短編︰東方禁恋録

乙音

第14話 異変の謎

「それにしても、本当になんで人が突然消えたりするんだろうね」

「そこが問題なのよね。
人を消す能力を持ってる人なんて居ないはずだし……」

「そもそも、それをする理由もない。」

「ええ、本当に謎だわ……」

「……待って。
そう言えば、さっきから消えた、と言っていたけど……。
そもそもそれが、根本的に間違っているのかも」

「どういうこと?」

「つまり、簡単に言えば消えたというのが相応しいけど、
果たして本当にそうなのかは誰にもわからない。
例えば、一概に消えたと言ってもこの世から消えた訳ではなく……
そうだね、別の場所に移動していたりして。」

「……たしかに。
その線は考えていなかったわね。
それに、消えた訳ではなく、そもそも隠していただけの可能性もあるわ」

「はあ……でも、可能性が出てきたとしても、
その根拠が見つからないね」

「そうね、証拠がないとどうにもならないし……。
困ったわね、犯人の目星すらつかないわ」

「これ以上被害を増やすわけには行かないし……行き詰まりか……」

「紅魔館に行くのはどうかしら?」

「紅魔館?」

「紅魔館には大図書館があるから、
何かのヒントになるかもしれないわ」

「確かに。
じゃあパチュリーにお願いして本を見せてもらおう」

◆◆◆

「本?」

「ええ。
今回の異変を解決するヒントが欲しいの。」

「そういう事なら良いわよ。」

「ありがとう、パチュリー」

本を見せてくれると言ったパチュリーに
お礼を言い、早速本を探し始めた。

「これとかどうかしら?
神隠しの本。」

「えーと、なになに……。
神隠しは、子供などが突然見えなくなったり行方不明になったりすること。
天狗や隠し神、迷い神などによって隠されたと考えられていたらしい……か。
他の本では狐や鬼によって隠されたともかいてあるね。
他にもいろいろ書いてあったけど、そこはいいかな」

「天狗……文や椛やはたてなんかは関係ないのかしら」

「うーん、多分関係ないよ。
そもそもする意味が無いし……それなら鬼の萃香や勇儀なんかもその対象になるしね。
この本に書かれているのはほとんど言い伝えのようなものだと思うから関係ないかな……。」

「まあそれもそうよね。
はーあ、調べれば調べるほどよく分からなくなるわ。」

「そういえばこの本、何処にあったんだろう?
話からして幻想郷で起こったことでは無さそうだけど」

「あー、パチュリーが外の世界からきたとか言ってたわよ?」

「外の世界?」

「幻想郷とは違う世界で……色々と技術が発達してるみたいね。
まあ博麗大結界で守られてるからこっちに入ることは出来ないんだけど……。
希に、こっちに迷い込んでくる奴や紫が幻想入りさせるやつはあるわね」

「……外の世界……なんか、引っかかるなあ」

「うーん、あいは出会った時から幻想郷にいたし、
関係ないと思うわよ?
ああ、そう言えば、早苗は外の世界からきたって言ってたわね」

「早苗が?」

「ええ。
何でも、守矢神社ごと幻想入りしてきたとか」

「そうなんだ……。
技術が発達してるってことは、こっちに無いものもあったりするのかな?」

「ええ。
幻想郷に無いものがたくさんあるわよ。
その代わり、空を飛んだりとかはできないらしいけど」

「……そう言えば、霊夢は空を飛ぶ能力だったり、
早苗は奇跡を起こす能力だったり、色々力を持ってるよね。
なのに、私は持ってない……」

「そういえばそうね。
今まできにしたことなかったけど」

「……なんか、引っかかる。
なにか思い出せそうなのに、思い出せない……。」

「まあ、そう焦らなくていいと思うわよ」

「でも、なんだかこの異変に関係しているような気がするんだ」

「神隠しに?
それは無いと思うわよ? 
あいと出逢ってから大分経つけど、豊富な知識を持っているくらいしか変わったところはないし。
まあ、すこし雰囲気が変わってるなあとは思ったけど」

「雰囲気が?」

「ええ。
なんというか、この世のものとは思えないみたいな?
言うならば……そうね、神みたいな雰囲気って言えばいいのかしら?
……馬鹿らしいわよね、信じられないと思うけど、本当にそうなのよ」

「神……」

神のような雰囲気。
そして、私が記憶を持っていないこと。

前々から思っていた、この世界への違和感。
不思議な夢や感情の正体。

それらは、この異変と関係しているのだろうか。
もし関係しているのだとしたら……一体なぜこんな異変が?

全くわからない。
考えても考えても理解出来ず、その後もたくさんの本を読み漁ったものの、結局わからなかった。

やはり、なにか引っかかる。
この異変と、私についての謎が。

前に見た夢も、ただの夢ではないような気がする。
鮮明で、どこか懐かしいような。

それに外の世界っていうのも、
なにか、なにかおかしい。

私は本当に生まれた時から幻想郷に居たんだろうか……。
もしいなかったのだとしたら……?

そんなことを考えているうちにふとまぶたが重くなってきて、
気がつけば私は眠りについていた。

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