異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

新しい仲間、そして告白

 
 あれから数十分くらいは話し続け、ようやく今自分たちがいる場所を思い出し、慌てて帰った。王様たち苦笑いだったよ。

「お帰りなさいませ、旦那様」

 家に帰って扉を開けると、すぐにポールさんが出迎えてくれた。

「長旅、お疲れ様でした。夕食はいかがいたしましょうか?」

 あぁ、そう言えばそろそろ夕食の時間か。てことは結構寝ていたのかな?神様にテレポートされたのが昼少し前くらいだったはずだから。

「直ぐに頼むよ」
「かしこまりました」

 そうポールさんが一礼するとキッチンの方へと消えていった。

「な、なあ...アズマ」
「ん?どうした?」
「君は、貴族か何かなのか?こんな立派な家に住んでいるし」
「いや、俺は貴族とかじゃないぞ。この家だって神...王様から報酬としてもらった物だし」
「王様から ︎」

 リリーが驚きの表情を浮かべる。
 うん、まー気持ちは分かるよ。

「すごいなぁー、君は」
「そんなことないさ。ところでリリーは部屋、どこがいいんだ?」
「ボクはどこでも」
「そう、かー...まあ、リリーが好きなところを選んでくれ。荷物...とかはあっちか?」
「いや、特に荷物とかはないかな。元々無理矢理連れて来られて、働かされていただけだから」
「ああ、そうか。なんかごめんな」
「いや、アズマは悪くないよ。ボクこそ嫌な話をして悪かった。ごめん」

 沈黙が走る。
 気まずい...

「旦那様」
「はい!何でしょう⁈」
「....!浴場の準備が整いましたので、ご報告に...お話中でございましたか、申し訳ございません」
「ああ、うん。大丈夫だから。ありがとう」
「失礼いたします...」

 ポールさんの登場を嬉しく思いつい大声で叫んでしまった。ポールさんは少し驚いた顔で黙ってしまったが、直ぐにいつもの表情に戻った。
 ごめんなさいポールさん。
 お風呂、か....

「みんな先に入っておくか?色々あってあまり入れてないし」

 一応だが船の中には水儒核が置かれた風呂場はあった。しかしアンタレスに着く2、3日前から風呂場の水儒核が盗まれてしまった。しかも男湯も女湯もである。
 流石にお風呂に入れないのは困るので、船員の人に少しながら水儒核を渡した。
 初めは拒まれていたが「お風呂に入れないのは困るから」と言ったら受け取ってもらえた。その後「代金を払います」とも言われたが断った。そうしたら食事の時などに多少のサービスがされた。
 ちなみに犯人は40代くらいのおっさんだった。おっさんは、

「あんなところに置いてあったから、ワシが預かってやったんだ。むしろ感謝しろ」

 と言って騒いでいた。
 これには全員呆れるしかなかった。
 おっさんは全部で24個の水儒核の欠けらを盗んでいた。小さな水儒核だったので小さな皮袋に余裕で入っていた。
 犯人が捕まったのがアンタレスに着く前日の夜中だったので、お風呂は入っていない。

「そうね。私たちが先でいい?」
「ああ。俺は後で入るから、ゆっくりするといい」

 俺はそう言うと各自、自分の部屋へと帰って行った。リリーはサナが連れて行った。
 俺も自分の部屋へと戻る。うちの浴場は大きいのだが男女で別れていない。なので俺は後にしたのだが...暇である。
 とりあえず部屋に戻って疲れたので寝ることにした。
 あんなに寝ていたけど寝れるかな?
 そんなことを思いながら目を閉じると直ぐに睡魔が襲ってきた。俺はそのまま眠った。

「...きて....アズ...きて....アズマ」
「...んっ....んん...ん?あー、ユキナ...風呂、上がったんだな」
「うん」

 俺が目を開けるとパジャマ姿のユキナが俺のベッドの横にで立っていた。桜色のパジャマがよく似合っている。

「じゃあ、俺も行ってくるか...起こしてくれてありがとな、ユキナ」
「う...うん....ア、アズマ」

 ユキナにお礼を言って部屋のドアのドアノブに手をかけたところで呼び止められた。

「うん?どうした?」
「....え、えっと、ね....」

 ユキナは頰を赤らめモジモジし始めた。

「えっと、ね...あ、明日...私、と一緒に出、かけて欲し、の...行きた、いところがあ、るから....ダメ?」
「ああ、いいぞ。行きたい時に俺の部屋まで来てくれ。ゲートで送るから」
「う...うん。ありがと、う...」
「ああ。じゃあ、俺はそろそろ行くな」
「...うん」

 俺はそう言って部屋を出た。

「明日....頑張ら、ないと....」

 他に誰もいない部屋でユキナはそう呟いてから部屋を出た。

 ______________

 翌日。昼食前にユキナが部屋を訪ねてきた。

「...アズマ」
「ん?ユキナ...」

 ユキナが部屋に入ってきたので扉の方を振り返るといつも着ている防具などではなく、白のブラウスに黒のスカート。いつもの彼女とはまた違った雰囲気ですごく似合っている。

「...どう?」
「...ああ...すごく似合ってる。可愛いぞ」

 ユキナの頰が赤くなる。
 しばらくユキナを服を見つめる。似合っているし、可愛い。それは変わりないのだが....こんな服もこの世界にあるんだなと思った。
 町では普通の私服みたいな物を着ている人も多いから特に不思議でもないはずなんだが、近頃貴族だの兵士などの服をよく見ていたせいでこんな普通の服があることに驚いてしまったのだ。

