異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
謎の少女、そしてギルド申請
カランカラン
扉に付けられた鐘がなる。
「ただいまー、カナさ」
「だから、今は出かけてていないの」
甘味の扉を開けてカナさんにただいまと言おうとしたらカナさんによってそれを遮られてしまった。
受付台の向かい側にいるカナさんの前には黒いフードを被った人が立っていた。身長はキリよりも低いみたいだ。
「カナさん、どうしたんですか?」
「あら、アズマくんにキリちゃんお帰り。それがね、この人が君たちに会いに来たんだけど何度言っても会わせてって言うの」
カナさんにそう言われフードを被った人の方を見る。
「本当にあ、なたがア、ズマとキリ?」
声的に女の子かな?
「うんそうだけど、俺たちに何か用?」
女の子は少し黙ってから口を開いた。
「私の、村を、助けて、ください」
「どう言うこと?」
フードを被った女の子の話では自分が住んでいた村に1週間前に魔獣が現れ村を破壊していき、村はほぼ全壊したそうだ。村の何人かやギルドへ依頼してやって来た冒険者たちがグラルドルフに挑んだが全員帰って来なかったそうだ。そんな中噂でダンジョン攻略がされたという噂を聞いたらしく、その噂を信じて彼女はここまで来たそうだ。
「東、私も行くわ」
「ありがとう、キリ。俺たちは君の村へ行くよ。でもここからどれくらいかかるんだ?」
「ありが、とう、村はここから、馬車で、5日で、着く」
少し彼女の声が喜びが混ざって聞こえた気がする。
「分かった、それじゃあすぐに行こう。ところで村ってどこにあるんだ?」
「地図、ある?」
「カナさん、地図ってある?」
「ああ、ちょっと待っててね」
そう言うとカナさんはしゃがんで何かを探し始めた。
「あ、あった!ってこれ、王都までしか載ってないやつだ」
「王都までか」
「大丈夫。私の、村は、王都の、途中にあ、るから」
「なら良かった。カナさん、その地図を見せて」
「はいよ」
カナさんが地図を受付台の上で広げると女の子はだいたい王都と書かれたところとエネリアと書かれたところの真ん中より少し下のハドルフと書かれたところを指さした。
「ここ」
「ハドルフか。じゃあ、今から行くか」
「うん」
「ありが、とう」
「てことでカナさんまた何日か出かけるけど今回は何日かかるか分からないからとりあえず1ヶ月分で」
「頑張ってね」
「うん」
「ああ」
カナさんに1ヶ月分のお金を渡す。
「それ、じゃあ早う、まで」
「いや、その前に場所を移そう。とりあえず2階に俺が取っている部屋があるから、そこへ」
「......うん。分か、った」
カナさんがいるので移動することを提案したが、内容が内容だったので女の子の警戒が強まった。
襲われるって思われても仕方ない発言だったな。キリは...不思議に思ってはいるが、女の子のような警戒はしていない様子。
信用されているってことで良いのかな?
三人で部屋へと移動し、周りの目をなくす。
「悪いね。今から見せるのは、あまり人に見せられないから」
先に謝罪と断りを入れてから、頭の中で女の子が地図に指差した所ら辺を思い出しながら、俺は指輪を身体の一部と思って指輪に力を送る感じで指輪の力を発動させる。
「 ︎」
すると俺たちの目の前に輪が出来たかと思うと輪が広がり俺の身長より少し大きいくらいの大きさまで広がった。輪の向こう側は相変わらずなぜか何も見えない。
ついさっき控えようって決めたのに、見ず知らずの人のために使う。うん、呆れるほどバカな選択だな。
でもこの子ならなんとなく信用しても良い気がする。なんとなくで、だから絶対ダメなのは分かるけど、今は急を要する事態だ。
「え、東。これって?」
「一様俺が先に行ってから安全を確認して来るわ」
「ちょっと東!」
あの時キリには見せていなかったから、戸惑うのも無理はない。
心配してくれているキリに大丈夫と言う意味で軽く笑ってから輪を潜る。輪を潜るとそこには俺らが王都へ行く途中で寄った街が広がっていた。
木材などを買った所だ。うん、本当に便利だな。
再び輪を潜ってキリたちのいる街へ出る。
「俺たちが王都の途中で立ち寄った街だった」
「立ち寄ったってもしかしてアスラ?」
「ああ、多分そうだと思う」
アスラか。確か彼女が地図で指差した場所より少し上くらいにあったから少し行き過ぎたな。
「悪い、もう少し待ってくれ」
「うん....ありが、とう?」
