短編︰東方禁恋録

乙音

第8話 新しい博麗の巫女

「霊夢おはよー」

そう言って博麗神社に入ると、巫女服を来ていて
お祓い棒を持っている霊夢が視界に入る。

「何してるの?」
「修行よ、博麗の巫女になるための」

「……博麗の巫女?」
「…先代の博麗の巫女は亡くなったでしょう?
つまり、私が新しい博麗の巫女にならなくてはならないのよ」

若干寂しそうに目を伏せる霊夢。

「あぁ、なるほど。
博麗大結界もはりなおさなきゃだしね」

「ええ。今の博麗大結界は、紫の力と残り僅かな博麗の巫女の
力でギリギリなりたっているようなものよ。
新しい博麗の巫女を育てないと、外の世界と幻想郷を区切る結界が無くなっちゃうもの」

「……霊夢も大変だよねぇ」

親の死を悲しむ暇もなく博麗の巫女になる為の修行だなんて。

「いいえ、私は博麗の巫女を継ぐべき者よ。
……これくらいの覚悟が無いと、それは務まらない。
それにあいも、私と同じくらい……いえ、それ以上悲しくて辛かったでしょう?」

「…………そうだね」

私は短くそう答えた。
本当は、全く悲しくなんかない。

私は、両親と離れ離れになったと言うのに、
全く悲しくなんかなかった。

記憶喪失だから、と言うのもあるのかも知れないが、
それでも寂しいといった感情が一切無かった。

それに、友達との別れも全く悲しくなんかなかった。
それこそ、何も思うことがないほどに。

だが、それだけではなく、何故か時々
この【世界】に違和感を抱くのだ。

……何か、違う。
ふとした瞬間にそんな事を思う。

何が違うのかも分からないし、何故そう思うのかも分からない。
けれど、何故かそんな違和感を抱く時があるのだ。

そして、極め付きは幼い頃からあったこの感情。
それは醜くて、とても受け入れたくはない汚い感情。

【嫉妬】、【憎悪】、【怒り】、【憎しみ】…………。
そんな醜い感情が私の中を渦巻いて離れない。

なぜだか、いつも何かを憎しんでいるような気がする。
それと同時に、尋常じゃ無いほどの悲しみがいつも私の中にある気がする。

そんな蟠りも、霊夢達と話しているうちに、
溶けてなくなっていく。

まるで、その感情が無くなったかのように。
求めていた物を、手に入れたかのように。

この感情は一体何なのだろう。
どれだけ不思議に思っても、それは分からない。

……まるで、もう1人の私が居るかのように、全く別の
感情が私の中に存在する。

意識したくもない、醜くて汚い感情。
一体これは何なのだろう。

こんな感情、抱いたことは無いはずだ。
なんで。なんで。なんで?

……あぁ、ダメだ。
頭が痛くなってきた。

まるでこれ以上考えることを静止するかのように、
頭痛がした。

ズキズキと痛む頭を抑えながら、
心に渦巻く汚い感情を振り払うかのように、私は今日も霊夢に微笑みかける。

……これから起こることなんてこれっぽっちも考えずに。



今日は少しだけ藍夢の過去が分かったかも……ですね。
こういうシーン書くの好きなんですよね(´▽`*)

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