「そうかい?昔はよくかけたものさ。アズマくんがいた世界でも何人かに呪いをかけたからね」
神様はそう爽やかな笑みで言う。
「まあ、とりあえずそれを着けていれば、例え間違って殺気を放っても今回みたいな被害は出ないと思うよ。外さなければだけどね」
神様はそう釘を刺す。
言われなくても外す気はない。
「じゃ、俺はこれで」
「うん、また暇な時に呼ぶね」
「...ああ」
俺はゲートを開いて家へ帰る。
神様に呼ばれてから数日後に手紙が届いた。差出人はティアさんからだった。
俺は手紙の封を開けずに宝物庫に入れ、ポールさんに出かけると伝えてからゲートでギルドに向かう。
今回はちゃんと扉をノックしてから中に入った。扉までは無許可だが。
「ご足労、ありがとうございます」
「いえ」
やや高価そうな椅子に座ると扉がノックされた。ティアさんが通すと30代ほどの女性が入って来た。
彼女は盆を持っており俺とティアさんの前の机に紅茶を置いて去って行った。
いつ呼んだの?
「今回は私の無理な依頼を受けていただき、ありがとうございました」
ティアさんは椅子に座りながら一礼する。
「先日、アルトラ州のギルドマスターよりエルダースノウマンの消息が確認されました。しかし残念ながらエルダースノウマンやスノウマンの死体などが確認出来なかったとのことです」
まあ核を砕いたら雪になったから確認なんて出来ないだろうけど。
「ですがあちらのギルドより依頼を任されていた冒険者たちの報告もあり、今回の依頼は達成ということになりました。お疲れ様でした」
「はぁ...」
「それでは...」
ティアさんは立ち上がり立派な机の方へと歩いて行き、机の上に置いてあった皮袋を持って戻って来た。
「こちらが今回の報酬となります」
ドサッと重い皮袋を渡された。
「今回の討伐は国としても大きな影響を受けることが出来ました。それにより今回の報酬は白金貨100枚を贈らせていただきます」
白金貨100枚というと、円だと1000万か。こんなにもらっていい物なのだろうか?
「そして依頼を達成となりましたので、それによりアズマさんのランクが一段階上がりました。おめでとうございます」
そう言われてステータスを開く。
___________
ステータス
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
名前:桐崎 東
ステータス番号:57764
性別:男
Lv.31
攻撃:2375
防御:3753
体力:7566/7566
魔力:10201/10267
「固有能力」
魔眼Lv.8
千里眼Lv.6
Lv.6:400メートルまで調整可能
言語解析
言語読解
ドレイン
ウォーミル
麻痺
能力:手で触れた対象を麻痺させる
______________
確かにステータス画面の色が銀色に変わっている。
それにやはりレベルが下がっていた。三分の一くらいは減らされているな。でも攻撃力とかは前のとほとんど変わっていないな。やや上がってはいるけど。
「確かに上がってる」
「おめでとうございます。アズマさんは今回で銀ランクとなりましたので、銀ランク以下の依頼、クエストを受けることが可能になりました。他にも銀ランクからの冒険者には様々な利点がございますので」
ニーナが言っていたやつだな。銀ランクからは希少なのでそういう待遇を得られる、だったかな。
「討伐の時に仲間もいたんだけど」
「申し訳ございませんが報酬は依頼をさせていただきましたアズマさんだけとなります」
「ランクとかもダメか?」
「お名前を申してくださいましたら、こちらで上げておきます」
「じゃあ、よろしく。名前は...」
俺はキリたちの名前をティアさんに教える。
ティアさんはそれをメモ帳に記入している。
「....はい、アトラスの冒険者から訊きました名前と同じですね。それでは上げておきます」
「よろしく」