俺は一旦今開いている輪を解除して今度はさっきよりも流す魔力を減らして距離を調整する。まー、街の風景さえ思い出せたら簡単に飛べるんだけど。
俺らの目の前に再び輪(以後ゲートと表記)が出来る。そして安全確認で俺が顔を出してゲートの先を覗く。
「なっ ︎」
とりあえず、キリと女の子にゲートを潜らせて今のハドルフの状況を見せる。
「 ︎嘘...でしょ...」
「......」
今のハドルフは最早村ではなかった。家々は壁がないだの燃えて灰になっていたり、良くて屋根がなくなっているという感じだ。地面には1メートルくらいの足跡がそこら中にある。
女の子は少し震えている。
「グギャァァァッ!」
「「「 ︎」」」
荒れた村を眺めて唖然としていた俺たちの耳に大きな叫び声が聞こえてきた。
「ん」
「ちょっ!君!」
叫び声を聞いて女の子が声の下方へと走り出した。俺とキリも女の子を急いで追いかける。あの子足、速っ ︎
俺たちがいた村から500メートルくらい行ったところに森があり、そこから叫んでいる魔獣が俺たちの視界に入る。
魔獣は全長3メートル半くらい高さ2メートルくらいの赤色の皮膚。額には20センチくらいの3本の角が生えている。
女の子は双剣を使ってすでに戦っていた。しかし俺の気のせいなら良いのだが、あまり慣れていないのか上手く戦えていない。
目に魔力を流して魔眼を発動させる。
_________________
グラルドルフ:戦闘中
Lv.69
特殊:額の角と鋭い爪と牙
_________________
Lv.69か。確かダンジョンの38階層のボスと同じレベルだったかな。ならいけるな。
______________
幻術:発動中
特殊:自身の姿を変える
発動源:ペンダント
______________
︎女の子から表示された文字に驚く。幻術ってダンジョンの31階で戦ったというか騙されてただけかな?ずっと幻術と戦ってただけで正体は幻術を生み出す壺だったのでそれを破壊したら幻術は解けた。
まーこれは後にして、剣を鞘から抜いて女の子の加勢をする。
______________
3人でかなり攻撃してグラルドルフの角2本と右後ろの片足を切り落とした。次で決める。
「キリ!バックアップ頼む!」
「了解!」
「君は下がってて!」
バックアップは通じるんだ。キリと一緒にグラルドルフへと走る。
俺とキリで攻撃を避けながら近付きキリがなるべくグラルドルフの注意を引いてもらいながら俺は詠唱とともにグラルドルフに触る。
「ウォーミル」
「グギャァァァルッ!」
「っと、このっ!」
「グギャァァァッ ︎」
グシャァァッ!
ウォーミルを使った俺にグラルドルフが攻撃して来たが難なく避けて、逆に剣で斬りつける。生々しい音が耳に流れ、さらに返り血が俺にかかったが構わずグラルドルフから距離をとる。
そして意識を集中させて首から下全てを温度を下げて凍らせる。
「俺らはここまでだな」
「なん、で?なん、でとど、めを刺さな、いの⁈」
「君がしたいんだろ?街の人のための仇としてこいつを倒したかったんだろ?」
「 ︎」
少しして女の子は意を決したのかグラルドルフへと走って行き飛んで木を使ってさらに飛び、グラルドルフの首を切り落とした。
ドォンッ!
首が地面に落ち紫色の血が吹き出す。あの大きさを双剣で落とすか。
「.....」
「.....」
「.....」
安心したせいか女の子は大粒の涙を流し始めた。それを俺とキリは見守っていることしか出来なかった。
数分して女の子は泣き止み喉が渇いていると思ったので宝物庫から水儒核とコップを取り出してコップに水を注いで女の子に渡す。女の子はそれを受け取り一気に飲み干す。
「大丈夫か?」
「うん、ありが、とう」
「あー、俺たちは甘味に戻るけど君はどうする?」
「....んっ」
「「 ︎」」
女の子は少し黙ったかと思うと急に俺に抱きついてきたので俺とキリは目を見開いて驚いた。いやだって驚くでしょ ︎女の子が急に抱きついてきたら!
俺の顔が熱くなっているのが自分でも分かる。
「え、えっと....ど、どうした?」
「...から...ろって...」
「え?」
「奴隷で、もペットで、も良い、から拾ってくだ、さい」
「「はいっ ︎」」
あれれ〜、俺の耳がおかしくなったかな?きっと何かを拾ってって言ったんだな、うん。
「えっと...もう一回言って、くれる?」
「奴隷で、もペットで、も良い、から拾ってくだ、さい」
聞き間違いじゃなかった!
