短編︰東方禁恋録

乙音

第11話 霊夢の想い

霊夢視点


「…………あい……どうしたのかしら」

静かになった神社で1人、呟く。
さっきの藍夢の慌てよう……ただ事ではなかった。

本当に、悪夢を見ただけなのかしら。
でも、あいは嘘をつくような子じゃないし。

「私、何もしてやれてないなぁ……」

確かに、私は餓死しそうだった藍夢を助けた。
けれど、それは「私」では無い。

正確には、「私のお母さん」が助けたのだ。
ただ私はあいを見つけただけで、何もしていない。

ほら、今だって。 
お母さんがいなきゃ、何も出来ないじゃない。

本当は、あいを追いかけたかった。
けど、追いかけた所で、何も出来ないのは分かってる。

私が追いかけた所で、何が出来る?
せいぜい、理由もわからないまま慰めることぐらいしかできないだろう。

それで、あいがいつも通りになると思うか?
答えは、否。

ただ、貼り付けたような笑みを浮かべて、「ありがとう」
と言うくらいだろう。

私は、そんなあいが見たいんじゃない。
ただ、いつも通りのあいになってほしい。

それだけだ。
けど、それすらも、私には出来ないらしい。

「…………はは、ははは」

途端、笑いが止まらなくなった。
自分の無力さに、笑いが止まらないのだ。

「こんなままで、博麗の巫女になる?
……笑っちゃうわね。
自分では大人になったつもりでも、まだまだ私は子供だったのに。
誰かが居なくちゃ、何も出来ないじゃない。」

ただただ、笑って。笑って。嗤って。

「…………ほんと、ダメね、私。
何だか調子が狂ってきちゃったわ。」

なぜだか、あいを遠くに感じて。
私は、勝手に焦ってたんだって。

今更ながらに気付いた。
でも、何故だか本当にあいが離れてしまうような気がする。

手を伸ばしても届かないような、はるか遠くに。
まるであいが、次元の違う所に行ってしまうかのような。

そんな不安が私の中を渦巻いて離れない。
どうして?

そう疑問を持っても、理由なんてない。
ただ、あいがいなくなってしまうという不吉な予感だけが私の中に残る。

ただでさえ、あいは不思議なところが多かった。
まず、幻想郷にはない物の事を沢山知っていた。

例えば、かくれんぼだとかじゃんけんだとか、幼いにしては
ありえないくらいの知識を持っていた。

自それに動販売機という名前の、お金を入れればジュースといわれるものを
買えたりする箱だったり、

テレビという名の動く絵や喋る絵を見たりできる薄い箱だったり、
自動車という名のどこでも徒歩より早く行ける大きな鉄の塊だったり……。

そういう【科学】というものの知識も持っていた。
それらは幼児の妄想とはとても思えないほど現実リアルで凄いものだった。

一体、あいは何者なのか。
そんな事どうでもいい、と言ったら嘘になるが。

例えあいが誰であろうと、例えあいが…囚人であろうと。
私は一生、あいを大切にする。

ずっとあいを愛し続けるから。
だから、あい。

1人で抱え込まないでよ……。

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