「はい。今回の討伐、本当にありがとうございました」
「いえ...じゃあ俺はそろそろ」
「はい、今回の件、誠にありがとうございました」
ティアさんが頭を下げているのを後にして扉から出る。
ゲートを開いて家へ帰らず、ギルドから近い路地裏に繋げる。
「ぎゃうっ!」
「っと、ふんっ」
「ぎゅっ、ぎゅうっ!」
「くっ、このっ」
「ぎゅう ︎」
攻撃を躱し反撃したが避けられてしまった。
そしてもう一度攻撃を仕掛けて来たのを敢えてギリギリまで近づかせてから軽めに後ろへ飛び、敵との距離がギリギリの状態になり身体を捻って剣を振る。
食事の後の軽い運動にと思い、ギルドへ戻りクエストを受けて来た。
今回のクエストはペロリグという魔獣で、全長1メートルほどのサボテンのような形で横から脚が伸びている。手はないのだがその代わり口が2つあり、舌を鞭のように使って攻撃して来る。
受けられるランクは赤だ。レベルは60。
舌を剣で斬ろうとしたのだが、硬すぎて斬れなかった。
「ぎゅううっ!」
「ふんっ」
「ぎゅう」
右舌で横から攻撃して来たのを剣で弾き、足に力を入れ二踏みで剣の間合いまで入り剣を振る。
だが後ろに飛んで避けられてしまった。
うん、レベルが下がったけど戦闘ではあんまり支障はないな。速さやジャンプ力などは少し落ちているが、それでも十分なほどに戦える。
「ぎゅううぅぅうぅぅううぅぅぅうう...」
「んっ...」
攻撃を避けたペロリグはジャンプを数回繰り返して確実に俺の間合いから離れ、舌を伸ばしたり縮めたりして鋭い槍のような一突きを交互に、少し幅広めにラッシュして来た。
それをその攻撃の届く範囲内で避ける。
多少避けられず身体を擦ってしまったのもあるが、他はちゃんと避けられた。
やっぱり身体の動きも、洞察力も落ちてるな。
「ぎゅうぅ!」
「!」
ドンドン、ドンドンと舌をバウンドさせ土煙りを起こす。
ふん、視界を奪うという判断はいいかもしれないな。だが、残念ながら俺は観ることが出来る。
魔眼を発動させる。
「ぎゅうっ!」
「ふっ、っと」
ペロリグが両方の舌を互いに横から攻撃して来たのだが場所が把握出来ていないようで、互いの舌の俺までの距離がズレている。
左の舌を剣で弾き、すぐ身体を屈め、右の舌の攻撃を躱す。
「ぎゅうっ ︎」
弾いた舌に避けた舌が追いつき舌同士がぶつかり、互いに弾かれた。
「ふんっ!」
「ぎゅう ︎」
弾かれ動けなくなったその隙を突いて左舌を握る。
うっ、ベチョッて言ったぞ。
気持ち悪いと思いながらもウォーミルを発動させて舌を凍らせる。舌が動かないほどで止めた。
「ぎゅ、ぎゅぎゅ⁈ ︎....ぎゅぎゅ...」
「悪いが実験に付き合ってもらうぞ?」
「ぎゅぎゅ、ぎゅぎゅぎゅ」
ペロリグは振り返り逃げようとしたが、その前にペロリグの頭を掴んで麻痺を発動させる。
「ぎゅー ︎」
麻痺を使って身体を動けなくさせる。
しかしこれではダメだ。今のでは前にナルミトスに使ったのと同じである。
剣でペロリグの両脚と両舌を斬り落とす。
痛みが走らない。身体が麻痺しているから痛みが流れないのだろう。
ペロリグに触れドレインを発動させる。今回は木に吸った魔力を送る。これにより前のようなことにはならないはずだ。
これはドレインで魔力を吸い上げて麻痺やウォーミルが解けるかの実験だ。
「....ぎゅうっ ︎ ︎」
どうやらドレインで両方の効果が吸えたらしく、麻痺によって流れなかった痛みが流れたようだ。
ここからは実験三昧だ。
麻痺はウォーミルのようにどこを痺れさせるかを自分で決められるか、また一箇所だけ痺れさせることが出来るかなど。
これらを実行しようとするとウォーミルと同じでかなりの魔力を消費する。
この魔獣には悪いがまだまだ俺の実験に付き合ってもらうつもりだ。
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