「どど、どうする?キリ」
「えっ、あ、えっ、あ、東の好きにして!」
キリの頰は何故か赤くなっていた。てかキリさん!その言い方なんかダメじゃね ︎
「えっと....あ!村の人とか、生き残っている人がいるかも!探さないと」
「....そっちはだ、い丈夫。皆生きて、るはずだ、から気にし、ないで」
咄嗟だが妙案を思いつき、それで話題を切り替えようとしたが、躱された。
その言葉に違和感を感じて、詳しく聞こうとするが答えてくれない。
「....えーっと、何でも良いの?」
「うん、だから拾、って」
仕方がないので話を戻せば普通に返してくれる。
「じゃあさ、仲間になってくれない?」
「....え?」
「何でも良いって言うのなら仲間になってくれたら嬉しい。もちろん拒否してくれても良い。宿とか食事は俺が少しの間なら出せるから、君が本当に望む通りにしてくれ。だから奴隷とかペットなんて、自分を卑下するのは辞めてくれ」
「ごめん、なさい。私はア、ズマの仲間、になりた、い」
女の子は少しも迷うことなくそう答えた。
「ありがとう。じゃあ、改めて自己紹介をするな。俺は桐崎 東、冒険者をやってる。これからよろしくな?」
「私はキリ・ヘルクレット、これからよろしくね?」
「私は、ユキナ・ホルスト。ユキナで、良いよろし、く」
女の子もといユキナが軽く礼をする。
「それとユキナ、悪いけど素顔を見せてくれるか?仲間なのに顔を知らないのは流石にな」
「分か、った」
ユキナはそう言うと被っていたフードの帽子を背後へやる。すると、オレンジ色の短い髪に蒼い目、整った顔が露わっとなった。しかしユキナの顔はあまり良い顔をしていない。多分俺はその理由を知っている。
「よろしくね?ユキナ」
「うん」
キリがユキナに手を伸ばして握手を求める。その手を握ろうとしたユキナを止める。
「?東?」
「...ユキナ、俺は素顔を見せてくてっと言ったよな?」
「う、うん。だから見、せた、よ?」
「何で隠しているのかは知らないけど、仲間である俺やキリにまで隠すつもりなのか?」
「 ︎」
「ちょっと東。な、何を言っているの?」
「ユキナが首から下げているペンダントには幻術の力が宿っている」
「 ︎」
「え⁈」
「な、何で分か、ったの?」
「俺には固有能力に魔眼があって、そう言った術の出所は分かるんだ」
「 ︎」
「なあ、何で隠しているんだ?」
「だって...」
「頼む、教えてくれ」
「.....」
ユキナは諦めたのか少し涙目で首からペンダントを外してくれた。
「「 ︎」」
「....」
俺たちの目の前にはさっきまでのユキナの姿とは違い、オレンジ色の髪ではなくキリのような銀髪、そして長い耳、赤眼。これは俺の薄いファンタジー知識でも分かる。エルフだ。普通のエルフは金髪碧眼なのだがユキナは銀髪の赤眼、つまりハイエルフだ。
ユキナの目はまるで色あせたようになっている。まーゲームとかだとハイエルフはだいたいね。ユキナが色あせた目で俺たちの様子を伺ってきたので俺は笑顔で返した。
「ユキナ、ありがとうな。俺の無理を聞いて素顔を見せてくれて。これからよろしくな?」
「私もありがとう。これからよろしくね?ユキナ」
「で、でも私、その...ハイ...エルフだよ?それで」
「「何か問題ある?」」
ユキナを言葉を遮って俺とキリの言葉が重なる。
「え、でも...みんな、私の姿、見たら逃げ、たり追い出した、りする」
「何で?」
「...私がハ、イエルフだか、ら」
「まー多少の事情はあるだろうけど何で逃げるのかな?ユキナは可愛いのに」
「か...可愛い...」
何故かユキナの頰が赤くなっていく。風邪でも引いたのか?
「だからさ、言いたいやつには言わしておけば良いのさ。何かあるなら俺らが守ってやるから、自信を持て」
「アズマ...」
「そうだよ?私たちは仲間なんだから」
「キリ...」
ユキナはまた泣き出したが、今度は嬉しそうな顔だった。
ユキナが泣き止んでからゲートで甘味の俺の部屋に開いてキリとユキナを連れてゲートを潜る。これって不法侵入とかになるかな?