「!えっと、それで?ユキナはどこへ行きたいんだ?」
「最しょ、は王都に、行きた、い」
「分かった」

 俺は王都の適当な路地裏に合わせてゲートを開く。
 ゲートを潜り、路地を抜けると活気に溢れた街が視界に入る。

「久々だな」
「うん」

 実際には俺はちょくちょく王様に会いに(呼び出されて)王宮へ行くし、昨日も全員で王宮に来ているので久々になるのかは分からないが、街へ来ることは久々なので間違っていないはずだ。多分。

「それで王都のどこに行くんだ?」
「うーん...とりあ、えず歩、こ?」
「ああ...分かった」

 ユキナにそう言われたのでとりあえず歩き出す。ユキナはそこら辺に出ている出店を見ることなく、一直線にどこかへ向かって行く。
 俺は彼女に着いて行くしかない。
 10分ほぼ歩いたところで小さな喫茶店に着く。看板には「喫茶店 ブレント」と書かれている。
 カランカラン
 ユキナが先に扉を開けて中に入ったので俺も後を追って入る。ここで昼食を済ませるのかな?

「ご注文は?」
「えーと...?あー、い、一角狼のギュエルと果汁水を」
「私、はクリトス、と果汁す、いで」
「はい。少々お待ちくださいね」

 そう言って店員さんは厨房へと去って行った。
 ギュエルって何?分かんないのに頼んだけど他のメニューよりはまだこれの方がいいと思った。何も頼まないのも悪いし。
 ユキナはユキナで注文をしてから下を向いてずっと黙っている。これでは聞けそうにないな。

「お待たせしました!」

 しばらくして再び店員さんが料理を持ってやってきた。
 俺の前に置かれたのはハンバーグだった。見た目はよく知るハンバーグその物だった。ユキナの前にはリンゴが丸々置かれた。
 クリアンという名前だったので栗が出てくるのかと思ったが全然違った。でも、リンゴが喫茶店のメニューにあるって不思議だ。しかも丸々。でもこのリンゴって昔見た覚えが...忘れた。

「ごゆっくり」

 店員さんはそう言って去って行った。
 俺は渡された木のナイフとフォークハンバーグを切り、口へと運ぶ。肉汁が口の中に広がる。美味い。
 前に一角狼の肉を食べたが今食べている物より硬く、血生臭かった。しかしこのハンバーグにはそれがない。いい仕事だ。
 ふとユキナの方を見ると、リンゴが横に半分に割られており、リンゴかと思っていた中にはリンゴを擦った物にいくつかの果物が入っている。
 おお、なんか面白い。
 俺たちは食事を終え、街を再び歩き出す。俺は他に面白い物がないか色々見て回った。
 途中で変な男たちに絡まれたが丁重にお帰り願った。剣などは使っていないので大した怪我などは負わしていない。
 こんな感じで色々あったがユキナも楽しそうに笑ってくれた。
 そして陽が落ちかけた頃にユキナにある場所へ行きたいと言われたので路地裏へ入りゲートをそこに繋げる。そこには一度訪れているのですぐに繋げられた。

「.....」
「....」

 ユキナが行きたかった場所。そこは以前ユキナが俺とキリに魔獣討伐を頼んだ土地、ハドルフだった。
 ハドルフにはもう人はおらず壊された村は以前のままであった。

「...私、ね....この村で、命を助、けても、らったの...」

 それからのユキナの話はこの村で過ごしたことだった。トロールという老人のこと。優しかった村の人たちのこと。なぜこの村に来たのかはあまり覚えていないそうだがそれまでにあったエルフの里でのこと。
 それを話し終えた頃にはもう陽は落ち、星と月明かりが俺たちを照らしている。

「...辛いこ、ともあったけ、ど、楽しかった。でも、ね...昨日、は怖かった、よ。また1人、になっちゃ、うって思った...でも...それ、をアズマ、は救ってくれ、た。私、また1人、に、ならなかった。本と、うによかった....」

 ユキナはいつからか涙を流していた。それでもユキナは続ける。

「それで、ね...私、気づい、た。わた、しアズマが好、き。アズマと、一緒にい、たい...」

 ユキナの言葉に俺は驚き、そして困惑している。多分これは告白なのだろう。それは分かった。これには驚いた。
 しかし迷ってもいるのだ。本当に俺でいいのか。ユキナを幸せに出来るのか。それが俺を迷わせる。

「....ごめんな、さい」
「え?何で、ユキナが謝るんだ?」
「...迷惑かけ、たから。こんな、こと言われ、ても困るよ、ね。ごめんな、さい。このこ、と忘れ...」
「迷惑なんかじゃ...ない。迷っているだ」
「...え?」
「本当にユキナを幸せに出来るのかどうか。それが怖いんだ。俺だってユキナのことは好きだ...と思う。大切にしたいとも思う。けどそれで本当にユキナを幸せにしてやれるのか、俺には...分からないんだ。だから... ︎」

 俺が続きを言おうとしたところでユキナが抱きついてきた。

「大じょ、うぶだ、よ。私、はアズマた、ちと、
 一緒にい、られれば、それで幸せだ、から。だか、ら答え、て...」
「....俺もユキナのことが....好きだ。一緒にいたい....」
「...ありが、とう...」
「んっ ︎...」

 ユキナがそう言うと目を閉じて顔を近づけてくる。するとユキナと東の唇が重なる。唇にユキナの柔らかい感覚が感じられる。
 2人はしばらくの、ほんの数十秒の間、それを続けた。


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