「さて、とりあえずカナさんに頼んでユキナも泊めてもらいたいけど部屋空いてるかなー、ん?」
カナさんに相談しに部屋を出ようとしたが服を引っ張られたので後ろを振り返ると、ユキナが俺の服をつまんでいた。
「どうした?」
「部屋な、くて良い。私ア、ズマと同じ部、屋で良い」
「「なっ ︎」」
俺とキリの頰がみるみる赤くなっていく。ていうか、ユキナも頰が若干赤くなっている。
「いや、それは流石にダメだろ!」
「そそ、そうよユキナ!おお、男と女が一つの部屋で寝るなんて!」
大声で否定しているキリだが、自分の発言でさらに頰が赤くなっていく。
「私、は気にし、ない、よ?」
「気にするのっ ︎」
コンコンッ
ユキナの行動を拒否している中、俺たちの部屋の扉が叩かれた。
「アズマくん、もしかしてもう帰ってるの?」
「う、うん。カナさん!悪いんだけど部屋ってまだ空いてる?」
「もしかしてさっきの子が泊まるのかい?」
「そう」
「よーし!それなら任しといて!すぐに隣の部屋が開くから、ちょっと待ってて!」
カナさんはそう言うと走り出したのか廊下からドタドタと聞こえたかと思うと次は隣の部屋からドタバタと聞こえたり謎の断末魔が聞こえて来た。
....コンコンッ
少ししてから再び扉が叩かれた。
「部屋が空いたよー」
ここにいる3人が心の中で思った。『絶対追い出したな』っと。カナさんはすぐに1階へダッシュで降りて行った。
カナさん。宿屋としてその行為はダメでしょ....
ユキナを無言で隣の部屋へと移させキリも自分の部屋へ戻って行った。俺はカナさんとユキナのことについて話しをするために1階へ向かった。
幸い先程の部屋は、今日退居する予定だった冒険者を急かしただけだったらしい。だから気にしなくて良いと笑っていた。いや、それでもダメですって。
______________
今俺たちはギルドへ来ている。
まず最初にキリとユキナのギルド申請をするために受付へ行くはずだったんだが、途中で知らないおっさんに止められていた。
「ようよーにいちゃん、女連れてこんなところに何のようだ?」
「「「.....」」」
俺たちはこのおっさんに冷たい目を向ける。何言ってんだ、このおっさんは。
「行こう」
「ちっ、ちょっと待ちやがれ!この餓鬼!」
「ん」
無視して行こうとしたがおっさんが俺の服の襟を掴んできた。
「離せよ」
「この餓鬼ぃ!」
「ぐっ ︎」
「「アズマッ ︎」」
睨み付けて離せと言ったらグゥで右頰を殴られた。全然痛くない。これがゲームとかであるレベルの差ってやつか。分かり易く言うとレベル90くらいの勇者がスライムの攻撃を受けたみたいな?いや、別にあんまり痛くないって訳ではないんだけど、手で軽く頰を叩くくらいかな?
「気が済んだか?」
「このくそ餓鬼がっ!」
「...ぐっ ︎」
「「 ︎」」
今度は地面に放り投げられた。普通に体勢を戻すのは簡単だったのだがあえてなるままにした。その方が早く解放されると思ったからだ。しかし現実は小説より何たらって感じだな。おっさんはキリたちに手を伸ばそうとしていた。
「へへ、この女たちは俺が借りとく ︎」
「俺の大事な仲間に触れるな」
その腕を掴む。
「いでっ ︎いでででででっ ︎ ︎腕がぁ ︎」
「もう2度と俺たちの前に現れないことを誓え」
「いででででででっ ︎誓う!誓うから離してくれ!」
手を離す。
「さっさとどっか行け」
「ひぃぃぃぃっ!」
今時本当にいるんだ、ひぃぃぃって言って逃げる人。
「ありがとう、東。助けてくれて」
「ありが、とう」
「怪我とかしてない?」
「東こそ大丈夫?殴られてたけど」
「ああ、全然痛くなかったから大丈夫だ」
「良かった」
「良かっ、た」
うーん、俺が殴られている時は大丈夫だったんだけど、キリやユキナに何かしようとしたらついムッと来たんだよな。何でだろ?
「まー、気を取り直して早く申請しに行こうか?」
「「うん」」
それで俺の時と同じように受け付けで申請を済ませて、2人ともすごい笑顔で戻って来た。
「これでみんなお揃いね」
「ああ、これから頑張らないとな」
「うん」
「うん、頑張、る」
これからが冒険の始まりだな。俺もギルドランクは1番最初だから頑張らないとな。
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